巣ごもりの虫、戸をひらく。子どもたちの「この世がくもん」
冬ごもりの虫やカエルたちも、戸を開けて陽ざしを浴びに出てくる啓蟄、蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)。
わが家では、下の子どもが6歳になりました。
ついこの間まで、赤ちゃんだった気がするのになあ。
寝ているすがたを見ると、ずいぶん下のほうまで足がのびていて、びっくりする。
「おかあさん、みてて」と全力で走っていく背中に、もう追いつけなくなっている。
週末は、料理人(兼・道場主)になることを目指している長男と一緒に、「和食の匠」のもとへ。
前に住んでいた家の近くにあったお店の板前さんで、目にも舌にも心にも贅沢な素晴らしいお料理を作ってくれる、長男の憧れの方なのです。
「前の季節の『名残り』、今が一番美味しい『旬』、季節を先取りする『走り』を、うまくとり合わせるんだよ」
「家で料理するとき、レシピを覚えるよりもまず大事なのは、調理場を常にきれいに保つことだよ」
「目的を持つのはいいけれど、それだけじゃなくて、いろんなことをやってごらん。ソムリエの修行をしてもいいし、洋食をやってもいい。自分のお店を持つとき、きっと役に立つからね。美術館にも行って、美意識をやしなうといいよ。日本料理は、美しくなきゃだめなんだ」
鮮やかな包丁さばきで次々とお料理を仕上げながら、大切なことをたくさん教えてくださいました。
美味しすぎるお料理に「10回ぶんの誕生日がいっぺんに来たみたい!」と感動しながら、熱心にメモをとる息子。
この街に来てから、本当にたくさんの方々が、子どもたちの先生になってくれたなあ。
幸田文さんがお父さんの露伴先生から手ほどきを受けたという「この世学問」を思い出す。
もうすぐ、引っ越し。次の街では、どんな出会いがあるだろう。
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ほっとひと息つけるお茶のような文章を目指しています。
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