マガジンのカバー画像

特集エッセイ

8
就職氷河期世代に向けた、エッセイを発信します。
運営しているクリエイター

#エッセイ

これが私の選んだカード

これが私の選んだカード

文・ハネサエ(OTONAMIE)

就職氷河期のピークはいつなのかとインターネットで調べたら、2000年~2003年と書かれてあった。
それはまさに私が就職活動をしていた頃で、また、夫が就職活動をしていた頃でもあった。

高校卒業後の進路についてを話すとき、いつも「就職率」についての話がつきまとっていた。
医療系に進めば就職は間違いないだとか、四年制大学よりも専門学校のほうが就職しやすいだとか、女

もっとみる
カナちゃんと小さい窓

カナちゃんと小さい窓

文・ハネサエ.(OTONAMIE)

ひきこもり支援センターへの取材に同行させてもらったとき、担当職員の方が「ひきこもりと聞くと内向的で人と話すのが苦手な人、と思われがちなんですがそんなことはちっともなくて、」と話してくれた。さらに、ひきこもり状態にある人の中には不登校から始まる人も多く云々、と話は続いた。
不登校と聞くと少しだけ身近に感じるのは、私がかつて不登校児の家庭教師をしていたせいかもしれ

もっとみる
痣があろうと

痣があろうと

文・ハネサエ(OTONAMIE)

短大に通っていたころ、ある講師がことあるごとに「氷河期だからって」と言っていた。

「私たちが就職活動をしていた頃はね、もっっっとすごかったんだからね。氷河期どころじゃなかった。大っ氷河期。氷河期だからって就職できないなんて甘えたこと言わないことね」

その講師は私たちより20歳ほど年上で、よく授業そっちのけで自分の就職体験を語っていた。

「私が就職したのは学

もっとみる

分からないことがたくさんあって

文・ハネサエ(OTONAMIE)

もうすぐ子育て10年生で、ライター7年生になる。
長さだけで言えば、子育ては義務教育の過程を卒業したことになるし、ライター業は細々ながらも小学校を卒業したことになる。
なのになんてことだろう、いまだにいろんなことが分からない。
悲しいくらい、なにひとつ分かったような気になれない。
先へ先へ進むほど、いろんなことが分からなくなってどんどん自信を無くしていく。それな

もっとみる
手を取ることは難しい

手を取ることは難しい

文・ハネサエ(OTONAMIE)

人よりできることがうんと少ないのに、私にとって、誰かの助けを借りることはとっても難しい。そう気がついたのは3人目の子を産んで、1年と少しが経った頃だった。

心身の疲労が限界に達したのだろう。なにをするにも時間がかかるようになってしまい、ある日とうとう布団から出られなくなった。
食事を作るどころか食べることさえできなくなって、子どもたちの世話もままならなかった。

もっとみる