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1人でドラマクラブを開催してみた。

ドラマをリアルタイムで何本も観たのは久しぶりだった。無職で、時間もあって、TVerという文明の利器もあって、心を癒すにはちょうど良いタイミングだった。なんと2023年、1~3月の間に12本のドラマを観た(過去作は除く)。社会人になってからは、観始めても途中でやめたりする作品も多かったが、今回離脱したのは2本のみ。
丁度昨年末から今年初めにかけて過去の名作の数々がTVerで特集配信されており、ここぞとばかりに観まくって感慨に浸っていたので勢いづいて、えーい!今やってるドラマも観ちゃえー!といった感じになったのだと思う。

ここまで時間があって、こんなにドラマを観られる日々はもうなかなかやってこないかもしれない。良いなと思った瞬間や心を射抜かれた瞬間をnoteの下書きに書き溜めていたので、次のクールのドラマ達が始まってしまう前にさっさとまとめようと思い、『ブラッシュアップライフ』の「ドラマクラブ」さながら、1人で好き勝手に「ドラマクラブ」をやってみたいと思う。ちなみにどのドラマも後半の内容に触れていることが多いのは、ご愛嬌ってことで。

ネタバレをガンガンに書いているので、未見の方はご注意くださいませ。尚、レビューの長さと自身が感じた作品自体の面白さは比例するとは限りません。
また出演者の敬称について、愛を込めて敬称略のものもあれば、「さん」や「氏」や、はたまたニックネームでの表現もありバラバラではありますが、同一に敬意を込めて書いております。




『どうする家康』

11年ぶりに大河ドラマ完走に挑戦している。11年前まではよく熱心に大河ドラマを観ていたが、ここ10年間は、何度か視聴し始めては録画が追いつかなくなって観なくなったり、そもそも最初から観なかったり、様々だった。今年はオンタイムで観るようにしているし、何より「最後まで完走する」と半ば決めているので、よっぽどのことが無い限り、1年間観ることができる気がする。

拙著『どこにでも住めるなら、縁もゆかりも無い静岡市に住みたくなってきたから、一泊二日で行ってきた。

そう、私は現在大河ドラママラソンに参加中である。挑戦の動機は、面白そうだからとか興味があったからとかではない。
上述の通り、私は昨年末から年始にかけて過去の名作ドラマを観まくっており、その感慨のまま10~20年前の時代を懐かしく思い返していた。
高校生の頃、よく録画したドラマや映画やトーク番組をDVDにダビングして保存していた。よくもまぁこれだけコレクションしたものだというほどにしょっちゅう録画していたので、よく母に小言を言われたものだ。ちょうど感慨に浸っていた私はそのコレクションを久しぶりに開けてみることにした。すると、当時観ていた大河ドラマや関連番組が部分的に出土した。思い返してみれば、かつて大河ドラマを観ていた時は、大河ドラマの始まりと共に一年を迎え、そして年末は大河ドラマの終わりと共にあったのだ。何故なのか全く見当がつかないが、中学時代に部活で通っていた陸上競技場の景色と、大河ドラマ『篤姫』のシーンが頭の中でカットバックしたりする。謎だ。それだけ日常の隣に大河ドラマがあったのだと思う。そんなことを考えていたものだから、今年は久しぶりに大河ドラマを観てみるか!という気になり、何の気なしに観始めたのである。

久しぶりの大河ドラマを観てまず思ったのは、背景のCGがありありと見えてしまい、少し残念だったということだ。最後に観た大河ドラマが2012年の『平清盛』だった為、塵や砂埃がコーンスターチで表現された泥臭い画作りが目に焼き付いていたからかもしれない。その表現とともに賛否両論あった作品だったが、私は『平清盛』が好きだった。
『どうする家康』1話鑑賞後にネットの海を泳いでいると、制作統括と人物デザイン監修が『平清盛』と同じスタッフだと知った。これは観続けてみたいな、と思った。

そして観続けること1ヶ月。第5話「瀬名奪還作戦」から急激に面白くなってきて、非常にワクワクした。というのも、松山ケンイチ氏と山田孝之氏が登場したからだ。イカサマ野郎の松山ケンイチと、真剣にオドオドしている山田孝之が、タッグを組んでいく。

【公式】大河ドラマ「どうする家康」 on Instagram: "#どうする家康  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄◥ 『"武士"として…』 服部半蔵(#山田孝之)登場 ◣____________ 武士の誇りを持ち、忍びを嫌う半蔵 貧しくとも銭で動くことを断るが ゆざぶる正信とゆれる半蔵… どうする半蔵!? ◆どうする豆知識◆ タイトルバックのイラストには🐔と💰。 このシーンを比べて見ると…!? . 第5回 再放送は 【2月11日(土)13:05 総合】 . 見逃し配信は 【2月12日(日) 20:44 まで】 . 詳しくはプロフィールのリンクをチェック。 #切り抜き大河" 7,624 Likes, 58 Comments - 【公式】大河ドラマ「どうする家康」 (@nhk_ieyasu) on www.instagram.com

それだけでも面白いのに、服部半蔵(演:山田孝之)が率いる服部党シーンの美術、劇判、編集が輪をかけてゾクゾクさせた。

とにかく、『平清盛』以来の大河ドラマ登場となる松山ケンイチ氏に言及したい。徳川家臣団と松山ケンイチとの初絡みのシーンで、松山ケンイチが狂言師のような台詞回しで喋ったり、小手伸也さんの股をスルリと潜り抜けて動くシーンは呆気にとられた。自由自在に言葉と身体を操っている。身体が効くとはこのことか‥‥。

それから第9話「守るべきもの」では三河の一向宗の一揆をどう鎮めるかがメインに描かれるが、松山ケンイチ回と言っても過言ではない回だった。股を潜った小手伸也さん演じる大久保忠世との過去のシーン――― 何故忠世は正信家康(演:松本潤)に紹介したのか。そして忠世が正信に銃口を向けるシーンでは、どんな思いで銃口を向けるに至ったのかを想像する余地がありとても良かった。正信の本心とうかがえるような表情が多々描かれた回であった。
思えば狂言チックな台詞によって呆気に取られていた登場回第5話でも、本心を滲ませるような表情をしている芝居がいくつか散りばめられていたように思う。服部党による夜襲の前後など、それが顕著だった。松山ケンイチの多彩さに心掴まれっぱなしだ。

それからもう1点言及したいのは、野村萬斎さんが演じる今川義元の舞のシーン(1話)。本物の能楽師狂言方である萬斎さんの謡と舞が劇中で観られるとは‥‥。本編の感想とはズレるが、これは観ることが出来て良かった‥‥!と思う。あぁ、萬斎さんの狂言が久しぶりに観たい!


『ブラッシュアップライフ』

何度も同じ人物の人生を周回するのが題材なのだから、それを言っちゃあおしめえよ、って感じなのだが、私は正直同じ人生を繰り返していく展開と人間の面倒臭いところをつつく台詞回し(日常的な何気ない愚痴とかツッコミとか)に、中盤飽きていた。ドラマクラブの竹野内豊推しっぷり『エヴァンゲリオン』風“ミタコング救出作戦”などをはじめとする小ネタや、懐かしき学校でのあるあるにテンションは上がったのだけど、小ネタは小ネタ、それ以上に楽しめなかった。徳を積むって、何?徳を積むために徳を積むってどうなの?とか、禅問答のような疑問が沸いたりしていた。

でも第8話で一気に引き込まれた。

主人公のあーちん(演:安藤サクラ)の4周目の人生で、幼馴染のなっち(演:夏帆)、みーぽん(演:木南晴夏)まりりん(演:水川あさみ)が死んでしまって、葬儀の後にカラオケで福ちゃん(演:染谷将太)ごんみさ(演:野呂佳代)と一緒に故人を思い出して語るシーン。ここに至るまでに、視聴者も主人公の人生を何周も何周もしてきた。その中で心に焼き付いている瞬間がいくつも思い返される。何周も何周もさせて、その積み重ねこそがこのシーンの深みに繋がっていた。くだらないと感じられたことも、小ネタも、全てここに繋がっていたのだと気付かされる。飽きていた自分を少し悔いることになった。

あーちんが4周目の人生で死んでしまってから、死後案内所でバカリズムと会話するシーンはとてもジーンときた。今まで切望していた「来世=人間」が叶ったけれど、来世ではなく今世を選択してもう一度同じ人生をやり直すことで幼馴染3人に出会い直したい。台詞にもあったけれど、来世の為でもなく、徳を積む為でもなく、ただ100%その人のことを思っての行動。そんな純粋な選択をしていくんだろうなということが、安藤サクラさんの演技から滲み出ていた。

第9話では、人生が超順調に進んでいるところで怪しい人が出てきそうなカットが挿入された。え、誰!ここで誰が何起こしてくるの!?と思っていたら‥‥今このタイミングで浅野忠信----!ここで浅野さん出しちゃいますか!すごくラスボス感ありますけど、ラスト2話ですけど、良いんですか!!!ふぅ~!!という個人的びっくりキャスティングだった。何故浅野忠信でテンションが上がっているのかは謎。あまりテレビドラマで見かけない浅野さんがわざわざこのタイミングで出てきたからかもしれない。
でも最終回では、意味深な顔して素っ頓狂なことを喋っていて、観ているこちらの力がかなり抜けて最高だった。この感じ、映画『茶の味』とか『ナイスの森』感あったな。(『ナイスの森』は夏帆さんも出ていたな!)

それから、あーちん4周目の人生でまりりんと一緒に、なっち&みーぽんと再会して一緒にお茶するシーンで、Kiroroの『BEST FRIEND』がかかるところは目頭が熱くなった。いや~Kiroro。ドラマに全く関係無いけど、個人的に『BEST FRIEND』が主題歌だった朝ドラ『ちゅらさん』を子供の時めっちゃ観てたから!初めて買ったCDは『BEST FRIEND』が入っていたアルバムだったから!!こんなところまで視聴者を刺激してくるのが計算だとしたら、どうも恐れ入りました。ありがとう。

なっちとみーぽん、そして180人の乗客の命を助ける為に中村キャプテン(演:神保悟志)に毒を盛ることまで考えたあーちんとまりりんだったが、同じ”タイムリーパー”の河口さん(演:三浦透子)のファインプレーにより2人で同じ937便(なっちとみーぽんが乗客として乗っている)に乗れた時は、観ているこちらもファインプレー!!!!と息を吞んだ。937便の機内アナウンスで、自ら機長と副機長の名前を名乗った時は「これをなっちとみーぽんが今聞いているんだ!」と想像しワクワクしたし、無事に航路を変更し、空港でなっちとみーぽんと再会したシーンは本当に嬉しくなった。

そして40歳のプチ同窓会で、加藤の粉雪が聴けて最高だったし、福ちゃんは絶妙に歌が下手だし(染谷さんが絶妙なラインを絶妙に表現してて最高!)、あーちんとまりりんによるCHAGE and ASKAの『YAH YAH YAH』は一緒に歌った。そして最終回終わって即youtubeで『YAH YAH YAH』検索した。今から一緒に、これから一緒に、殴りに行こうか!!!

人生5周を共にしただけあって、さすがに最後は一緒にハラハラして、一緒に喜んで、一緒に歌ってしまう、そんな巻き込まれドラマだった。正直最初あまりハマれなかったのに、他のドラマより長いレビューを書いてしまったかもしれない。してやられた。ちなみにミタコング(演:鈴木浩介)のねちっこい風体は中学時代の担任にめっちゃ似ている。


『星降る夜に』

吉高由里子と北村匠海は何故にあんなにナチュラルボーンに人たらしなのか‥‥と感じ入る。お互いがお互いに好きだという感情を割と初期から隠さない。うじうじしないで表に出していく。カラッとしていて気持ちの良い恋愛模様。だから恋愛模様以外の部分にも焦点が合わせやすい。主人公2人以外の人物もしっかり描かれていく。1話冒頭の、「えっ?イマドキそんなファンタジーな出会い設定有りかよ?」という感情に騙される勿かれ。

いつも紳士なナイトor業が深いおディーン様(即ちディーン・フジオカさん)は、今回は違う一面を見せてくれる。思いっきりコントな転び方を披露した時はネットが沸いていたし、最終回で再びズッコケていた。とてもチャーミングなおディーンさんも素敵だった。

千葉雄大さん演じる春の苦悩が描かれるシーンもとても良かったし、もっと千葉さんのお芝居を観てみたいと思った。

とにかく全キャラクターが魅力的。嫌味が無い。一応ヒールを担っていた伴さん(演:ムロツヨシ)の役もバックボーンをしっかり描き、キャラクター達がそんな伴にも寄り添っていて、観ているこちらが人間力を勉強させられる。

吉高由里子主演×大石静脚本の同じタッグで制作される来年の大河ドラマ『光る君へ』がとても楽しみだ。千葉雄大さんの烏帽子再びとか(千葉さんは『平清盛』で高倉天皇役『いいね!光源氏くん』で光源氏役を演じ、いずれも烏帽子を被っておられた)、おディーン様の平安時代とかも観てみたいからキャスティングされないかなぁと妄想してみる。


『大奥』

大奥、原作未読で映像作品も初めて観たけど超面白い。史実と男女設定を逆にすることで際立つことが沢山ある。3代将軍 徳川家光を演じる堀田真由さん&万里小路有功(までのこうじ ありこと)を演じる福士蒼汰さんがとても良くて、堀田真由ちゃん堪能♡と思っている内に、5代将軍 徳川綱吉を演じる仲里依紗パイセン&右衛門佐(えもんのすけ)を演じる山本耕史パイセンが後から出てきてヤラレル、ってかんじ。仲里依紗さんのYouTubeのギャルな感じに慣れてしまうとカウンターパンチを喰らうので、お怪我にお気をつけて。

<8代将軍 徳川吉宗×水野祐之進 編>以降(8話以降)は特に沢山の登場人物が入れ替わり立ち代わり出てきて、しかも1人1人がとてもよく描かれている。9代将軍徳川家重を演じる三浦透子さんも圧巻だった。映画『ドライブ・マイ・カー』での素晴らしさは言わずもがな、『エルピス』のチェリーさん役『ブラッシュアップライフ』と続き、こういうお芝居もされるんだという発見。9話では、黒沢あすかさんと貫地谷しほりさんのドスの効いた対峙、當真あみさんの清らかさも、目を引いた。

最終話、大奥の成り立ちや出来事が記された書物『没日録』を返却しに来た吉宗公(演:冨永愛)が、村瀬(演:石橋蓮司)の幻影を見て倒れるシーンは鳥肌が立った。何代もの将軍とそれを取り巻く人々が描かれてく本作。それぞれの時代に違った色があるものの、そのどれもがブツ切れではなく1つの流れとして大奥という場が描かれていく面白さがあった。吉宗公が読者として『没日録』を読み進めることで同時にドラマが進む。視聴者は吉宗公と共にドラマを追う。その設定自体はドラマの構造故に採用されたものと視聴者に思わせておきながら、実のところ吉宗公自身に近い記録が消されていることに大きな意味があった。そして3代将軍 家光公(演:堀田真由)の時代から生きていた村瀬(演:岡山天音→石橋蓮司)が亡くなるということ、これは大奥にとって(この作品にとって)とても大きな事なのだと感じざるを得ない。この事実にもまた、視聴者は吉宗公と共に打ちのめされるのである。

これは予告されている『大奥』Season2も、どんな俳優達がどんな役で登場するのか、どんなふうに時代が描かれていくのか、楽しみで仕方ない!!(既に最終話から登場した玉置玲央さんがとても楽しみだ!)


『リバーサルオーケストラ』

元天才バイオリニストで市役所職員の谷岡初音(演:門脇麦)指揮者の常葉朝陽(演:田中圭)を中心に、西さいたま市のオーケストラ「児玉交響楽団(通称・玉響)」を立て直す過程を描く本作(以下『リバオケ』と記載する)。
同じクラシック音楽モノという括りでいくと『のだめカンタービレ』(以下『のだめ』と記す)があまりに好きで、しかも『リバオケ』放送直前の昨年末にTVerの配信で『のだめ』を全話一気に観直していたこともあり、新しく始まる本作に対して最初は正直「ノれるかな‥‥」という一抹の不安もあった。こういう声は少なからずあったとは思うけれど、でも蓋を開けてみれば『リバオケ』には『リバオケ』の良さがあって、繊細なお芝居をされる印象の俳優たちはこの作品では沢山はじけていて、とても興味深かった。それに演奏シーンが本格的だとやっぱり震える!

恋愛模様や本格的な演奏シーンを挿みながらも、プロとして音楽を職業にして生きていくのが大変な中での各々の葛藤描写が本筋には存在する。

第6話では、公演を目前に控えていながらも、「公演には出ない」と言って練習に顔を出さなかったチェロ主席・佐々木玲央(演:瀧内公美)の葛藤が描かれる。
恋に現を抜かしているかと思いきや、実は陰で人一倍努力していた玲央。そんな玲央の姿を知ったティンパニ奏者・藤谷耀司(演:渋川清彦)は玲央と居酒屋へ行き、そこで玲央は本音を吐露し、藤谷と対話する。

「私も凡人だからさ、他の人の何倍も努力しないと、人並みにすらなれない。昔はあると思ってたんだけどね、才能。」
「天才に凡人の気持ちはわかんないよね。どんなに努力しても追いつけない。才能の差って残酷だよ。」

チェロ主席・佐々木玲央の台詞より

「才能ならあるんじゃない?あんたにも、俺にも。」
「努力する才能。世の中、努力が続かない奴の方が多いんだ。それ考えたら、一番好きなことの為にシャカリキに努力できるのだって立派な才能だろ。俺はそいつを頼りにこれからもやってこうと思ってるよ。」

ティンパニ奏者・藤谷耀司の台詞より

更に翌第7話では、主人公の谷岡初音(演:門脇麦)がプロの音楽家として生きる覚悟を問われる。トラウマとなっている楽曲をなかなか弾けずにいる初音だったが、ネット上ではトラウマの原因となった過去の出来事についての書き込みも増えていた。精神的に追い込まれた初音は、周囲の人々とも衝突してしまう。

「天才様のお気持ちは私らにはわかんないわ。」
「自分一人が大変だなんて思わないでよ、皆しんどい思いしてんだよ。人と比べて落ち込んだり、自分の限界思い知らされたり、それでも必死にしがみついてんの。初音っちはどうなの?本当にこれしかないって思いでこのオケに居る?心のどこかで嫌になったら市役所に戻れば良いって思ってない?」

チェロ首席・佐々木玲央の台詞より


「どうせ私はダメな人間です。すぐに凹むし覚悟も無い。プロになる資格なんて無いんです。」

主人公・谷岡初音の台詞より

「君が自分を貶めるのは、君と、君の音楽を信頼する全ての人をも貶める行為です。君は3人の団員をこの世界に連れ戻した。僕だってそうだ。あの時君の演奏を聴いていなかったら、今僕はここにはいない。なぜ、自分も仲間も信じようとしないんですか!資格があるかどうか決めるのは君じゃない。ましてや三島翔一郎(初音の幼馴染で、人気ヴァイオリニスト。演:永山絢斗)でもない。君の音楽に触れた聴衆だけです。くだらないことに囚われて、いつまでも立ち止まっているくらいなら、オケも音楽も今すぐ辞めたらいい。」

マエストロ・常葉朝陽の台詞より

この一連の台詞たちが自分に突き刺さってしまって、気づいたらボロボロ涙が溢れてしまった。私自身は天才でも何でもないけど、というか才能すら無いというのに、やりたいことに一心不乱に向かい続けることを出来た試しがない。いつでも逃げ道を作って没頭できずに、あれでもない、これでもない、と対象を変えてフラフラしてきた。才能も無ければ信念も無い。努力も続いていない。これらの台詞群と俳優たちの切実な体現によって、自分自身の現実と生き方に向き合わざるを得なくなった。特に瀧内公美さんの切実さは、本当に素晴らしかった。切り殺されました。
(余談。瀧内さんの時代物観たいな、大河とか大奥とか出ないかな、なんて思っていたら、来年の大河に出る!!!!とっても嬉しい!!!!)


また瀧内さんだけでなく、俳優陣のキャラクター造形が光っていた。

エルピス』でのお芝居がめちゃくちゃ良くて、個人的に大注目の岡部たかしさんの違った一面を観られたのも嬉しかった。たまちゃん(玉響の公式キャラクターのぬいぐるみ)と会話したり、たまちゃん第2形態(着ぐるみ)でスキップしながらチラシ配りしたり。そして一番傍で長く玉響を支えてきた小野田(演:岡部たかし)の心意気に胸を打たれた。実演家達を傍で支えている人は無くてはならない存在なんだよなと改めて思わされる。
余談だが、『エルピス』の岡部さんが出るなら観よう!と思い『リバオケ』を観始め、3ヶ月間でほっこり岡部さんにすっかり見慣れ、その後に再び『エルピス』1話をチラ見すると、モラハラセクハラカラオケ祭りな岡部さんの振り幅にかなり動揺する!


登場回は少ないけれど、相武紗季が出てくると、世代なのでルンルンな気分になった。自分の年齢よりも10~15歳くらい年上の俳優の方々って、自分が多感な時期に観ていたドラマの一線で活躍されていたので、今でも前を走ってくれている人たち、という感じがする。相武さんもそのおひとりで、久しぶりに素敵な役で出ていらしてなんだか嬉しかった。


また平田満さんについても言及したい。平田満さんの演じた役が深く掘り下げられる作品を観るのは、個人的に映画『蒲田行進曲』以来だったのだけど、『リバオケ』の平田さんを観ていたら久しぶりに『蒲田行進曲』が観たくなった。大学の時、作品を研究する為に『蒲田行進曲』を何度も一時停止して観ていたことを思い出す‥‥。
『リバオケ』で演じられた穂刈さん、とても魅力的な役だった。穂刈さんがフィーチャーされた第8話では印象的な台詞の扱い方があった。穂刈の妻(演:宮崎美子)が認知症になり、自分で介護していた穂刈。家では妻から目が離せず、集中してオーボエの練習ができないでいた。やがて、穂刈は退団をしようと決意する。そんな穂刈に娘(演:内田慈)が話しをする。

「お願いだから、現実を見て。」

この台詞は8話の予告映像で使われており、この台詞だけを聞くと「音楽を辞めて現実を見て、介護に専念して」という意味かと取ってしまった。しかし、実際に本編を観ると真逆の意味で使われていた。

「ねぇお父さん、もう、限界だと思うよ。勤め先の人にまで心配かけて。お母さん言ってたよ。おばあちゃんの介護で大変だったから、自分の時はホームに入れて欲しいって。お父さんがオケ辞めてもお母さん絶対喜ばない。辞めたところで老々介護じゃ共倒れになっちゃうよ。お願いだから、現実を見て。」

穂刈の娘の台詞より

「現実を見て」=「オケを辞めて」ではなく「お母さんをホームに入れて、音楽を続けて」だった。俗に言う「現実を見て」の扱われ方ではなくてホッとしたと同時に、音楽が職業として認められにくい日本の背景に自分の先入観が如何に呑まれているか目の当たりにした。現実を見ることって、自分の気持ちや今までやってきたことを無視することではないのかもしれない。物事の本質を見ていくことなのだ。現実を見て音楽を捨てるのではなく、本質的に自分や相手の気持ちをどう現実に落とし込むかを考えることが重要なのかもしれない。穂刈さんは今まで音楽をずっと続けてきていて、しかも大切な職業なのだ。穂刈さんにとって音楽は、夢でもあるかもしれないが、現実なのだ。愛する妻のことも一番近くで介護したかったのかもしれないが、奥さんは穂刈さんが音楽を続けることをきっと望んでいて、ホームに入ることも希望していた。どちらの意思も尊重できるような解決策を提示してくれた、娘役の内田慈さんの「お願いだから、現実を見て。」は何だか柔らかく包み込んでくれるようだった。
愛する妻に贈った穂刈さんのオーボエ独奏、とてもとても素敵だった。


と、ここまでは出来る限り真面目に書いてきたつもりなのだが、ここからは書き留めていたメモの勢いそのままで書いていく!!!あしからず。


第9話は冒頭から瀧内公美さんと門脇麦さんの赤ちゃん言葉な会話から始まる。俳優達がノリノリで遊んでいるのが伝わってくる。

また前半の『運命』(ベートーヴェン『交響曲第5番 ハ短調 作品67』)練習シーンでは、下からのアングルの田中圭氏と前野朋哉さんの切り返しショットでズッキュンきた(死語)。田中圭さんの指揮が今までで一番良い、、、、!!!!!!どんどん指揮がご自身のものになってきているというか‥‥。
『のだめ』でもそうだったけど、オーケストラ物の映像作品、本当に好きだ。それは本物の音楽家が演奏する音楽とは別物の良さ。キャストそれぞれが初心者段階から本気になって練習して、ギリギリのところで最大限のものを出そうとしているところが音楽にノッて、その様が映像にも表れて最高の演奏シーンが出来上がっていく。そんな良さだ。きっと俳優達は想像を絶するような努力で臨まれているのだろうと思うけれど、観客・視聴者というのは一旦その事実は脇に置いて観たい生き物だ。しかしながらそんな観客の前提があったとしても、俳優自身が役を飛び越えて、本物の何かが俳優自身から滲み出る瞬間が見られるから、観客は心打たれるのかもしれない。
『のだめ』の時は音大が舞台だったので、「プロの音楽家になるまでに、まだ成長の余地のある設定」だったから”俳優の成長=役の成長”として成立したのかなと感じていた。『リバオケ』はポンコツとは言えプロの楽団の設定。そこにどれだけ追いつけるのか‥‥?と当初は感じていた。けれど、そんな設定を凌駕するほどに、演奏シーンには感動してしまった。もちろんそこには本物の音を演奏していて且つ出演もされている神奈川フィルハーモニー管弦楽団(以下:神奈フィル)のお力も大きい。

ただ(9話に限らず)演奏シーン以外は主席同士だけの会話シーンが結構多いところには少しツッコミを入れたい。ところどころ神奈フィルさんだけではない違うエキストラでも良いから散りばめればもっと良いのになぁと思ったり。

また9話では劇伴の力も大いに感じた。定期演奏会を満席にできるかという危機のシーンが続く中でのラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番 第1楽章』の編曲。パーカッションとベースが刻む鼓動がシーンの鼓動となって、観ているこちらもドキドキしていることにふと気付いた。

そしてなんといっても、チャイコン(チャイコフスキー『ヴァイオリン協奏曲二長調 作品35』※リンク先のソリスト・髙木凜々子さんは『リバオケ』で谷岡初音の演奏の音を担当)はやっぱり大好き。『のだめ』の時も大好きだった。ラスト2小節でチェロの玲央さんと初音っちのショットが2カットあるのだけど、あのショットのボーイングも編集も最高だった。はぁ、玲央さん、というか瀧内公美さん素敵‥‥。チェロって良いよね、何でだろう。『カルテット』の時のすずめちゃん(演:満島ひかり)の演奏も大好きだった。椅子に座った人間の大きさと同じくらいのサイズの楽器だから、抱きかかえているように見えて、楽器と音への愛情を視覚的にも感じやすいのかもしれない。

『運命』本番の演奏シーンでは、主席に戻っていた穂刈さんののびやかな演奏にじーんときたしし、音色が美しいと目に見えてわかるフルート主席・蒼くん(演:坂東龍汰)のお姿、そして観客として来ていた蒼くんの元バイト先のおじちゃんにもじーんだった。


最終回は序盤から泣きっぱなしだった。オーケストラってホントに良いな。一人一人が愛おしい。
三島親子(演:加藤雅也永山絢斗)の関係性もとても良かった。永山さんは玉響の俳優さん達より更に孤独だったんだろうなと想像してしまった。ひとりで練習を続け、演奏シーンで一発かまさないといけない。仲間と一緒に音楽の楽しさを味わう!って感じのシーンも殆ど無い。凄いプレッシャーだろうな‥‥。それだけでも物凄いことだ。その孤独が三島彰一郎自身とリンクしている。
『チャイ5』(チャイコフスキー『交響曲第5番 ホ短調 作品64』※リンク先は神奈フィルの演奏)は本当に良かった‥‥!KEEさん(渋川清彦さんの旧芸名!)のティンパニ超カッコ良過ぎて見事だったな。俳優さん達があれだけ違和感なく演奏できているって、やっぱり本当に凄いことだなってふと思う時があって。フルートの坂東君は、初回の演奏シーンからこの人のフルートは美しい音色なんだろうなというのが想像ついたけど(実際に収録されている音色が美しく、その音に対する映像・演技に違和感がなかった)、最終回の『チャイ5』では更にパワーアップしているように見えた。田中圭さんはやっぱり後半になるにしたがって指揮が急激に上達されている感じが、素人目でもわかった。

やはり『リバオケ』も、”登場人物たちの成長=俳優たちの成長”が滲み出ており、それがより聴衆の心を打った。クラシックのことは明るくないけど、それはきっとプロのクラシックの世界と、クラシック物の映像作品との違いなのかなと思った。

どの演奏シーンも音楽のリズムに合わせて映像も編集されているのだが、私はリズムに合わせてカメラのシャッターを切っていきたい気分だった。そしてここだけの話し、私は毎回演奏シーンはテンション上がり過ぎて部屋で一人で拍手してた。最高でした。素敵な時間をありがとう。

また最終回の門脇さんは、「さすが門脇麦」って感じだった。台詞一つで観衆をグッと引き込ませることができる。実際に私も引き込まれた。初音っちのあの謎でちょっと不思議ちゃんなキャラクターが、結構最後までハテナ?な感じだったけど、ラストシーンで腑に落ちた。

坂東龍汰くんと田中圭さんと平田満さんのイケメン度が回を追うごとにマシマシになっていったし、KEEさんは渋々だし、瀧内公美さんはヘアメイクもスタイリングも毎回最高に大好きだった(カチューシャ真似しよ~♡)。そういや濱田マリさん(ヴィオラ トップサイド・桃井みどり役)って映画『マエストロ!』でもオケ団員の役だったよなぁ、ヴィオラは2度目なのかな?と思い調べたら、第2ヴァイオリン奏者の役だったみたいだ。


最終話を観終えてから、改めてキャストコメントを読むと感慨深い。どの方々も素敵なコメントをされているのだけど、とりわけ平田満さんのコメントがお茶目で、実際に演じられていた姿を想像しながら読むと泣けてくる。



そんなわけで(?)映像作品の演奏シーンに激弱なので、音楽モノ(クラシック中心、初っ端ジャズだけど)の映像作品をまとめて置いておきます。
※筆者未見の作品もございます。

◆この世の外へ クラブ進駐軍
https://youtu.be/Rmvc4ytYObQ
◆スウィングガールズ
https://youtu.be/zpPVEHD0XwE
◆のだめカンタービレ
-最終楽章 前編 https://youtu.be/dPUA7zj2zMg
-最終楽章 後編 https://youtu.be/Dv_f5vOLawY
◆神童
https://youtu.be/l_z6re4yvGQ
◆楽隊のうさぎ
https://youtu.be/jVRI69dGWZ0
◆マエストロ!
https://youtu.be/ch2S4-eohDY
◆カルテット
https://youtu.be/r2tRJFgDOe0
◆さよならドビュッシー
https://youtu.be/bik9EdYLHeY
◆蜜蜂と遠雷
https://youtu.be/b9z6NcS5Wwc
◆羊と鋼の森
https://youtu.be/cVmuY0DZSlk


『100万回言えばよかった』

大河とは違う一面を覗かせる松山ケンイチ氏を見守る。子犬のような目もするんだこの人は‥‥という発見。うーーーん、今期は松山ケンイチ氏に軍配だ。心を掴まれてしまった。やっぱり『平清盛』をもう一度観直したいなぁ!今NHKオンデマンドで配信してるらしいし‥‥オンデマンド契約しようかな‥‥。でも節約しないとだしなぁ(笑)大河と言えば、『龍馬伝』での佐藤健もめちゃくちゃ良かった記憶。岡田以蔵を見ていてヒリヒリしたのを憶えている。やっぱりオンデマンド契約かな(笑)!

ついつい本題から逸れてしまった。

話しを本作に戻すと、とにかく荒川良々氏が恐怖過ぎて、中盤あたりで何らかの黒幕だと予想がついていたのにもかかわらず、本気で怖がって心臓ドキドキで観ていた。

香里奈さんを久しぶりに観られたこと、神野美鈴さんのゾッとする恐ろしさ、田中希也役の永島敬三さんのお芝居を観られたことが収穫だった。

あとはしつこいけど本当にとにかく松山ケンイチ。違う人格が自分に乗り移った時のお芝居も、本当にスッとなめらかに、でも違う人物なんだなと腑に落ちた。沢山の要素を持っていらしてとても魅力的な俳優さんだなと改めて感じた。

そっとここに松山ケンイチさんの出演作品・インタービューアーカイブを置いておく。NHKだけど。


『今夜すきやきだよ』

この作品、とてもとても好きだった。だけど上手い言葉にできない。どの回のテーマも、どのお芝居も演出もカメラワークも、とっても好きだった。だけど言葉がまとまらない。猛烈に心を鷲掴みされるわけではないけどじんわり沁み込んできて、でもど真ん中に何かを残していく。書けない‥‥。悔しい。けどこの書けない感じをそのまま残しておこうかな、とも思うので、稚拙だけど、感じたことをポツリポツリと書き留めておく。

トリンドルさんの演技をまともに観たのは初めてだったが、とてもとても良かった。なんて形容したら良いのかとっても難しいのだけど‥‥。
白眉は第7話『ふわふわのおにぎり』の回。太田あいこ(演:蓮佛美沙子)の結婚を素直に喜べなかった浅野ともこ(演:トリンドル玲奈)。しかしモヤモヤ悩んだ末にともこはあいこを応援することを心に決め、料理が苦手なあいこが作ったおにぎりを食べながら、「おめでとう」と嗚咽する姿が胸を打った。


またいくつか印象に残った台詞がある。

「一緒に居るだけで幸せなはずなのに、どうしてこんなに疲れるんだろう。」

第9話より、あいこのパートナー・杉浦ゆき(演:鈴木仁)の台詞

この気持ちはパートナーだけでなく、両親やその他の人間関係でも同じことが言えるなぁと感じた。自分本位なだけでは相手と衝突するし、相手を慮ろうとし過ぎると自分を置いてけぼりにしてしまって疲れてしまう。違って当然という立場でざっくばらんに自分の気持ちを話すこと、相手の話しを聞くこと、そしてふたりだけの道を拓いていくこと。改めてそんな大切さを感じた。


「何か意見を持つってことは、誰かを傷つける可能性があるってことでしょ?その時できることってちゃんと悩むことくらいじゃない?意見は消せないから、1つ1つ、これで良いのかな?って悩み抜く。」

第11話より、あいこの台詞

人は誰一人傷つけることなく生きていくことはできないのだろう。知らない内に自分の言動が誰かを傷つけているかもしれない。それに気が付かないことは怖いから、できるだけアンテナ高く、且つ想像力を働かせたいとは思う。今は特にSNSなどを通して分断が起きる。怖い。自分も分断を引き起こしている可能性すらある。でもだからって怖がって自分の意見を持たないというのは違うんだと思う。自分の感じ方は自分のものだから。そこに嘘をつく必要はない。悩み抜く過程で考えが変わることもある。あいこちゃんの台詞からはその全てを包み込む優しさを感じた。



ともこ、あいこ、ゆき、しんたを最終話まで見ていて、”人生の仲間”っていいなと思った。人生を共にしていくのは血縁やパートナーだけではなくて。本当の意味で助け合って生活していくことができたなら、それはとても尊いことなんじゃないか。生活を愛するって素敵だな。ともこもあいこもそっと隣に居てくれるような安心感があった。

あいこちゃんのビタミンなオレンジネイル大好きだし、最終話のカラフルなカチューシャコレクションはめっちゃ可愛いし、ゴミサンタは笑った!
ともこはトリンドルさんの若干ぎこちない動きがいつも可愛かった。

オープニングもエンディングもとても好きだった☻


『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』

高橋一生さんはもちろんのこと、橋爪功さんが良い!すっとぼけたおじいさんかと思えば、策士で怪しい表情も覗かせる。NHKの『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』を見れば一目瞭然か。

第9話をうっかり見逃していたことに、最終話を観始めてから気が付いた。完全に失念していた。というか、観た気でいた。1週分見逃していたなんて‥‥。ここまで観てきたのに結構な重要そうな回を逃していて、最終話もあまり楽しめずちょっと残念。

中盤から突如始まった「航さんに聞いてみよう」という、実質橋爪功さんが素で相談に答えるコーナーがシュールで、クスっと笑えた。


『ワタシってサバサバしてるから』

一度観始めたら、リタイアするのが何故か悔しくて観続けた。丸山礼に栗山千明がシンクロしていく過程が面白かった。結構イラっとする展開と演出が多かったけど、偶に網浜奈美(演:丸山礼)に励まされる感じ、あった。特に後半。こんなに振り切って生きているワタサバ女が居ることで、自分の悩みなど小っぽけに見えて、笑い飛ばそうかなと思える。私も休職した上に無職になったけど、網浜さんも無職なのにガハガハ笑っているし、まぁ良いか~と(笑)この現象は制作者の狙いにまんまとハマってしまった証なのかもしれない。


『信長のスマホ』


スマホシリーズの第3作目らしい。SNSと連動してシュールに仕立てている。今まで知らなかったので、こんな企画があるんだ!という発見。


『大河ドラマが生まれた日』

今年は11年ぶりに大河ドラマを観ることにしたので、この大河ドラマ誕生記も併せて観てみることにした。
五社協定がある時代に、各映画会社や歌舞伎や新劇の方々から役者を引っ張ってきて出演交渉するのは、こんなにも大変で、そしてこんなにも興奮することだったのかと感じることができた。私も大河ドラマに魅了されてきた一人だが、主人公が生まれてから死ぬまでに多くの人たちがその人生に関わるのと同様に、沢山の役者やスタッフたちが寄り集まって1つの作品・シーン・カットを創り上げている事実に魅了されていた、と言っても過言ではない。

映画業界に憧れていたが入社できずにNHKに入社した主人公。今居る環境に不満があっても、環境の外に出ることで解消するのではなく、環境の中で闘うことを選んだ主人公は凄いと思った。私も少しは見習おう‥‥。

桜田門外の変の手作り感と、佐田啓二(演:中村七之助)が登場人物のドラマに実子の中井貴一さんが出演していることに、なんだかワクワクした。中村七之助さんの発声は昭和の俳優感があった。また伊東四朗さんが出てきたので、ここでもまた『平清盛』を見たくなるという現象が起きた‥‥。しつこくてすみません。(『平清盛』で伊東四朗さんは白河法皇という役を演じられた。清盛は白河法皇の落胤という説を元に描かれていた。)


『生理のおじさんとその娘』

『恋せぬふたり』の吉田恵里香さんが脚本。ラップを要素として取り入れることで、自分の気持ちをぶつけることへの葛藤を緩和させ、本音で家族と対話することを助けていた点になるほどなと思った。家族と、各々が連れてきた人たちとのラップバトルにはカタルシスがあった。というか、主人公の娘のラップが痒いところに手が届くような主張で、個人的にスカッとした。


よくわかってる フリしてるだけのパパは終わってる

光橋幸男(主人公/演:原田泰造)の娘(演:上坂樹里)のラップより

寄り添いの姿勢を示されると助けられることもある。でも、簡単に理解されてたまるかって思うこともある。ニセの寄り添い「感」なんぞ要らない。理解して欲しいわけではなくて、ただ尊重して欲しいだけなのかもしれない。理解せずとも、無視せず、蔑ろにせず、何かあった時にただ守ろうとしてくれるだけで良いのかもしれない。


はいはい出ました主役気分 後悔中劇場版幸男
後悔してる自分大好きよ 自分に酔って良いご身分
悲劇のスターってどんな気分? わかったつもりでわかってない
ムカつくのはその鈍感だって!

光橋幸男の娘のラップより

グサァッ。このパパが悲劇のスターかどうかはさておき、私は悲劇に酔うところが大有りなのでぶっ刺さった。結局本当に相手を尊重している時は、相手を想っている時は、自分の保身などどうでも良くなるはずなんだよな。自分の保身しか考えられない時は、自分にしか興味が無いということ。謝ることで自分を守るのではなく、自分と相手の違いを自覚して、互いが自立し、「無知の知」を自覚し続ける。


生理のおじさん? 肯定しねぇけど否定もしてねぇ
好きにしなよ パパの人生 私も嵐も子供じゃねぇ
前髪固めてインスタ上げて好きにやってんでしょ 自分で決めて!
堂々としてよ 自分の人生でしょ 起こしてよ 生理界にセンセーション

光橋幸男の娘のラップより

まさに!!!!尊重することは時に「無関心」に見える。寂しく感じることもある。だけどこれは最高の尊重だと感じた。最高の尊重には個々の自立がある。


怒ってるのは、そうやって「寄り添ってます」感出す時のパパの顔。
正確にはそのドヤ顔。自分しか見てないとこが嫌なの。

パパはまるで独裁者 私の生理 パパの支配下
ナプキン管理 いつもありがと
けどポーチの中は選びたいの 私の権利まで管理しないで
それだけは勘違いしないで

光橋幸男の娘のラップより

ほんとにできる?自己管理 自分で守れる?自分の権利
ほんとにできる?自己採点 病気になったら人生が一転
万が一の可能性 見逃したらそれはパパのせい
何かあったらママにすまない そんなの パパは耐えられない!

光橋幸男のラップより

パパは、自分のことしか見えてないのかもしれない。「自分が」耐えられないのが嫌だから。ついつい過保護になってしまう。「関心が高い=尊重してくれてる」というわけでもない。でも本来、誰もが自分のことしか考えていないよね。誰かに何かをしてあげたいって思う時、それは「相手の為を想って」ではなく、根底を探れば「自分がそうしたいから」であるのは自然なことだ。
一方で越権行為をしてほしくない娘の気持ちも経験したことがある。自分の権利は自分で管理し行使したい。任せてもらえる、自立させてもらえる、自分の足で立つアシストをそれとなくしてもらえる。それは信頼されている実感を持てる。


しかしこのドラマはこちらをスカッとさせただけでは終わらせなかった。主人公とその娘が気持ちをぶつけ合えた時点でラップを終えるのが綺麗なのかもしれない。しかし一段落したかと思ったら、隣で聞いていた人物たちがまた別の主張を始める。
わかった気になっているのが如何に危険か。自分の考えが正しいと思い込むことなかれ、と自分に釘を刺すことになった。

生理についてだけではない。現代社会では、ジェンダーや世代間ギャップや、あらゆる価値観についての議論がある。多様さを受け容れる社会にしようと皆もがいている。答えがすぐには出ない事柄について考え、話し続けることが大切なのだろう。『今夜すきやきだよ』でも出てきたテーマだが、自分の物差しだけで測ることなく、自分の主張を歪めるわけでもなく、建設的に話せるような人でありたい。
同じ生理が有る者同士でも、生理についての感じ方も、辛さの度合いも、境遇も全然違う。そのことをあらゆる登場人物からの視点で見せてくれた。

台詞やリリックだけでなく、演技もアニメーションや効果音の使い方も良かった。

※このドラマにも通じる「尊重と無関心」というテーマについて思考を巡らせる記事をいくつか書いています。良かったら合わせて読んでいただけたら嬉しいです。




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