シトラスティー🍊
真夜中。
咳が止まらず、息苦しかった。
このまま、死ぬのかもしれない。
そう思ってしまうほど、苦しかった。
胸の内側に異物があり、それが呼吸の邪魔をしているように感じる。
突然、意識が飛んだ、気がした。
その瞬間、自分の意識が自分の体に収まらず、身体の外側に出てしまった感覚がした。
空中をさまよう。空気になったようだった。
壁や天井はすり抜けられた。
空に浮かび、意識を広げる。
空全体を覆うように。
自分以外の、何か他の意識を感じた。
それは自分の中に入り込んできた。
それは、永遠に存在する何かである、と感じた。
途端に、自分も、他の全ても、永遠に存在すると感じた。
全ては一つであり、その瞬間だけに存在するものだと感じた。
意識をさらに広げると、宇宙を感じることができた。
地球は、言ってみれば、大いなる何かによる壮大な実験場。
望んだ体験をするために作られた世界。
自作自演でさえある。
もう一度、地球に戻る。
全部が作られたもので、自作自演なのであれば、それは、受け入れられるはず。
生も死も、全て。
全部望んだとおりに起こっている。
自分がしていることは何もない。
自分は、身体に乗って、様々な体験をする。
世界は、自分が望んだ体験を与えてくれる。
自分は何を望むか意図する。
世界は、その意図を叶えるように動き出す。
そして、体験することになる。
であれば、自分は何をしたい?
「全然、知らなかった」
オレは言った。たぶん、目は真ん丸になっていただろう。
口もポカンと開いたまま。
今、目の前にいる高校時代からの親友は、昨年末期がんになったらしい。
「前に会ったときは?分かってたのか?」
「いや、そのときは知らなかったし、たぶん、病気じゃなかった」
「ガンって、そんなに急になるもの?」
「ん~。オレの場合は、たぶん、そうだったよ。」
「そんで、ガンって、そんなに急に治るものか?」
「オレの場合は、そうだった。ある晩、急に治った。」
「なんだ、それ。」
不思議な体験をした後、胸に感じていた違和感が無くなり、呼吸がずいぶんと楽になったように感じた。
自分の中にあった異物の、本質的なものがなくなり、異物全体の力が徐々に弱くなっていくようだった。
そうなると自然に、病気のことを考えなくなった。
自分が病気だと思わなくなった。
自分が望むことに意識を向けた。そして、行動した。思考はいらなくなっていった。
感じたままに、望むことに意識を向けていると、身体は勝手に動く。
自分はそれを観察し、味わっていればいい。
一瞬、一瞬を生きる。
力を入れなくてもいい。
「『たぶん、もう治ったよ』と妻に言ったけど、信じてくれなかったなー」
ユウはシトラスティーを口に運び、笑った。
スッキリした味だろうな。見ているだけで良い香りがしている気になる。
「そりゃ、そうだ。治療はしていたのか?」
「そのときはまだ治療していなかった。その後、治療に入った。」
「治ってるのに?」
「まあ、治ってると言っても、それを知っているのが自分だけだからね」
ある日、確かお昼前だったと思う。
寝室に入ると、ユウ君はベッドに腰かけて窓の方を向いていた。
「起きてたんだ。どうかした?」
声をかけると、ゆっくり私の方に顔を向けた。
そして、私の好きな表情になった。
朗らかで、屈託のない笑顔。
ドキッとした。
一瞬、時が止まった。
何か、変わったような。何も変わっていないような。
ユウ君は、何か言おうと口を開いたけど、すぐに口を閉じて、少し首を横に振った。
笑顔のままで。
私は、彼を見つめながら、このままがずっと続いてくれたらそれでいい、と思った。
今、この瞬間、私たちは幸せだった。
不安も何もなく、ただ、100%に幸せを感じた。
そうだ、全部、これで良かったんだ。
「ユウ君、大好きだよ」
ほとんど言ったことがない言葉が、口からこぼれた。
ユウ君は、軽く目をつむって、うなずいた。
突然、目の前の風景が金色に輝きだした。
ユウ君も、その周りも、キラキラと輝いて見える。
人も、壁も、色んな物も、それぞれから金色の光が出ていた。
なんだろう、と考えるまでもなく、自分の中に答えを感じられた。
「ありがとう」
私は言った。ユウ君の方を向いて、世界に対して。
「誰も信じなくて、辛くなかった?」
「辛くはなかった、と思う。そういうものだろうし…。あまり気にならなかった。それに、もう、ほとんど忘れたよ」
「へー。あ、オレのことを伝えてなかった。今日はそのために会いに来たんだった。先にお前が衝撃的な話するから忘れるところだったじゃん。」
「だって、お前が元気?なんて聞くから」
「いや、まあ、そうだけど…。それって挨拶みたいなもんでさ。普通、元気だ、という返事が返ってくるものだ。それなのに、去年ガンになったとか。そんな回答、想定してないって」
「普通なんて、ないんだよ」
ユウは帽子をかぶっている。オレたちは、全国展開している有名コーヒーショップのテラス席に座っていた。街路樹が赤く色づいている。
もうすぐ、冬が始まる。
「オレ、結婚することになった。来月入籍する。」
「おー。おめでとう!そんな相手いたんだ?」
「まだ出会って1年半ぐらいだけど、トントン拍子っていうのかな。あれよ、あれよ、と言ってる間にそうなった。
結構、その気になったら1年もあれば、人生って大きく変わるもんだな」
「そうだよな。そっかー。良かったなー。」
「ユウもな。」
「ん?ああ、ありがとう。そうだな、良かったよ」
オレたちは、笑った。何がおかしいのか分からないけど、笑うしかなかった。
身体中が喜びに包まれたように感じた。
今この瞬間、間違いなく絶対的に幸せだ、と感じた。
生きていて良かった。
ユウと一緒に辺り構わず笑っていると、目前の歩道を歩いていた女性がオレたちを見た。女性は笑顔を見せて通り過ぎていった。
ユウと目が合う。
笑いすぎて、涙が出そうになった。
(了)
生きてて良かった。
一瞬でもそう感じることができたなら、それが何よりの答えです。
生まれてきたのは、もしかしたら、その一瞬のためだったのかも。
それは、とても些細なことかもしれない。
朝、水を飲んだときとか、ひなたぼっこをしているときとか、美味しいものを食べたときとか。
「もっと、こうなっている方がいい」
「これが足りない」
いつもそのように考え続けていると、そんな些細な幸せを見過ごしてしまうかもしれません。
目の前のことを大切にしたいと思います。
平凡な日常の中に、たくさんの幸せがあふれています。
ときには、現実を現実のままに受け入れて。
それよりも、自分が心地良いと感じられるものに意識を向けていると、案外、簡単に幸せになれるものだと思っています。
「無いものは、無い」
それよりも、今自分の内側にある心地良さを大切に。
「無いもの」に意識を向けていると、無いものはずっと無いままで、苦しくなります。
「有るもの」に意識を向けていると、有ることがずっと有るままで、嬉しくなります。
僕は、そう思っています🤣🤣🤣
(上記のストーリーはフィクションです😊)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました✨✨✨
今回で、少しずつ書いていた一連の物語は終わり(のつもり)です。
いつも読んでいただいた皆様に、心から感謝申し上げます。
さて、Kindle本に挑戦しよう❗
わくわく😆
はじめましての方は、こちらもどうぞ🌈
今までの作品(ユウ君が出てくるの)は全てこのマガジンに収められています。
是非、ご覧ください😊
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