ポテトからの、バラ🌹
夜8時前。
駅のロータリーに車を停めた。
他にも数台車が停まっていたが、運よく、駅の出口から目につきやすい場所に停めることができた。
幸先良い。
彼女に、ロータリーに着いたことをメールで伝えた。
ふーっと、長く息を吐きだす。
うまくいったら、まず、誰に報告しよう。
最初に思い浮かんだのは、高校時代からの親友、ユウだった。
それもいいな、と一人で納得した。
これから、彼女にプロポーズする。
今日は、彼女と出会ってからちょうど1年が経つ日。
そのタイミングで、結婚を申し込もう、というわけだ。
単純だけど、しっくりくる。
駅から漏れる明かりを眺めながら、彼女との出会いに思いを馳せた。
その少し前。
ユウと飲みに行った後、自分の行動の原理を考えるようになった。
全ての行動に理由がある。
だから、良いも悪いもなく、全部必然。
どうしようもないこと。
そう考えると、起こったことに不満を言ったり、誰かの言動を非難したりする気持ちが消えていった。
また、自分の行動の一つひとつに意思と責任を持つべきだと思えた。
誰もが、自分を幸せにするために必要なことをすべきだ。
そう考えたオレは、愚痴を言いながら会社と家を往復する毎日を変えられるような、ワクワクできることを探し出した。
結果的に、毎週一人で行っていた映画鑑賞をやめることにして、SNSを始めてみた。
自分の人生に、もっと他の人との接点を持てると、おもしろいかもしれない、と思ったから。
Noteという、長文掲載型のSNSに登録し、テキストを発信してみた。
主に、これまで観てきた映画のことを題材にして書いた。
一か月もすると、何人かのフォロワーとコメント欄でやりとりをするようになっていた。
映画好きな人もいれば、そうでない人もいる。年齢や性別も様々。
これがSNSの世界。
会ったこともなく、どこで何をしている人か知らない人たちとネットワーク上で言葉のやりとりをする。
どこか空虚な感じは否めないが、それでも、自分にとって大事な世界になっていった。
そうしているうちに、フォロワーの何人かが、同じ映画を勧めてきた。
それは、アメリカで定期的に制作されるアニメ映画だった。
このカテゴリーの映画を映画館で観たことはなかった。
男一人で行く気になれず、また、あまり興味を持てずにいたからだ。
しかし、普段仲良くしているフォロワーが、示し合わせるのでもなく、別々に自分におススメだと言ってきたのだから、もしかしたらそうなのかもしれない。
そこにも何か意味があるかもしれない。
そう考えると、なんとなく観てみたくなり、久しぶりに映画館に足を運んだ。
少し、ワクワクしたんだ。
土曜日の朝はほぼ満席だった。子どもが多い。平日の夕方にすれば良かったな、と思いながら座席に付いた。
劇場内の雰囲気が、若々しく感じられる。
座席は通路から2番目で、通路側の座席には女性が座っていた。
映画が終わった。感想としては、悪くなかった。でも、それだけだった。どちらかと言うと、観なれないジャンルの映画で、よく分からなかった、と言えるかもしれない。
隣の女性は、映画の後半でクライマックスのシーンに入った頃から鼻をすすりだし、ハンカチを取り出していた。
感動するポイントは人それぞれ違って、それが当たり前だ。
隣の女性はさっと立ち上がって会場を出て行き、オレもそれに続こうとした。
座席にスマホが残っていた。映画が始まるときに電源を切る操作をして、そのまま忘れてしまったのかもしれない。
拾って、後を追いかける。すぐに見つかった。後ろから肩を叩き、スマホを渡した。
彼女は驚いた感じで受け取った。
映画館を出て、歩いてすぐのファストフード店に入った。席についてポテトをつまんでいると、さっきの女性が目の前に現れた。
「先ほどは、ありがとうございました。」
落ち着いて、真面目な感じの印象だった。
「映画に感動しすぎてボーっとしていたので、御礼もきちんとできず、すみませんでした」言ってから、恥ずかしそうに笑った。
「いえいえ、気にしないでいいですよ。」
ちらっと周りを見ると、どこも席が埋まっている。彼女は食品を乗せたトレーを持っていた。
「良ければ、こちらの席にどうぞ」
向かいの席を勧めると、彼女は笑顔を見せた。
アニメ映画はあまり好きではないところとか、映画の趣味が似ていて、話がはずんだ。
小学校の教師で、子どもたちとのコミュニケーションのために、子ども向けの映画も観に行くことにしているらしい。
そのため、映画館にはよく行くが、アニメは年に1~2回だけ。
気付けば2時間も経っていた。
もうすぐ夏休み。
子ども向けの日本のアニメ映画が数本上映される。
そのうちの一本を観ておきたいと思っているが、大人一人で行くのは勇気がいるし、一人で観るのもつまらない、とのこと。
「じゃあ、一緒に行っても良いですよ」とオレ。
ということで、翌週も同じ場所で会うことになった。
その日から、ちょうど1年。
後部座席には、柄にもないが、バラの花束を用意している。
どうしてバラの花か?
これを渡すことを想像すると、ワクワクしたからだ。
彼女の反応が楽しみだ。
恥ずかしい、勇気がいる、怖い。
それって、なんでしょうか。
それで、行動に移さなければ、自分で自分の未来を制限していることになります。
直感的に、動いた方が良い、と思えたときはその行動をするようにしています。
ワクワクする。
この感覚は、その行動を取った自分に、喜びや幸せが訪れるような気がする、というものです。
欲とはちょっと違って、もっと明るいイメージ。
「歓び」と言えるような。
ワクワクすること、何がありますか?
映画を観に行くこと?
海に行くこと?
カフェに行くこと?
カラオケに行くこと?
記事を書くこと?
料理をすること?
何でも良くて、それは自分の感覚次第です。
自分が、これをすることで歓びを感じられる、と思えるなら、それが、今取るべき行動だと思っています。
ときどき、理屈ではなく、今までの自分とは違うことをしてみませんか?
自分の心の声は、意外と信頼できるもの、と思います🤭
ちなみに、今回のストーリーは、以下の話の続きになります⭐️
最後まで読んでいただき、ありがとうございました✨✨✨
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