『読めない人が「読む」世界』。自分が知らない世界があることを理解することが多様性 | 読書日記
こんにちは、みちょブックスです。
今回は、マシュー・ルベリー教授の『読めない人が「読む」世界 読むことの多様性』の読書日記です。
内容のご紹介
「文字を読む」について多種多様な人々がいる。本書は、下記のような独特な方法で情報を処理する脳を持つ人々(ニューロダイバージェント)が、どのように文字を読んできたのか、そして、どのように考えどのように行動してきたかを、実に大量の多種多様な症例をあげて解説しています。
難読症(ディスレクシア):文字がぼやける、二重に見える、ちらつく、大きくなる・縮む、動く、反転して見える、等。
過読症(ハイパーレクシア):意味を理解していないにも関わらず全て丸暗記できる、意味を探るよりも文字を読む行為を重要視する、等。
失読症(アレクシア):突然文字が読めなくなる、等。
共感覚(シナスタジア):文字に特有の色を感じる、等。
幻覚:文字・単語・文章に、そこにあるように見えて実は存在しない物体を感じる、本の文章が幻覚の文章に置き換えられる、誰かが一緒に読むのが聞こえる等。
認知症:何を読んだか覚えていない、理解力が段階的に低下し意味の理解や内容の記憶が次第に難しくなる、読書への興味を失う、等。
ヒトの思考・解釈が千差万別なのはもちろんのことだが、ヒトの認知も多種多様。
”ほとんどの人は、自分の頭のなかで何が起こっているのか知らないまま、うまい具合に文字を読んでいる”が、この本を読むと、”テキストの頁は見る人が変わっても同じままだと想定する「活版印刷の不変性」”という基本的な前提が覆ってしまいます。
テキストを読んだ人々の解釈が食い違うってのはよくある話ですが、解釈の段階で発生すると思い込んでいる食い違いが、読字プロセスのもっと早い段階で発生している可能性もあります。
自分が知らない世界があることを理解することが多様性。
本書を読んで、朝井リョウさんの小説『正欲』を思い出しました。多様性を謳い、少数派の内の一部を見ただけで、少数派全部を理解した気になってる多数派。そんな多数派を糾弾していたのが印象的な小説でした。
自分が全然知らない、自分が想像も出来ないようなかたちで認知したり思考したりしている人達がいる。自分が理解している範囲は決して広くはない。まずは、そのことをきちんと理解することが大切だと思いますし、本書は良いきっかけになると思います。
急に読めなくなったらどうする?
ぼくは読書は好きだし、そこそこ時間もかけて、そこそこの量を読んでいる方だと思います。今後の長い人生の趣味のひとつとして、読書は長く続けていきたいものです。しかし、この本に書かれているような失読症や認知症で本が読めなくなることについてはあまり考えてきませんでした。
オーディオブックや映画に走るのも一つの手かもしれません。ぼくの父親も高齢なんですが、テレビを見てても、本を読んでも疲れるらしく、あまりやる気が起きないとのこと。どうやって余暇を楽しめば良いのか、父親のことも自分の将来も心配になってしまいました。
本書でも紹介されていましたが、『シャーロックホームズ』なんかの古典作品が認知症の人向けに読みやすくリメイクされているということで、これは希望に感じます。こういう取り組みがあることすら知りませんでしたが、どんどん広がっていって欲しいものです。
さいごに
noteをご覧いただきまして、ありがとうございます。
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