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詩・小説

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記事一覧

小説|ある日の電車で

揺れる電車の中で、吊り革を片手にミルトンの『失楽園』を読んでいた。その韻律は、川のせせら…

成瀬未来
7日前
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詩|幾つかの四行詩

ある日の太陽 寝ぼけた顔が 茹でダコみたいと笑ったからか 墨に焦げつく 真昼の陽炎 円い山 …

成瀬未来
11日前
24

小説|風のあとに

神田の古書店は、微かな香が漂い、その静寂と通りの雑踏とが、射し込む西陽に交じり合っていた…

成瀬未来
2週間前
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詩|静かな朝、見渡して

太陽が地平を越えると、空は氷河が溶けるように澄み、川は硝子の微塵を撒いたように目覚めた。…

成瀬未来
2週間前
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小説|漂い、揺らぐもの

夕焼けは、気配もなく訪れていた。それは言葉なく歩き続けていた僕らを淡く染め、濡れた高原を…

成瀬未来
2週間前
22

小説を投稿して。なぜ文章表現が好きなのか

最近noteで小説を読んで、数年前に書いたものを思い出し、投稿してみた。こうして出してみると…

成瀬未来
3週間前
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小説|十七月の歌 6/6

時は満ちて ヘリコプターが過ぎてゆく音圧を感じて、僕は自分が横たわっていることに気が付いた。目を開けると、葉が揺れる向こうに淡い青空がゆっくりと広がり、頭を動かすと、泥に髪を引っ張られた。時計を見ると日付は戻っていた。どうやらいつからか夢を見ていたらしい。だが、これも夢ではないか? そう思わないでもなかった。 起き上がって髪や服から泥を払い、歩き出すと右足のふくらはぎに痛みが走った。見るとズボンを貫通した噛み跡がある。――蛇? 俺は毒で昏睡していたのか? しかし意識は冴え

小説|十七月の歌 5/6

混沌とそれぞれの秩序 その週末、僕は後輩のバンを連れて山へ向かった。目的地は四方を千メー…

成瀬未来
3週間前
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小説|十七月の歌 4/6

選択と相克 ルツから僕とユノのいるグループにニュースが送られてきた。 ――山中で男性遺体…

成瀬未来
3週間前
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小説|十七月の歌 3/6

精神的血縁 僕が目を覚ますとタローは起きていたらしく、こちらを見ていた。まだ薄暗い部屋の…

成瀬未来
4週間前
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小説|十七月の歌 2/6

籠の中のオリュンポス 社会で身を立てると決めた僕は、「とにかく動け」と、ヤスという男と会…

成瀬未来
4週間前
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小説|十七月の歌 1/6

病めるものに世界は微笑む レールを外れた十七月、僕は世界が微笑むことを知った。穏やかな陽…

成瀬未来
1か月前
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詩|蒼暮

冬枯れの山路に蒼が差し 夜明けみたいな暮れ 清らかに今日を讃えて それは少女のようだった

成瀬未来
1か月前
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詩|水辺の蝶

苔生した岩壁に 一匹の蝶がひらひらと 羽根を閉じたり、開いたり 朝の光は優しげに 手のひらに乗る微風を連れ 木々の間を流れ落ち 川底に打つ波模様 飛びたつ群に光散り 鋭い陽射しが駆けめぐる 荒立つ水面を隠すよう 枯れ葉と羽がひらり舞う けれども蝶は遠い空 羽根を閉じたり、開いたり