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谷崎潤一郎を聞いて読む。遅読で見えるモノ~文学朗読YouTuberシャボン朗読横丁さんとともに

先日、

なる本を見つけた。早速、読んでいると、当然ながら谷崎潤一郎の作品自体を読みたくなってくる。

美文と誉れ高い谷崎潤一郎の作品ではあるけれど、なかなか読む機会を持てない。新刊ではないし、いつも本棚にあって、いつでも手に入る。

さらに「大谷崎」ということで構えてしまう。

今回は聞くに徹してみよう。

音で聞きながら読んでみると、するすると入ってくる。朗々と流れる文体は、森羅万象、あらゆる物に化けて、脳内に再現される。

谷崎潤一郎は描写の天才だった。

文による描写というのは、それぐらい我々の感覚を停滞させてしまうものです。それは先程も言ったように思考や会話の文体とは種を異にしているからです。
(略)
描写しようとすると筆が渋滞する。思考が渋滞してあっちに行ったりこっちに行ったりして、何度も書き換えなくてはいけない。
(略)
描写の文章がなぜ渋滞するのか。バルザックを読んでいても、プルーストを読んでいても、あるはい日本の近代小説を読んでいても、描写というのはゆっくり読むしかありません。せっかちな人は描写の部分は飛ばして読みます。しかし、それでは読んだことにはならない。描写がなかったら小説は成立しない。近代小説は非常にやっかいな物語ジャンルです。

 辻原登『東大で文学を学ぶ』朝日選書,2014

この 辻原登『東大で文学を学ぶ』朝日選書,2014 では、小説の形成がまず語られ、『罪と罰』と進み、『古事記』と『源氏物語』、そして谷崎潤一郎へとたどり着く。

森博嗣さんは次のように語る。

読書をする人は、多数読むことを誇りにする癖があるけれど、あれは無意味だと僕は思う。大切なのは、読んでいるときに頭に思い描くイメージの情報量であって、目がなぞった文字数ではない。速読などもまったくナンセンスだ。時間をかけてゆっくり読んだ方がイメージが膨らみ、創作の役に立つ。速読というのは、早回しでゴルフや野球を見ているようなもので、それでゲームの結果がわかるだけだ。一番大切なもの、本質が失われている。ゆっくり大切に読んで、そのリズムのまま自分の創作に切り換えてはどうか。

森博嗣『小説家という職業」集英社新書

知覚を朗読のスピードまでに落とし、像を描く。この目的に、谷崎潤一郎の文体ほどに、日本語では望むことができない。

谷崎潤一郎(1886 - 1965)は長命だった。その人生のほとんどを小説家として生きた。夏目漱石や太宰治が、その作家活動が10年ほどにあるのにたいし、谷崎潤一郎は50年を越えて作品を書きつづけた。東京、京都、大阪、神戸、そして、明治、大正、昭和、また平安朝まで、さまざまな場所と時代を描いた。それら作品に、現代の小説で使われる言葉の源泉を見ることができる。

この作家の長い年月の間に次々に跋渉ばっしょうして行った、なだらかな稜線を持ちながら容易によじ登り得ない高い山々の頂に立ち、その眺望をほしいままにする歓びを持つであろう。

中央公論新社「日本の文学23 谷崎潤一郎(一)」より 円地文子による解説から

秘密

…. Arrested at last.  ….

魔術師

人魚の嘆き

瘋癲ふうてん老人日記

吉野葛・盲目物語

  • 青空文庫 谷崎潤一郎

  • YouTube: シャボン朗読横丁さんによる朗読

  • 紙媒体

    • 新潮文庫『吉野葛・盲目物語』

      • 語注がなくても読めます。語注はあった方がいい程度です。

      • 『吉野葛』では奈良県吉野町近辺の地名が多く出てきます。新潮文庫版には地図が掲載されています。この地図を用意されるのをおすすめします。出てくる地理はGoogleマップでは把握しにくいです。

痴人の愛

蓼食う虫

春琴抄

陰翳礼讃いんえいらいさん

夢の浮橋

天鵞絨びろうどの夢・鶴唳かくれい

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