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おいしいものから生まれる小さなストーリー

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「おいしいもの」から想像した小さなストーリー(小説)&エッセイ集です。
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#小説

おいしいものから生まれる小さなストーリー(小説&エッセイ)

『おいしいものから生まれる小さなストーリー』は、実際にあるお菓子等を物語の種として、そこ…

小説『のりこさんとみつこさん』

******  のりこさんは今日、半休をとって、みつこさんとふたりで鎌倉にやってきました…

小説『年輪はやさしく甘く包まれて』

******  子どものころからいつも、家に帰るとまず聞こえてくるのはピアノの音楽だった…

小説『羊羹と犬と梅の花』

おいしいものから生まれる小さなストーリー〈番外編〉をお届けします。 以前投稿した『羊羹と…

小説『思い出はビスケット缶のなかに』

*****  銀座の街を父とふたりで歩いている。  秋晴れの空の下、よそ行きのスーツで決…

小説『あの夏の恋』

*****  あの夏、榊くんはしょっちゅう我が家を訪れては、兄と二人でゲームに興じていた…

小説『しあわせな音』

******  鳥のさえずりが聞こえてくる。  丸めた毛布のうえでまどろんでいたマロンは顔をあげ、耳をぴょこんと立て、鳥たちの奏でる美しい音色に耳を傾ける。ピチピチピチピー。高く澄んだ声で、鳥たちが楽しそうにおしゃべりをしている。 「あら、雨がやんだのね」  絵筆を持つ手をとめて、彼女が窓の外に目を向ける。 「もう、こんな時間か…」  そうつぶやいて、彼女が立ち上がるのと同時にマロンはゆっくりと起き上がり、お尻をあげてうーんと前脚を伸ばし、そのあと背中を反らしてうーんと後

小説『贈り物』

******  カシくんの漢字は「樫」くんだけれど、私のなかでカシくんの漢字は「菓子」く…

小説『ジャムパン同盟』

****** 「ねえママってば聞いてよ」  とスズが言うと、 「ほんと、あの子たちってばね…

小説『いつまでもママ』

****** 「これからばあばの家に行くけど、一緒に行く?」  高校が試験休み中で、する…

小説『初恋は、ほろっと苦くて、切なくて』

******  あとすこしで、僕の初恋の人が転校してしまう。  中学生になり、同じクラス…

小説『好物と記憶』

******  改札口を出てすぐのところに小さなスーパーマーケットがある。  そこでは他…

小説『羊羹と猫と梅の花』

****** 「ようこさんって、なんだか、木、みたいっすよね」と言われた。  はたしてそ…

小説『だから優雅にティータイム』

******  おとといの夜、失恋をした。 「話がある」とデートの別れ間際に突然彼に呼びとめられて、「どうしたの?」と訊けば、「他に好きな人ができた。ごめん」だなんて、あまりの衝撃にわたしはそのあとうまく言葉を返せなかった。怒りよりも、悲しみよりも、ただただひたすらショックを受けて、よりによって雨の降りだした道を、わたしはひとり、傘もささずに歩いて帰った。  帰ってから、なんで今日言うのよ、と腹が立った。  明日も仕事があるのに。失恋休暇なんて、そんなシャレた制度の無い会