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【墨絵本】線のたび

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埋もれていたスケッチブックを発掘したことから、思いつきで始まった物語。 墨絵本。
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#ART

線のたび(12)

線のたび(12)

美しい碧色に囲まれた何処かから来た
天の子との出逢い。
自分もその憧れの場所へ辿り着いた
宙の子。
ただ、居心地が良かった其処は、何故かずっと居てはいけないと感じた。
そして、また再び、自分が来た"宇宙"へと、帰ることに。

「なんだか、あっという間だった。
もっと長く居たかった氣もしたけど、ずっと居たくないなぁ…とも感じたしなぁ。何故だろう?」

宙の子は、帰りながら、高く昇りながら、
ぼんやり

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線のたび(7)

線のたび(7)

宙の子は、今から向かおうとしている、
遥か下に観える碧色らしき何処かから、真っ直ぐに昇ってくるモノに驚いた。

な、なんだろう…。

向かってくるモノは、深く濃い暗いような、
重たい、真っ黒な塊のようにみえた。
宙の子は、動きを止めて、じっと、それが
勢いよく昇ってくるのをじっと眺めていた。

それが近づいてくると、真っ黒ではなくて、
なにか、たくさんの色が織り混ざっていることがわかった。

そし

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線のたび(3)

線のたび(3)

天の子は、
宙の子に訊いた。

「あなたは、何を見たいの?」

「う〜ん、その、綺麗な碧色が
何か?確かめてみたいな。
君は、それが何か知ってるんだろ?」

天の子は応えた。「…そうねぇ、
私はずっと、その中で過ごしていたから。
一体、それが何なのか、見たことないの。」

「ふぅん…そうかぁ。
でもさ、君みたいな子が居たところなら、
きっと、優しい素敵なところだね!?」

「そうかしら?
そうだと

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線のたび(2)

線のたび(2)

宙の子は言いました。

「こんにちは。はじめまして。」

天の子は言いました。「はじめまして。こんにちは。
 ねぇ、あなたはどこに行くの?」

「僕かい?
  この雲の下にさ、碧色に包まれた
  素敵な場所があるんだって。
  とってもキレイな、みどりいろの。 
  君、知ってるかい?」

「うん。
  知ってる。
  私、そこから来たの…。」

「へぇ! そうなんだ。
  どんなところかなぁって

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