クレーム・オ・ブールって、なんだ?[クリーム編vol.7]
「バタークリームのケーキなんて、
食べれたものじゃないよ」
へー。
「あんたはあの時代を知らないからね」
うん。
「生クリームのショートケーキが小さい時から
食べられるなんて幸せだねえ」
あーー。
「生クリームのケーキを初めて食べた時の
衝撃を味わえないなんて可哀想に」
そっちこそ。
おいしいクレーム・オ・ブールを
知らないだけなんだろうな。
クレーム・シャンティイは
たしかに好きだけどさ。
過去の先入観に
今も囚われてしまってるんだろうな。
おいしいよ。
クレーム・オ・ブール。
もったいないね。
おはようございます!真白けいです!
お菓子の面白さ・奥深さを広めるために、見習いパティシエとして皆さんと一緒に学んでいきます。
読んでくれた方は、スキいただけるとすっごく嬉しいです!!ボクのやる気スイッチですので遠慮なく押してやってください!!
今回のテーマは、クレーム・オ・ブール です!
バタークリームと言ったら馴染みがありますか?
いやーなイメージを持ってる方もいるかもしれません!だがそれは過去の話だ‼️
パティシエ目線のバタークリーム事情、ぜひお聴きください!
Crème au beurreって、なんだ?
お先に結論失礼します。ジャン!
crème au beurre
(クレーム・オ・ブール)
||
バターをクリーム状にして、
ムラング・イタリエンヌや
パータ・ボンブ、
またはクレーム・アングレーズを
加えたもの
出ったー!!!横文字のエレクトリカルパレード!!
一緒に一旦落ち着きましょう。
ふーーーー…。
よし!じゃあちょっとずつ向き合っていきましょう!
とは言っても、よくよく見たら3種類ともこれまで一緒に学んできたことばかりです。
ひとまず安心してください。
もしあんまり覚えてないなーって方はこちらから見返してみてください。
ボクも一旦振り返りに行ってきます!
クレーム・アングレーズはこの中にいます↓
はーい、おかえりなさーい!
うーん。なるほど、ちょっと思い出しました。
せっかくなので書き出しておきましょう。
meringue italienne
(ムラング・イタリエンヌ)
||
卵白に煮詰めたシロップを注ぎながら泡立てた
メレンゲ
pâte à bombe
(パータ・ボンブ)
||
卵黄にシロップを加えて泡立てたもの
crème anglaise
(クレーム・アングレーズ)
||
卵に砂糖を加え、牛乳を混ぜて加熱し、
とろみをつけたクリーム
※バニラで香りをつけることが多い
ふむふむ。
それをそれぞれバターと混ぜてクリームにするってことですね。
えー?!どうなるんだー?!
3人の個性
ざっくりさっきの3つを表すと
卵白、泡立てたもの
卵黄、泡立てたもの
卵黄、泡立ててないもの
っていう感じかな。
ってことはどんな味になるのか、どういう風に使われるのか、気になります。
見てみましょう!
[バター+ムラング・イタリエンヌ]
・白っぽいので着色しやすい
・甘いがコクは少なめ
・ふわっとして軽い口溶け
・3種類の中ではあっさりめで他の素材を際立たさせる
[バター+パータ・ボンブ]
・黄色っぽい
・甘くてコクもある
・重めで舌に絡むような口溶け
・他の素材も感じつつもクリームとしてしっかり主張
[バター+クレーム・アングレーズ]
・黄色っぽい
・甘さは少し控えめでコクがある
・割と詰まっていて、舌の上を流れるような滑らかな口溶け
・甘さを控えて、味的な主張は強くないが、コクと脂肪味、口溶けの個性がある
うーん、なるほど、三者三様ですね。
どれを選ぶかは完全に作り手次第ですが、
特にムラング・イタリエンヌを使ったものは他のフレーバーと合わせやすく、食感もバターと合わせた時に重すぎない。
ということで使われやすい傾向はあるっぽいです。
バタークリームって一括りにしてた自分が恥ずかしいです…。
全然違う特徴ですね。
お菓子によって、どれ使ってるのかなって考えながら食べるのも面白そうー!!
クレーム・オ・ブールの由来
さー、始まりました!由来のお時間です。
こちら解説真白けいでお送りしております!
まずは名前から!
フランス語のブールとは、バターのことです。
すなわち、クレーム・オ・ブールとは、
バターのクリーム、
バタークリームです!!
まんまですね。ここはいいかな。
続いて、由来についてですが、情報が少なかったですが、2説あります。
(ⅰ)時は19世紀、1865年、フランス人パティシエのキエが考案した。
……きえ?
いや、坊主じゃないですよ。帰依なんて、急に仏教の話しませんから。なに言ってるんですか。
いや、だから、チョコボールでもないですよ。
キョロちゃんの鳴き声の「クエッ」は今関係ありませんから。
まったく皆さん、坊主だとかチョコボールだとかハゲだとか失礼ですね…。
偉大な先人、Quillet(キエ)さんです。わかりませんが多分ハゲてません。一緒に謝りましょう。
わからないと言ったのは、全然情報がなくベールに包まれたままの人物なんです。生没年も不明だとか。ただクレーム・オ・ブールを生み出したという功績だけが伝わっています。よっぽど当時すごいことだったんですね。
(ⅱ)ジョワンビル公に仕えた料理人、ルモンデがが考案した。
こっちに関しては、これ以上なにも言うことはありません。
いかんせん情報が少なくて…。
さらっと書いてある一文を発見しただけなんです。
この2人についてもなにも出てこなくて困っています。情報提供者求ム。
ということで今回は考察のしようがありませんでした。ボクの記事の考察を楽しみにされてる方、ほんとうに面目ない…!!ごめん!!
代わりと言ってはなんですが、みなさんにもっと関係のある、日本のバタークリームの歴史を調べてみました。
日本のバタークリームの嫌な思い出
じゃあまず、日本にバタークリームを使ったケーキをもたらした人は誰だ?!
ボクが確認できた、最も古い出来事をご紹介。
1919〜1921年(大正八〜十年)、カフェ・ユーロップを明治屋と提携し営業した、ドイツ人製菓技術者カール・ユーハイムのバタークリームを使ったお菓子が評判を呼んだ。
か、カール・ユーハイム!!あの有名な!!
知っている方はここで名前が出てきて興奮しているかもしれませんが、知らない方のためにも軽く紹介します。
神戸に、バウムクーヘンで知られるユーハイムという老舗があるのはご存知でしょうか。
こちら、日本のドイツ菓子の草分けとなったとんでもないお店ですが、
その創始者がカール・ユーハイム氏でございます。
つまり後光も差すようなレジェンドなんです。
そのレジェンド、ユーハイム氏が独立する前に明治屋にその実力を見込まれて開いたお店が、カフェ・ユーロップ。
2年しか営業しませんでしたが、今日まで続くユーハイムのプロトタイプと言えます。
そーしてそして、そこでユーハイム氏が作った、ドイツ式のバタークリームのお菓子は日本人にとってインパクトの塊だったんです。
想像ですがこれを食べた全員脳震盪を起こしたことでしょう…!
次第にコロンバンを筆頭として日本の洋菓子店にも広まる。しかし、バターは高価なため、一般のお客さんに買ってもらうために安く済むマーガリンやショートニングといった、当時「人造バター」と呼ばれた代替油脂を使用するケースも多かった。
はい!ポイントはここなんです!!
先にはっきり言わせてもらえば、少し上の世代の殿方奥方がバタークリームを親の仇かのように憎んでいるのはこのためです。
でも一つ理解して欲しいのは、「人造バター」とはこれは少し悪意のこもった呼び方で、実際には必要とされる場面もあり、生活に受け入れられたでしょう。だって、安いから。
その証拠に、今でもマーガリンは普通に売れています。
でも、風味・口溶け・芳香その他もろもろ、バターに比べると…うおっほん、えほっえほっ
ボクはなにも言ってませんが、多分あなたと思ってることは同じです。
そして1960年代ごろから次第にクレーム・シャンティイを使ったケーキに移っていくわけですが、この要因は大きく分ければ4つです!
①店側、バターより生クリームの方が安く手に入るから。
②お客さん側、日本の湿気の多い気候に当時のバタークリームが味的に少しミスマッチだったから。
③お客さん側、代替油脂の味わいに辟易していたから。
④環境的に、冷蔵庫が普及し始めたから。
このパラダイムシフトについて、いろんな人がさまざま言っていて、
お店がお客さんのニーズに応えたみたいな美談的に書かれることもあるし、
逆に安く生クリームを仕入れて売るために仕掛けたみたいに陰謀論的に書かれることもあります。
ボクにはどういう順に進んでいったのかはわかりません。
でも想像するに、冷蔵庫の普及という環境の変化が、人々の心境に変化を与えたのは間違い無いだろうなって思います!
みなさんはどうお考えですか?
ぜひコメントで教えてください!!
結局、クレーム・オ・ブールって、
「犠牲者」だと思います。
なんのかっていうと、時代の。
この子にとって、タイミングが悪かった。
だって、今でもクレーム・シャンティイの下位互換みたいに思われてたりする。特徴が違うだけなのに。パティシエは毎日改良を重ねてるのに。
嫌われ者が見直されて、いつか完全にフラットに見られる日が来る物語であることを切に願います。
あなたも、現代パティスリーのクレーム・オ・ブール、一度試してみませんか?
でもひとつだけ気をつけて。虜になるかもしれないってこと。
ということで今回は以上です!
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次回の大テーマは…
「クレーム・ムースリーヌ」です!
今回の発展系なので今回読んだ方はフォローして待機だ!
参考文献
猫井登、お菓子の由来物語、幻冬舎ルネッサンス、2011
中山弘典 木村万紀子、科学でわかるお菓子の「なぜ?」、柴田書店、2018
吉田菊次郎、西洋菓子彷徨始末、朝交社、1994
なぜクリスマスに「苺と生クリームのケーキ」を食べるようになったのか、スピン経済の歩き方、ITmediaビジネス、閲覧日2021-3-16、https://www.itmedia.co.jp/business/spv/1512/22/news039.html
洋菓子「コロンバン」のバタークリームケーキ、パナデリアが行く、閲覧日2021-3-16、http://www.panaderia.co.jp/event_report/colombin/index.html
キエ、お菓子の辞典 き、閲覧日2021-3-16、http://www.la-fontaine.co.jp/jiten_ki.html
クレム・オ・ブール、パティシエwiki、閲覧日2021-3-16、https://www.patissient.com/wiki/クレム・オ・ブール
※この記事は上記の参考文献を元に執筆しました。諸説あるものは一部のみ紹介しています。
また、新たな事実を勉強し次第、追記・編集する場合があります。