パータ・ジェノワーズって、なんだ?[生地編vol.1]
「ショートケーキとは、つまり生地なのだ」
彼女は最後のピースを口に運ぶと、フォークを置きながらそう結論づけた。
はあ、先生のケーキバカっぷりには困ったものだ。
毎度毎度、強引に連れてこられては独自のケーキ論を延々と聞かされる僕の身にもなってくれ。
ちなみに僕はもう30分も前に食べ終わっている。
満足気に紅茶を嗜む彼女を尻目に、僕は機嫌を損ねないように帰りを切り出すタイミングを伺っていた。
「先生、今日のパータ・ジェノワーズのお話も大変興味深いものでした。さ、そろそろ…」
思わず口が止まったのは、威圧のせいではなかった。
むしろ逆。先生の目のなぜだか驚きを孕んだ輝きに、困惑した。
「君、ようやく用語を覚えるようになったのか!そうなんだよ!パータ・ジェノワーズとは…」
…どうやらしくじったようだ。
少しだけ面白さを感じ始めてしまったのが今回の敗因だ。
ここからあと2時間はみておこう。
おはようございます!
見習いパティシエ、真白けいです!
今よりもっとお菓子屋さんへ行くのが楽しくなる!そんな知識をあなたと一緒に学んでいきます!
読んでくださった方は、ボクのやる気スイッチ、スキを押していただけるととっっても嬉しいです!遠慮なくお願いします!
な、な、なんと!今回から生地編に突入だ!
第1回のテーマは パータ・ジェノワーズ です!
聞いたことあるような、ないような…。
でも実はあなたも絶対食べたことのある生地です…!
気になるね!気になるね!ソワソワ…
さっそく、一緒に学んでいきましょー!!
Pâte à génoiseって、なんだ?
気になって仕方がなくて鉛筆かじり出しそうなあなたとボクのために結論を先にお出しします!
では、どうぞ!じゃん!
pâte à génoise
(パータ・ジェノワーズ)
||
全卵に砂糖を加えて泡立て、
小麦粉を加えたスポンジ生地
※バターが入ることが多い
すこしむつかしい。
かな?って思うので、先にどんな場面で使うかをご紹介!
[パータ・ジェノワーズの使い途]
・ショートケーキの生地
・ムースの底の生地
……現場からは以上です。
少ないなぁ…。
でも、でも、でもでもでもでも、そんなの関係ねェ!
だって、見てください!「ショートケーキ」の7文字を!
もうお分かりですね。そうですあれです。
クレーム・シャンティイとスーパーハイパーマスターな好相性の!ふわっとしっとりしたやつ!
クレーム・シャンティイは[クリーム編]で一緒に学んできました。気になる方はチェック!
日本人にとって、命の次に大事なもの。
そう、それがショートケーキのスポンジの質。
すなわち、パータ・ジェノワーズの質!
……過言ですすみません。
それは冗談にしても、洋菓子といえばのトップオブザトップ、フェイスオブザフェイス、センターオブザセンターですから、各店もうんとさまざまな工夫を拵えてきてるわけです。
だから用途は限られていても、全国で昔から作られることの多い生地です。そしてそれ故に基本です。
と、ここまで来て、材料を見返してみると、基本的には卵、砂糖、小麦粉、バターです。
そしてなんとこの4つ、洋菓子の生地を構成する四天王です!
…つまりどういうことかと言うと、
結局基本やでってこと!ベースオブザベース!
だからこそ難しいです。大事です。
職人の💪ここ次第です。
そしてさっきも言ったように、各店さまざま工夫をしているので、基本の材料を使っているとは限りません。
蜂蜜、米粉、サラダ油、などなどなどなど置き換えられるものはたくさんあるので、その割合や製法も掛け合わせると、本当に無限です。
お店でショートケーキを頼んだら、その違いをちょっと感じたいところです。
パータ・ジェノワーズの由来
まずは名前の意味から紐解いていきましょう!
Pâte(パート)=生地
で、
génoise(ジェノワーズ)=ジェノバの
ですから、
Pâte à génoise
(パータ・ジェノワーズ)
||
ジェノバ風の生地
という意味なのですが、
そもそもジェノバってなんのことやら。
そう思って調べました!
ジェノバとは、イタリアの臨海都市だそうです。つまり地名!
なるほど。ジェノバというとこで生まれて、フランスに伝わったのね。
と、みなさんは思うでしょう。
ふっふっふ。
気になるところで、由来と説を紹介していきましょう!
(ⅰ)15世紀頃、カスティーリャ王国でスポンジ生地が生まれる。カスティーリャ王国はのちに隣国アラゴンと合併しスペインとなり、スポンジ生地はスペインで発展する。
ちなみにイタリアではパネ・ディスパーニャ(スペインのパン)と呼ばれている。
そうなんです。
実はジェノバの所属する国イタリアでは、このパータ・ジェノワーズのことをスペインのパンと呼んでいるようです。
そして実はこのカスティーリャ王国で生まれた生地がポルトガルに伝わり、鎖国中の日本へと伝わって独自に進化したのがカステラ…なんて話もありますが、それはまた別のお話。
しかし、対抗してこんな説もあります。
(ⅱ)18世紀中頃、ジェノバの侯爵がスペイン宮廷に招かれます。そこにお供したお抱え菓子職人がサボアケーキを元に考案した。そこでジェノバの名を冠した。
まさかの逆バージョン…!ジェノバ→スペインルート!
ただ、「サボアケーキ」。
おそらくこれはビスキュイ・ド・サヴォワのことではないかと思います。
これは何かというと、フランスのサヴォワ地方の郷土菓子で、14世紀にこの地で生まれた、全く別のスポンジ生地です。
なので、パータ・ジェノワーズの由来とは少し違うエピソードが、「ジェノバ」というキーワードによって紛れ込んでしまったように思います。
よって今回は考えないことにします!
さらに、製法も違います。共立てと別立てという製法があってですね…。長くなるのでこれは次のパータ・ビスキュイの記事にて紹介しますね!
ちなみに説はもう一つあります。
(ⅲ)ジェノバで生まれた。
シンプルに、この説もあると。
一度、ここまで出てきた情報を整頓します。
[1]発祥はフランスではない。
[2]フランスでは、パータ・ジェノワーズ
(ジェノバの生地)
[3]イタリアでは、パネ・ディスパーニャ
(スペインのパン)
つまり、今回のゴールはフランスで、そこに辿り着くまでのリレー中にいざこざが起きている状態です。
でも、やっぱり地域に伝わる呼び名を辿って行くと自然な流れなのは、
カスティーリャ王国
↓
スペイン
↓
イタリア[パネ・ディスパーニャ]
(ジェノバ)
↓
フランス[パータ・ジェノワーズ]
と、パータ・ジェノワーズに関してはこうではないかとボクは思います!
結局、パータ・ジェノワーズって、
伝播して伝播して、凝り性の職人の多い極東の国で今日も愛されるケーキの生地に落ち着いた、そんなスポンジ生地です。
伝わった先々でいろんな改良をされ、いいところを吸収してきたのでしょう。スポンジだけに…(ボソッ)
ショートケーキを食べるなら、パータ・ジェノワーズに大注目です!!
ということで今回は以上です!
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次回の大テーマは…
「パータ・ビスキュイ」です!
今回ともめっちゃめちゃ繋がってくるのでぜひみてね!
参考文献
猫井登、お菓子の由来物語、幻冬舎ルネッサンス、2011
基本のジェノワーズ、chiccafood SUBSCRIBE、閲覧日2021-5-11、https://www.google.co.jp/amp/s/chiccafood.com/genoise/%3famp
ジェノワーズ、お菓子の辞典 し、閲覧日2021-5-11、http://www.la-fontaine.co.jp/jiten_si.htm
そもそもスポンジケーキって、おさびし山のホームメードケーキ、閲覧日2021-5-11、http://www.osabishi.jp/cake/bn20_016.htm
ビスキュイ・ド・サヴォワ、一般社団法人 日本洋菓子協会連合会、閲覧日2021-5-11、https://gateaux.or.jp/ufaqs/ビスキュイ・ド・サヴォワ/
※この記事は上記の参考文献を元に執筆しました。諸説あるものは一部のみ紹介しています。
また、新たな事実を勉強し次第、追記・編集する場合があります。