見出し画像

「彼ら」に家畜化されたアメリカ人

かなり刺激的な表現ですが、ケーシー・ミーン氏が訴えているのはこういうことでしょう。本Noteの主題から外れるように見えますが、実はつながりもあるので、今回は彼女の本をご紹介します。(残念ながら和訳はまだ無いようですが、英文は平易ですので、医学用語に慣れてくればそれ程難しくはありません。)
ちなみに「彼ら」とは「(広く)医療機関・関係者」「製薬会社」「加工食品会社」が主犯で、共犯は「メディア」「政府」「健康保険会社」と思われます。

出版されて半年も経っていないので、あまり詳しく紹介すると著者に迷惑がかかるかもしれません。なのでポイントを絞ってご紹介します。
例えば、何故慢性疾患に「原因不明」が多いのか?、糖尿病は何故万病の元と言われるのか?、ミトコンドリアの活性化と身体全体の健康はどうつながるのか?これまで何気に聞いていながら十分消化できていなかった事が私の頭の中でつながったことで、これは単なる陰謀論ではない気がしてきました。
因みに共著者とされるカリー・ミーンズは弟(兄?)にあたり、最近ではトランプ大統領とRFK Jr.を繋いだ方で、医薬業界と政治の癒着を糾弾してきて有名な方です。

この本を見つけたきっかけは、このタッカー・カールソンのインタビューです。

https://tuckercarlson.com/tucker-show-casey-calley-means?watchedTime=345.51119

(※余談ですがタッカー・カールソンのインタビューは、その視点(含、出演者)が時期的に的を得ているので、詳細はともかくテーマだけは追っておいた方が良いと思われます。)

(0)序:

■ケーシー・ミーンについて

・スタンフォード大学医学部を主席で卒業した耳鼻咽喉科(ENT)の専門医。研修医時代に「アメリカの患者は破壊されている」と感じたことが今の立ち位置の始まり。

「この患者がなぜ実際に病気なのかわからない」

ある日、とある「副鼻腔炎」の患者を目の前にして彼女はそう思った。
更にその患者は糖尿病予備軍であり、関節炎を持つなど、他にも多くの健康問題があった。例えば意識混濁(ブレインフォグ)を持っていて、肥満で、かつ副鼻腔の問題を抱えていた。しかし、彼女が受けた教育では、決して患者全体を見るように教えられていなかった。彼女が教えられたのは、それぞれの専門分野ごとの対処の仕方だけ。専門分野の手術をして、その代金を請求する。
そうこうしてるうちに、そこに大きな問題があることに彼女は気づいてしまった。「今の医学は単なる金儲けに過ぎない」と。

そして30歳の誕生日に勤めていたオレゴン健康科学大学を去った。その後「なぜアメリカ人は毎年病気になるのか?」「なぜアメリカの子ども人の50%が慢性的な健康問題に悩まされているのか?50年前はたったの1%未満だった。」「なぜ、お金をかければ使うほど私たちの健康は損なわれるのか?」と考え続けた。

■彼女の言葉を纏めると、

・我々は製薬会社・食品会社等(以下、「彼ら」)が作ったトレッドミルに一生乗せられ、毒物を食べさせられている。「彼ら」はすぐに我々を殺すようなことはしない。ジワジワと慢性疾患を起こし、一生薬漬けにする(^^;)。アメリカの子どもたちは生まれた直後から医薬品の介入を受ける。そこにはインフォームドコンセプトはない。

・医科系大学は「彼ら」から多額の資金援助を受けている。例えばオピオイド(麻薬性鎮痛薬)の使用基準は大学のパネルの勧告で下げられたが、その後のオピオイドの過剰摂取は医者が使用基準に基づいて発行する処方箋から始まっている。
・またFDAの資金は75%が「彼ら」から来ていて、「人事交流」も盛ん(回転ドアとか言われている(^^;))。
・また主流メディアの収入の50%は「彼ら」から来ている。

・別の例では、ドイツでこれまでに行われた最大の合併であるバイエル・モンサントで、製薬会社であるバイエルは農薬会社であるモンサントと合併した。モンサントの主力製品は最も広く使用されている農薬の「ラウンドアップ」で、アメリカではそれが「非ホジキンリンパ腫」という癌を引き起こすことが知られている。一方、バイエルは「非ホジキンリンパ腫」などの抗がん剤を作っている。あたかも病気を作り出す会社と治療する会社が1つになっている(^^;)

・以前に増してアメリカ人に肥満が多く慢性疾患が多い。また高校生の15%がアデロール(精神刺激薬)を服用しているなど薬物依存がかなり進んでいる。これらの多くは「仕組まれたもの」ではないかということ。
・オバマケアも結局は国民の為の制度ではなく、税金を医薬に向ける仕組に見える。(日本も似てきている。)

■問題はどこにあるのか?

彼女の主張は「ほぼ全ての慢性疾患は1つの原因で起こっている。それは細胞レベルでの「代謝不全」で、主役はミトコンドリア。」ということ。

我々の今の代謝の仕組みは何万年もかけた自然との共生に過程で生まれたもの。しかし、ここ最近は環境側の変化が急速で我々の身体側(=細胞)はそれに追いつかない。ほとんどの慢性疾患やその兆候はそんなミスマッチから生まれている。

我々の身体には200種類・37兆個ほどの細胞があり、その代謝不全がどの種類の細胞で起こるかによって症状が変わる。例えば、それが卵巣嚢細胞で起これば多嚢胞性卵巣症候群、血管で起これば動脈硬化・勃起不全。心臓病、高血圧、網膜症、慢性腎臓疾患も然り。これらはすべて各器官での細胞レベルの代謝不全が原因である。同様に肝臓細胞であれば、非アルコール性脂肪肝であり、脳であれば鬱、脳卒中、自閉症、偏頭痛、慢性頭痛。これらはすべて代謝不全に直接つながってることが最近の研究で明らかになってきた。しかし、我々は相変わらず「各臓器レベル」の代謝不全の問題として対処しようとしている。細胞レベルの代謝不全そのものではなく。

(1)主役はミトコンドリア:

・以前に「ミトコンドリア活性化」とか「コエンザイムQ10」とか「αリポ酸」とかが流行った時期がありましたが、それと同様で「およそほとんどの慢性疾患や心身の不調の原因はミトコンドリアの機能不全」であるという点が出発点です。
つまり慢性疾患は各臓器の問題というよりも、その臓器を構成する細胞レベルの問題であって、その細胞の中のミトコンドリアがきちんとエネルギー(ATPと呼びます)を生成出来ていないことが問題。そして、それはどの臓器の細胞でも起こり得ることで、たまたま血管上皮細胞で起これば動脈硬化になり、肝臓で起これば起これば肝臓障害になり、糖尿病も高血圧も認知症も、たまたまその部位で起きただけということ。特に問題は「糖質」「超加工食品」や「(食品に添加された)化学物質」や「薬品」という訳である。これらを口にすることで始まり、体内でいろいろと連鎖的につながって問題を起こす。

■ミトコンドリアがどのように代謝不全を起こすのか

「すべての病気は腸から始まる」という言葉がありますが、食事や薬から摂取したものが主な原因です。それ以外ではストレスも原因になります。

(筆者作成)

・簡単に言えば、腸管に合わない食べ物やストレスが来ると腸管に炎症が起きます。その際に腸の内層が傷つき、腸の透過性が高まり(=腸のバリア機能が弱まり)、未消化タンパク質や老廃物、有毒物質が腸から体内に侵入してしまい様々な部位に運ばれ、そこでまた炎症を起こします。これをリーキーガット症候群と呼びます。それが様々な形で細胞及びミトコンドリアにダメージを与えています。

■ミトコンドリアにダメージを与えている主な要因(食品・薬以外もいろいろあります):

①栄養過多
・100年前に比べて、カロリーは20%増。700~3000倍の果糖。
・ミトコンドリアが処理できなくなったら脂肪の形で細胞内に蓄積され、それが更に細胞の機能を阻害する。
・更にひどくなるとフリーラジカル(連鎖的な酸化反応)が起り、酸化がドンドン広まっていく。
・超加工食品、工業製食品、人口添加物が飢餓感を誘い中毒性を起こす。ちなみにアメリカ人の摂取カロリーの70%近くがこれらからである。

②栄養の偏り
・栄養過多の一方で、半数ほどのアメリカ人はビタミンやミネラルなどの微量栄養素が不足している。
・原因の1つは殺虫剤や機械化による土壌の劣化や偏った食生活。75%のアメリカ人は野菜や果物が不足している。我々が口にするものの多くは精製穀物(小麦、大豆、トウモロコシ)でそれらには微量栄養素が不足し、更に過剰な炭水化物や脂肪を摂取することになる。
例えばコエンザイムQ10の欠乏はATP製造を減少させ、セレン。マグネシウム、亜鉛、いくつかのビタミンBはミトコンドリアには必須である。

③腸内細菌叢(腸内フローラ)
・腸内細菌叢からの分泌物は重要な役割を果たしている。分泌物の中で短鎖脂肪酸(※)は特に重要。
・ディスバイオシス(腸内細菌叢のバランスが乱れた状態)が起るといろいろなところに問題が起る。

※短鎖脂肪酸は腸内フローラの分泌物で酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などがある。抗炎症作用、免疫機能の調整(特に酪酸)機能があり、食物繊維が欠けると酪酸が十分作られず、粘膜層が薄くなり、リーキーガット症候群を引き起こしたりする。その他の役割としては
   -腸管上皮細胞の栄養源
   -水分吸収・腸管ぜん動の亢進
   -腸内の弱酸性化(→有害な菌の増殖を抑制する)
   -腸の炎症予防
   -免疫機能の調整などの重要な機能がある

④座りっぱなしの生活
・動くことが細胞に活性化を促す。但し、過度の運動は活性酸素を生じさせてしまうので要注意。

⑤慢性ストレス
・ストレスで生成されるコルチゾールはミトコンドリアを直接攻撃し、新しいミトコンドリアの生成を妨げる。

⑥薬
・ミトコンドリアの機能を阻害する薬品が身の回りに多くある。抗生物質、化学療法薬、抗レトロウイルス薬、スタチン、β遮断薬、高血圧治療薬(カルシウム(経路)遮断薬)、アルコール、メタンフェタミン(ヒロポン)、コカイン、ヘロイン、ケタミン。

⑦睡眠不足
・ホルモンの不安定を引き起こす。例えばコルチゾール、インスリン、成長ホルモン、メラトニンの量の変化。
・ミトコンドリアの新生や複製へも影響し、フリーラジカル(前述)を増やす。

⑧環境汚染物質・毒物
・合成化学薬品の多くが食品、水、空気、消費財に含まれていて、ミトコンドリアに脅威を与えている。殺虫剤、PCB、フタル酸、PFASs、ビスフェノールA、タバコ、化学品など。
タバコ・酒はミトコンドリアに直接働きかけ、そのDNAを変質させたり腫れを起こしたりする)
・自然物でも重金属(鉛、水銀、カドミウム)は要注意。
・食品でもトランス脂肪酸は最悪で、精製穀物(小麦のグルテンは消化されないので腸にへばりついて炎症を起こしやすい)、牛乳(αガゼインは消化されにくく、炎症性サイトカインを発生させやすい)、精製された糖質(白砂糖)、果糖ぶどう糖液糖、人工甘味料(アスパルテーム、スクラロース、ネオテーム、ステビアなど)も避けた方が良い。

⑨人口照明、サーカディアンリズムの撹乱
・デジタル機器が発する青色光やキツイ照明光源。

⑩温度変化
・環境温度変化はミトコンドリアの活性化につながる。

■血糖値とインスリン(これが万病の元)

・血糖値が高いとミトコンドリアは追いつかなくなり、その機能が削がれると、ATPの材料である脂肪や糖がミトコンドリア内に有害な脂肪として蓄積され、それが細胞内の他の活動も止めてしまう。最も重要なのはインスリン信号の停止で、糖を細胞に吸収させることが出来なくなる(インスリン抵抗性)。その結果、グルコースが血液中に残ってしまう(=高血糖)。
・その後、そんな高血糖が更なるインスリンの分泌を招き、細胞にどんどんグルコースを詰め込んでいき、やがて限界に達する。そうなるといくらインスリンを分泌しても、これ以上細胞内に送れなくなるので、インスリンが効いていない状態となる。これがインスリン抵抗性の原理。インスリンが効かなくなり、血糖値スパイクも起こり、血糖値のコントロールが難しくなる。
・更に高インスリン状態が続くと高インスリン血症を発症し、その状態が数年も続くと、肝臓での中性脂肪の合成が活発になって血液中の中性脂肪が増え、腎臓の尿細管でのナトリウムの再吸収が増えてナトリウムが体内に貯留するために高血圧となり、また、血管の内皮細胞が増殖することによって動脈硬化が進む。つまり、高インスリン血症は、ガン、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の原因となり、老化を促進する因子であると言える。50%以上の大人、30%近くの子供がこんな状態に陥っていると推測される。
・また高血糖状態は免疫機能を亢進させ、フリーラジカルを発生させ細胞や身体に悪影響を及ぼすことになる。
・更に糖化反応(※)を起こしやすい。糖化したタンパク質は異物と判定され免疫細胞の標的となる為、慢性炎症の原因となる。またコラーゲンを糖化することで皺を作る。血管を糖化すればアテローム性動脈硬化を引き起こす。

※糖化反応:糖化(グリケーション)とは、体内のタンパク質に糖分が結合する反応。そして、糖化したタンパク質は、本来の働きを失う。細胞で糖化が起こると、その細胞はいわゆる「老化」した状態になる。例えば、血管は多くのタンパク質で構成されているが。その血管を作っているタンパク質に糖化が生じると、血管は柔らかさを失ってしまい、硬くなります。その結果、「動脈硬化」が発症する。こうした糖化反応は、血液中の糖分量が多くなると起こります。つまり、血糖値が高い人は、体内で糖化反応が生じやすいといます。そして、血糖値を高くする原因の多くは食事にあります。血糖値というと、「食べ物を食べた後に高くなる」というイメージを持っている人が少なくないと思います。しかし実際には、血糖値を上げるのは栄養素の中でも唯一「糖質」のみです。

74%のアメリカ人は肥満であり、93.2%は代謝異常を持っている。原因は過剰なまでの砂糖・ストレス・座位姿勢・汚染・薬・薬剤・電子機器、そして少なすぎる睡眠と微量栄養素。この背後には何兆ドルものお金が絡んでいるというものの、ミトコンドリア機能不全、疾病、慢性炎症の身体を起こしている

■酸化ストレスと抗酸化

・ミトコンドリアがATPを作る際に、取り込んだ酸素のうち、数%は活性酸素になってしまうので、活性酸素は避けられない。なので我々の身体には抗酸化の仕組みが備わっている。活性酸素は殺菌・免疫・感染防御といった役割も担っているが、正常細胞まで酸化させるリスクがあり、自分自身を攻撃することになる(→攻撃対象が脳なら脳機能低下、記憶障害、認知症など)

・最大の原因はストレス。原因は、紫外線、放射線、大気汚染、タバコ、薬剤、重金属など。酸化ストレスが高まると「フリーラジカル反応(※)」となる。
※フリーラジカル反応:酸化(電子を取る行為)が順々に伝播し、連鎖的に酸化広まっていく。

・酸化を止めるには酵素が必要で、その為にはタンパク質とミネラル(Zn, Cu, Fe, Mg, Seなど)必要。
またフィトケミカル(野菜、果物、豆類、芋類、海藻、お茶やハーブなど、植物性食品の色素や香り、アクなどの成分から発見された化学物質)も強い抗酸化作用がある。特にポリフェノール・フラボノイド類

■代謝不全の3つの原因(いろいろな要因が相互に絡み合っている身体全体に悪循環を構成している)

①ミトコンドリアの機能不全(既出)
・必要なATPを製造できない。原因は大量の原料や異物でミトコンドリアがパンクしているか傷つけられているから。結果、多くの脂質を貯めこんでしまい、機能不全が更にひどくなる。

②慢性炎症
・ミトコンドリアの機能不全を身体への脅威と見なして免疫機能が起動する。免疫機能がいくら頑張っても原因は除去できないので、免疫攻撃が慢性化する。

③酸化ストレス
細胞はフリーラジカルの形で不要物を排出しようとするが、そのフリーラジカルが細胞に悪影響を与える。

■代謝不全の兆候を示す症状

以下の症状があれば、代謝不全を疑うべき。

①過敏性腸症候群
・長い間、下痢、便秘、腹痛といった不調が続いているのに、検査してもポリープや炎症といった異常が発見されない病気。
・原因は腸管のミトコンドリアの機能不全。インスリン抵抗性や高中性脂肪と強い関連がある。
・腸は第二の脳とも呼ばれ(後述:脳腸相関)、実は腸の不調は精神面にも悪影響を与える。

②吹き出物(Acne)
・血糖値やインスリンが増えて、ホルモンバランスが崩れた状態。男性ホルモンが増加して、皮脂を増産させる。糖質制限ダイエットで簡単に治る。

③うつ感
・原因不明なうつ感は代謝機能との関連が強い。脳は酸化ストレスや炎症にはとても敏感であり、体内でエネルギー消費が最も多い器官でもある。体重比では2%に過ぎない脳のエネルギー消費は、身体の総エネルギー消費の20%をも占める。更に腸は独自の神経ネットワーク(脳腸相関)を持っており、脳からのシグナルなしに機能(消化・吸収・排泄)している。そして腸内細菌叢は神経伝達物質を作る上で重要な枠割を果たしているので、ここの不調は神経伝達に悪影響を与える。例えば90%以上のセロトニンは腸内で合成される。従って、そんな腸の機能を阻害することは、過敏性腸症候群(IBS)を引き起こし、精神状態に強い悪影響を与える。
また、腸内細菌叢の変化はうつ症状を引き起こすことも研究で知られている。(動物実験でうつ傾向の動物の腸内細菌叢を健康な動物に移植したら、うつ状態も移ったことが報告されている)

・代謝不全はいくつかの方法で病態生理学的なうつ状態を導く
1)エネルギー製造
中枢神経系の活動に必要なエネルギーの製造に悪影響を及ぼす。
2)炎症
代謝不全は酸化ストレスを生み、炎症を引き起こす。慢性炎症はうつ感と関連が強いことが研究結果で示されている。
3)神経機能
ミトコンドリアは神経細胞のいくつかの重要な機能に関わっている。例えば、アポトーシス、カルシウム調整、酸化ストレスを防御など。ミトコンドリアの機能不全はこれらに影響を与える。
4)ストレス応答(※):
ミトコンドリアの機能不全はストレス応答を司る「視床下部-下垂体-副腎系(HPA axis)」に影響を与える。

※ストレス応答とは、熱ショック、活性酸素、高浸透圧、紫外線、放射線、ウイルス感染など、環境からのストレスに対して細胞が示す反応。細胞の恒常性維持に働くほか、細胞死を誘導する場合もある。

・高血糖は脳の細胞にも悪影響を及ぼす。それは、脳細胞に多くのストレスホルモンを作らせストレスと機能不全はのエンドレス循環を引き起こしてしまう。空腹時血糖が18mg/dLの増加が鬱を37%増加させる。

④慢性的な身体の痛み
・ミトコンドリアの機能不全やインスリン抵抗性が慢性的な痛みを発症させることが知られている。
神経系統で起こる酸化ストレスや炎症は神経へダメージを与えたり、感作(ある物質が体内に侵入し,免疫反応を誘発すること)を引き起こすことがある。
・また痛みを調整する機能を持つ神経伝達物資の製造が滞ることもある。
・インスリン抵抗性は筋肉細胞の代謝に影響を与え、筋肉消耗・関節障害などの痛みを発生させる障害を引き起こす。

⑤副鼻腔炎、偏頭痛
・高血糖の人ほど副鼻腔炎が多い。2型糖尿病の人は2.7倍のリスクがある。
鼻の組織の炎症マーカーの数値の増大は心臓病・肥満・2型糖尿病の人の上がり方と同じであった。これは原因が同じではないかと疑念をもった。

⑥聴覚不全
・聴覚不全では耳鼻科ではよく見られる疾病であるが、これも同様と思われる。老化とか大きな音を聞いたからだとか言われることが多いのだが、インスリン抵抗性との関係性はあまり知られていない。インスリン抵抗性がデリケートな聴覚細胞内でのエネルギー不足や毛細血管の詰まりを引き起こす。聴覚システムは処理が複雑なのでかなりのエネルギーを必要としているようだ。

⑦自己免疫疾患
・自己免疫疾患も代謝不全との強い関係が研究で知られている。シェーグレン症候群、分泌腺異常、慢性甲状腺炎(橋本病)など耳鼻科でも取り扱う自己免疫疾患を見直した。
・エネルギーを十分作れない細胞が免疫システムを起動させる。

⑧不妊症
・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が増加傾向にあり、女性の不妊症の大きな原因となっている。
・これは高インスリン血症の1つの症状で、高インスリンが卵胞の莢膜細胞(theca cell)にテストステロン(男性ホルモン)を増産させ、女性のホルモンバランスを乱させる。

⑨慢性疲労
・医者を訪れる原因の中で最大のものがこの慢性疲労。10~30%がこれを訴えている。67%ものアメリカ人が仕事での定常的な疲れを訴えていて、70百万人が睡眠障害を訴え、90%が毎日カフェインを取っている。閉経後の女性はもっと状況が悪い。

■子どもたちへの影響:

大人だけではなく、子どもたちが大きく影響を受けています

・子供の肥満と非アルコール性脂肪肝
子供の肥満が過去50年で急速に増えている。これは代謝不全の一例に過ぎない。CDCによれば、子どもの肥満は1970年から3倍に増加している。その10年間で6~19歳の子供の5%が肥満症と見なされていたが、2000年の終わりには18%に達するだろう。もう1つの問題は非アルコール性脂肪肝だ。
子どもの初めて見つかったのは1983年で、今では20%の子供がそれを持っており、特に肥満度の高い子供に至っては80%にそれが見つかっている。

・精神障害
CDCによれば、18歳になるまでに40%の子供が精神障害を診断されている。それもここ10年で劇的に増えている。JAMA Pediatrics(小児科系医学雑誌)に紹介された最新の研究では3~17歳で不安神経症やうつ病と診断された子供の数は2016年と2020年で、それぞれ29%や27%と示されている。

・その他
注意欠如・多動症(ADHD)、自閉症、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝、心筋症、鬱、精神不安、高血圧、高コレステロール、炎症性腸疾患(IBD)、喘息、皮膚炎、アレルギー、できもの、乾癬、湿疹、統合失調症、双極性障害、境界性パーソナリティ障害、化膿性汗腺炎などが増えている。

・子供たちの身体も大人と同じ。最悪の環境に住んでいるのだ。しかし、栄養学の専門家(食品会社から多くの支援を得てるのだろう)やヘルスケアの専門家(こっちは製薬会社から)は黙ったままだ。
食生活や日常生活が子供たちのミトコンドリアを傷つけているだけではない、代謝不全が究極的は子供たちの寿命を縮め、彼らのQOLを悪化させる。

・今の我々の文化は、1年経った超加工食品、例えばケーキ、Goldfish、Rice puffs、ジュースやフレンチフライを子供に与える。有害な人工香料のついたローションやシャンプーを生まれた直後から小さな身体に使い始める。子供たちの最初のトラブルや風邪ひきで過剰な解熱薬(タイレノール)を使用したりすると肝臓や解毒能力を痛めてしまう。

(2)「(慢性疾患では)医者を信じるな、自分自身を信じなさい」

・病気になった時、医師の多くは手術を推奨する。手術以外の選択をしようものなら発狂しそうだ。そんな場合、患者はAMA(医療アドバイスへの反対意思表明書)への署名を求められ、そのままほとんど面倒も見ずにほっておかれる。後は自分で緩和ケアか低侵襲治療を探さなければならない。とはいえ、実際には医師と患者の力の差は大きいので、糖尿病、心疾患、鬱、癌の患者は医師を恐れて医師の推奨する「治療」を断ることはなかなかできない。

・医者も最初から患者を利用して儲けようと考えていたのではあるまい。彼らは病気を治そうと懸命に医者になる勉強してきた。家族にとっても子供が医師になるのは誉であろう。しかし彼らが研修医として勤務を始める頃には何十万ドルもの学生ローンを抱えていたりする。そして慢性的な睡眠不足や上司からの罵声。そんな中、理想主義は次第に消え失せる。多くの研修生は「私はこれで良いのだろうか?」と自問自答する。私は成功を収めたある外科医と話した時、彼ですら十回以上退職届を書いたと言う。
・多くの医者は「彼らは腐敗したシステムの軛に囚われている」と感じているが、転職することができない。それはお金の問題と医師というステータスだ。彼らは借金に縛られた専門職で、その結果金銭的インセンティブに動かされてしまっている。
・医療関係機関は健常者からではなく病人からお金を儲けている。それは病院も製薬会社も医学学校も健康保険会社も。この金銭的インセンティブは明らかに患者を食い物にしていると言える。

・75%以上の死亡例と80%の医療コストが代謝不全にかかっている。肥満・糖尿病・心臓病などの疾患は避けられるし回復もできる。毎年4兆ドルを「ヘルスケア」に使っている。それも対処療法にだけ。病気の根本治療を求めず、単に病気になるまで待ってから処方箋を書けばいい、というのが今の医療だ。その方が継続的収入が得られるからだ。

私(著者)の結論はこうだ。
「When it comes to preventing and managing “chronic” disease, you should not trust the medical system.」(慢性疾患では医者を信用するな)
但し、急性疾患(acute issue)の場合は別。

・しかし、こんなことを言うと、いつもこう尋ねてくる人がいる。
「我々のシステムは過去100年間に医療分野に奇跡を起こしてきたではないか?寿命も倍に伸びたではないか?何故そんな医療システムに疑問をもつ必要があるのか」と。
確かに公衆衛生が改善し、感染症対策も良くなり、急性虫垂炎とか外傷(骨折・火傷とか)などの急性疾患に対しては、緊急外科手術のテクニックも向上し、抗生物質などのおかげで寿命は確かに延びた。つまり、「急性」疾患への対処に関しては「奇跡」と呼んで良いだろう。
・1960年以降、医療システムはそんな急性疾患の治療で信頼を得てきたが、それが慢性疾患対しても患者が医者に異を唱えない状況を作り出した。そして過去50年間に亘る慢性疾患の「医療化」で大きな間違いを犯した。
・慢性疾患を細分化専門化して、それぞれの1つの症状に対して診断・処方を行うようになってしまった(英語ではサイロ化、日本語では縦割り)。もちろんこの方が儲かる。

「コレステロール値が高い? では、心臓医に行ってスタチンをもらって下さい」
「空腹時血糖が高い? では、内科に行ってメトフォルミンをもらって下さい」
「発達障害? では、神経科に行ってアデロールをもらって下さい」
「鬱ですか? では、精神科に行って選択的セロトニン再取り込み阻害薬をもらって下さい」
「眠れない? では、睡眠外来でアンビエンをもらって下さい」
「どこか痛いですか? では、専門医に行ってオピオイドをもらって下さい」
「多嚢胞性卵巣症候群ですね。では、産婦人科でクロミフェンをもらって下さい」
「勃起不全ですか? では、泌尿器科でバイアグラをもらって下さい」
「体重が多い? では、肥満症専門医でウゴービももらって下さい」
「副鼻腔炎ですか? では、耳鼻科で抗生物質をもらうか、手術をしてもらって下さい」

それぞれの症状に合計4兆ドルも費やしている間に、これらの症状がここのところ同じペースで増えてきていることに医者でも気づいていないかも知れない。こんな前例のない傾向に直面しているのに、我々はどうやら科学(この場合は医学)に疑問を持たないように操られていたようだ。

・ちなみにロックフェラーは石油生産の副産物を使って医薬品を作れることに気づいた。彼は医療介入重視の医療モデル(ハルステッドモデル)に基づくカリキュラムを教えるために、米国中の医学校に多額の資金を提供した。その後ロックフェラー家の従業員野一人がフレクスナー報告書の作成を任された。この報告書は、医療介入を優先し、栄養療法、伝統的療法、ホリスティック療法(自然治癒力を重視する)を非難する医学教育のビジョンを概説したものであった(=つまり医者の儲けが優先)。議会は 1910 年にフレクスナー報告書を承認し、米国の認定医療機関はハルステッド/ロックフェラーの介入ベースモデルに従わなければならないと定めた。
当初、著者はハルステッド博士の考え方に賛成だった。外科研修に応募したとき、著者は単に切除することで問題を「解決」したいと思っていた。医師、特に外科医になることは特権であり、最高の医師だけが成功するように厳格なプロセスがあるべきだと信じていました。若い研修医だった著者は、過酷なスケジュールについて不満を言う人を批判していた。

・介入重視のインセンティブに関するもっとも醜悪で救いようのない例は医療業界の指導者たちが、食事と生活習慣が人々を病気にしていることに口をつぐんでいることだろう。
スタンフォード大学医学部長やNIH(アメリカ国立衛生研究所)のトップが記者会見で子供たちの糖質摂取削減が喫緊の課題だと発表すれば、砂糖の消費は一気に下がるだろう。人々は医療機関のトップの言動をたいてい信じるから。喫煙は彼らが身体に悪いと言っただけで激減した。

アメリカの医療分野のトップが口をつぐんでいる不都合な真実はこれだけではない。いくらでもある。
1)政府は1990年に食品ピラミッドを発表して炭水化物や糖質の摂取を奨励したが、彼らはそれに対して何も言わなかった。

2)彼らは子供向けケーブルテレビ会社(←FTCに何百万ドルものロビー活動をしている)に対して食品CMの規制を働きかけなかった。ファストフード会社は2019年には50億ドルを使って子供向けCM(その99%は全く健康的でない食品)を実施した。

3)彼らは栄養学アカデミーの運営資金の40%が食品業界から来ていることに異議を唱えない。そんなアカデミーは小さな缶のコークは健康的だとのたまっているし、「砂糖は肥満の元」という考え方を攻撃し、砂糖税に反対したロビー活動を行っている。(筆者注:アメリカのロビー活動と賄賂の本質的な違いが判らないですが)

4) 彼らはSNAP(補助栄養支援プログラム、国民の15%が頼る栄養プログラム)資金の10%が砂糖入り飲料に使われ、コカコーラやペプシコなどの企業に直接、納税者のお金が流れ込んでいることに憤慨したりはしない。

5)彼らは医療機関・関係者が超加工食品会社からそれぞれ何百万ドルもの資金援助を受けていることを咎めない。

6)彼らは我々の食品、水、空気、土壌、家、パーソナルケア製品に含まれている8万種類以上の合成化学物質に対する規制強化を求めない。そのうち、人体への安全性が適切にテストされているのは1パーセント未満であり、その多くは糖尿病、肥満、不妊、癌と関連のあるホルモンやミトコンドリアの撹乱物質であることが知られているにも関わらず。

7)彼らは加工食品に使われる何十億ドルもの農業補助金を止めない。

8)内科医や小児科医は子供の砂糖消費量の削減を呼びかけない。

9)心臓医は心臓病の最大の原因である加工食品の消費削減が喫緊の課題と声を上げない。

10)彼らはUSDAがアドバイザリーボードの提案(総摂取カロリーのうち砂糖の占める割合を10%から6%にさげようという内容)を無視して決めたガイドラインに反対しない。

11)彼らはUSDAが規制を緩和してまで、クラフト社が学校に超加工食品を納入するのを助けたことに異議を唱えません。

・NIHとか医療機関は本来ならこれほどまでに慢性疾患患者が多いことに警告を発するべきだろう。しかし彼らは沈黙している。一方では患者が増えて儲かっている。
・医療研修では、患者は「怠け者」で、悪い食品を食べ、悪い決断を下すものだとよく言われている。患者に対するこんな上から目線な見方は、まさに医療の風土病(筆者注:虫けらとは言わないまでも家畜か?)。
・周りを見回しても、米国では、体系的に肥満や代謝不健康になろうとしたり、苦しい生活をおくろうとしたり、子供や孫の重要な節目を逃そうとしている人は見かけません。患者たちは、6兆ドル規模の食品業界(食品を安くて中毒性のあるものにしたい)と4兆ドル規模の医療業界(病気の患者への介入で利益を上げ、病気になる理由については沈黙している)の絡むの関連業界の悪魔の取引によって押しつぶされているのです。

(3)最後に

・この著書には更に具体的で詳しい対処法、食材とそれを使ったメニューが盛りだくさん書かれています。参考になる部分が多く、理解も深まると思います。但し、メニューはアメリカンなのですが。(^^;)

・これまで「自然食ダイエット」とか「粗食ダイエット」が良いとか悪いとか、「デトックス」とか、「ミト活(ミトコンドリア活性化)」とか、「コンドロイチンのサプリメントなんて飲んでも消化前にバラバラにされるだけ」とか、健康や慢性疾患へのいろいろな対処方法が提唱されてきて、正直よく判らなかったのですが、この本の読むと判断原理が見えてくると思いました。

・平均寿命は確かに延びています。命は伸びたがフレイルや認知症の増加傾向を見ると、身体全体がそれについていっているのかは心もとない。これらすべてが「彼ら」の陰謀とは思えないが、儲かっているのは確かだろうし、その儲けが「健康寿命」の本質に使われている気はしないのも事実。

・何が正しいのか。権威もマスゴミもウソが多く頼れない時代になり、自分の頭で考えて判断しなければならなくなりました。その際には判断原理を持つ必要があります。

・ともあれ、本庶先生もおっしゃってますが、科学論文の9割はウソ。慢性疾患絡みの医学・薬学はこれから崩壊するでしょう。