Masaki U

24歳

Masaki U

24歳

最近の記事

見えない世界

まだ小さかった頃。家族で沖縄県の石垣島に旅行に行ったことがあった。自然の豊かな美しい島で、ハイビスカスがたくさん咲いていたことを覚えている。雲一つない空の太陽が眩しく、時間の流れが遅かったことも。 泊まっていた旅館で夕食を食べた後、父の運転で夜にレンタカーで星空を見に高台に行った。ビルも街灯もない島は真っ暗で、明かりは空にしかなかった。月が眩しいと感じたのはあの時だけだったと思う。頭上に広がる夜空には普段、都会で見るのとは比べ物にならないぐらいの星が瞬いていて「こんなに星が

    • ペルー旅行記③

      Capitulo5 Salud(サル―)! テラスでの卓球にも飽きて、マットレスでだらだらしている。 外はすっかり暗くなり、従弟は「また夜に戻ってくるから。じゃあね!」と言って帰っていった。どうやら今夜はモハの従弟と友達とで夜の街に飲みに行くみたいだ。もちろん僕らも。今日の残りの予定はそれだけだったから、友達が集まるまで自由時間になった。 左ではモハがいびきをかいて寝ていて、右にいる友達は家族とLINEをしている。そして胡坐をかいて座っている僕の脚の上には犬がいる。”チュ

      • ペルー旅行記②

        Capitulo4 到着! モーテルでの仮眠が全く足りていなかったぼくは飛行機がマイアミ空港を離陸するとすぐに眠ってしまい、目が覚めたのは飛行機がリマ空港に着陸した時だった。スペイン語の機内アナウンスの後に英語のアナウンスが流れる。ここではやっぱりスペイン語が第一言語なんだ。 ひどい訛りの英語を聞き、自分がペルーにいることを実感する。窓側の席に座っていたから外を見ることもできたけれど、ぼくは敢えて見ないことにした。初めて目にするペルーの風景は空港を出た時にしよう。 スペイ

        • 諦めの華

          *不快にさせてしまったらごめんなさい 考えるために、そして反省するために書きました 誰にも見せないこともできたけど、見える場所に書くことが反省になると思いました 話せることが減ってきた気がする。 最近、立て続けに高校の友達、大学の友達、中学の友達と会った。最後に会ってから数ヶ月ぶりの人もいれば、卒業以来6年ぶりの人もいた。 久しぶりに会う彼らは、ひと目でわかるような変化を遂げている人もいれば、話すことでその変化を感じる人もいた。全てが大きく変わって別人のようになっている人

          それは危険に慣れただけ

          2024年の1月後半から3月まで自動車教習所に通っていた。 実家に車が無いことや、交通の便の良い場所に住んでいたことで、これまで免許を取る必要性を感じておらず、結局大学4年になっても免許を持っていなかった。友達と遠出をするときなど、運転できないことが不便だなーと感じる時もあったけれど、そのたびに免許持ちの友達の「全然運転するよ!」という言葉に乗っかり甘えていた。けれど、これから社会人になると教習所に通うための時間を捻出することが難しくなりそうだし、一度免許を取ってしまえばこれ

          それは危険に慣れただけ

          だだだだーん

          何もすることが無かった休みの日。家から電車で1時間の芸術大学で、無料の現代美術の展覧会がやっていることを知って行くことにした。そこはぼくが大学受験を失敗して浪人生だった時、翌年に受けようかと考えて資料を取り寄せていた大学の一つだった。結局ぼくは芸術大学をもう一度受けることはせずに外国語大学を受験して入学した。けれどその場所に行くと、当時を思い出して、今でもなんだか身近に感じてしまう。だだだだーん 家から大学の最寄駅まで電車を乗り継いで1時間、そこからスクールバスに乗ってさら

          だだだだーん

          愛は波動関数

          「誰かを愛すると、ほぼあらゆることに言いわけを思いつくものさ。死刑囚と結婚したくて外から訪ねてくる女が何人もいた。」 「ああ、でも、そういう女はクレイジーだろ?」 「愛そのものが、ある意味クレイジーだ。」 S・A・コスビー「頬に哀しみを

          愛は波動関数

          難しいことをするべきだ

          高校2年の後期、そろそろ志望校を決定しないといけない時期。毎月のようにある模試の、志望校欄を芸大・美大の名前で埋めるようになった。絵を描くことは幼い頃から好きだったけれど、ぼくが第一志望にした大学は日本に2つしかない国立の芸術大学で、西日本では最も難しいとされていた。入試もセンター試験5教科5科目+実技3科目が必要で準備にすごく時間がかかるため、高校一年の頃から準備をしていても浪人は当たり前だと言われていた。通っていたのは理系に強いだけの普通の高校で、芸術の授業は一年生の頃に

          難しいことをするべきだ

          話すこと

          大学四年生の秋学期、最後の学生期間に「手話」の講義をとっていた。卒業に必要な単位は既に取り終えていたから(なんならオーバーしていた)卒業要件なんて気にせずに好きな科目をとることができた。 大学の履修登録は抽選制になっている。各学期の始まる前に1週間ほどの登録期間が設けられ、その間に次の学期に受けたい科目の抽選に申し込む。数日後に届くメールで当選していればその科目を履修することができ、運悪く落選した場合は定員割れしている科目から選び直さなければいけない。「遅寝遅起き」がキャッチ

          ペルー旅行記①

          Capitulo1 ペルー行き決定 2022年10月初頭 いつも通りのステーキと茹でたブロッコリーが山盛りのディナーを日本人留学生の友達と一緒に食べて食堂を後にした。年中夏日のフロリダ州だけど、10月の夜は昼間の蒸し暑さを忘れるくらい気持ちのいい夜風が吹いている。毎日降るスコールと皮膚を突き刺すような日光のおかげで青々と育った草木が揺れる音が心地いい。突然、後ろで雄たけびのような声が聞こえて振り返ると、さっき僕たちが出てきた扉の前でアスリート学科の学生達が輪になっているのが

          ペルー旅行記①

          やさしさクライシス

          昔々あるところに一人の青年がいました。彼は自分が嫌っていた人を皆がやさしい人だと褒めているのを聞き驚きました。友達と話している時、彼らの先輩や先生のやさしいエピソードに共感できなかった彼は友達に「それの何がやさしいの?」と聞きたかったのですが、結局口を閉じてしまいました。そのやさしさがわからないのは君がやさしくないからだと言われることが怖かったのです。 月日が経って、彼は大人になりました。やさしさが何なのかはまだわからないままだけど、やさしさというものは受け取った人がどう感じ

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          贈る言葉あるいは選手宣誓

          残りの学生生活も1か月を切った。卒業旅行も終わってしまい、卒業式も目前に迫っている。ぼくは昔から式典とかセレモニーみたいな催し物に興味がなく、なんなら嫌いだった。中学生の頃は卒業式の練習を何度もさせられることに辟易としていたし、今でも式典というものが必要だとは思っていない。校長や市長、PTAや学年代表のお言葉は”お約束”のオンパレードで、その嘘臭さにうんざりだった。(式以外、例えば写真撮影、寄せ書き、最後のホームルームは大好きな時間だった) けれど格式ばった式典というイベント

          贈る言葉あるいは選手宣誓

          隠し味

          *続き 一人でごはんを食べることが好きではない。 味は相対的なものだ。鼻を押さえて食べると料理の味が変わるように、空腹時は食べ慣れたものがいつも以上に美味しく感じるように、味は様々な要素が組み合わさってできている。嗅覚、空腹具合、体調、気温、盛り付け、周囲の清潔さ、昨日食べたものなど、味に影響を与える要素を挙げていくときりがないことが分かる。しかしそんな複雑な味を決定する無数の要素の中でもぼくは「一緒に食べること」が一際重要な役割を果たしていると感じている。 Netfl

          夜のすきまで

          *2020年コロナ禍、大学には一度も登校できず時間だけが有り余っていた時に書いた小説。疲れや怒り、失望や希望などの混ざり合った様々な感情をそれぞれの短編に分解することで整理したかったのかもしれないと今思う。 1 いつになったら朝が来るの? 何気なく発したその言葉はだれに届くでもなく狭い部屋の中で力なく消えていった。 あの時からずっと朝が来ない。寝ると朝が来るなんて恐竜の時代からの常識だと思っていた。夜は皆が聞き耳を立てている。暗く静かな夜は音が良く響く。半分空いた窓か

          夜のすきまで

          怒りは正直者

          怒りは人間関係においてあまり歓迎されることではない。怒っている人を見ることはしんどいし、怒るにはたくさんのエネルギーがいる。怒りはそんなマイナスの要素をふんだんに持った感情で、付き合うことは大変だ。アンガーマネジメントという言葉はあってもハッピーマネジメントは聞いたことが無いのもそんな理由からだろう。キリスト教では”憤怒”が「七つの大罪」の一つとされているように怒りは普遍的な人間の感情の一つではあるけれど、もちろん人によって程度の差があり中には怒らない人もいる。そんな人は実際

          怒りは正直者

          おいしいって何?

          これまで食べたものの中で一番おいしかったものを聞かれたら何と答えるだろうか。 一番高かったもの?部活終わりの空腹でかきこんだラーメン?留学から帰ってきて久しぶりに食べた日本食?夜中に友達と買い食いしたアイスクリーム?沢山のフルーツで飾られた10歳の誕生日ケーキ?大学受験勉強の息抜きに食べたマクドナルドのポテト?母が早起きして作ってくれた運動会のお弁当?バレンタインでもらった手作りのチョコレートクッキー?高熱の時に父が走って買ってきてくれたグレープフルーツゼリー?スキー場で飲ん

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