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夢十夜

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見た夢の残りを書きます。綺麗な話も、くすくす話も。
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あとがき

この度は、書き散らしにもならぬ創作を読んでくださりありがとうございます。大好きな夏目漱石先生の分かりやすい真似事をすることへの些かの抵抗もありつつ、十夜まで書き尽くしてしまいました。お付き合いくださり、ありがとうございます。

はじまりはひょんなきっかけでした。初めて書いた第一夜は本当に見た夢でした。オチも何とも言えない感じなのですが、あれは本当に桑原くんでした。特に推しではありません。なぜ夢に出

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第十夜

「さようなら。」
午前3時の生ぬるい温度が広がる晩夏の寝室。汗で髪が顔にへばりつく。とても不快な感覚は髪のせいだけではなかった。

さっきまで動いていたものが止まる瞬間を男は見ていた。手を握ればまだ温かくて、優しく指を絡めてみる。愛がなくてもこんなに温かい。歪んだ顔をそっと抱きしめてみた。それから丁寧に涙を拭って、口を閉じた。

さっきまでの嵐が嘘だったみたいに、秋の虫がリーリーと鳴いている。煙草

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第九夜

今日も煙草を吸う。吸ってゆっくりと煙を吐き出す。それが私の仕事だ。

17:00から準備が始まる。白昼夢隊の人々と入れ替わり、夢団地へ繰り出す。愛用のジッポーは毎日手入れしている。錆びないように拭き取りを念入りに行う。好きな銘柄はない。それはこちらが決めることではないからだ。

仕事場へ向かうと、部屋に案内される。ワンルームの床に煙草が1箱置いてある。煙草を呑むという人も居るが、私は吸う派である。

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第八夜

お盆に合わせて帰省の支度をしている。天国と地獄マンションの3階に住む僕は、可もなく不可もなくの部屋に住んでいる。心無しかエアコンの効きが悪いのだ。3階に課せられし、地獄なのかもしれない。

現世へのゲートには持ち物検査がある。ちょうど搭乗するときみたいな形だ。許されているのはボストンバッグ1つ分。大きいぬいぐるみは入らない。この間、閻魔大王様にもらった可愛いぬいぐるみを家族にも見せたかったな。

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第七夜

気がついたら、部屋の中心で座っていた。

夏のど真ん中、暑さと湿度を感じながら部屋の真ん中にいた。ゴツンと固い音がする。天井から四角いタライが落ちてきた。どうやら頭の先にたんこぶができたらしい。

四角いタライの角が頭に斜めにぶつかってきた。たんこぶも鋭利な形をしている。このまま冷やさずにいたのなら、どれくらい大きくなるのだろう。名探偵コナンの蘭姉ちゃんのようになれるのだろうか。ほんの少しくだらな

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第六夜

ゲームの新作を考えていた。使い慣らされたキャラクター、配色、設定、内容を打破するべく頭を悩ませていたが中々思いつかない。どれだけアイディアを練っても、あり物になってしまいそうで気後れしてしまう。無くなっていく創造性に恐れている。

今日は連休の真ん中、人通りが多く忙しそうな駅を横目に手元のメモに目を通す。電車が忙しそうに動く。発車の際に鳴る音は金切り声だったとしたら大層心が痛む。

思い切ったアイ

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第五夜

こんな夢を見た。
ぼーっとベランダから外を眺めている。春の強い風が吹く。伸びかかった髪が顔を覆う。鬱陶しいと思いながら、煙草を支度する。瞼にかかる日差しが柔らかい。大変いい気分だが、思い出したようにくしゃみをした。ああ、花粉症じゃなかったのに。涙ぐんだ目をこすってみる。痒い。

ほんのり街が明るくなる。優しい紅色と少しの白色が彩りを加える。サラダだったなら、今が食べ頃だろう。温泉卵とトマトかな。酸

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第四夜

コンナ夢ヲ見タ。
シラヌ惑星ノ アル畑二 オリタッタ。
ソコ二ハ 豊カナ 森ノ色ト 暗闇ガ シマシマ模様ノ 大キナ 球体ガ アッタ。

不思議二思ッテ、 半分二 切ッタ。
中身ハ 赤カッタ。 暗闇ノ点々ガ ツイテイタ。オソロシイ。

隣ノ ヒロシガ 「タベヨウ。ウマソウ。」ト言ウ。
後ノ マコガ「コレヲ カケルノ。オイシイワヨ。」ト言ウ。

ネバネバノ 豆ツブ達ガ ドロン。 バタバタト カカル。

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第三夜

こんな夢を見た。
何を探して、何を見たくて、今焦っているのか分からない。久しぶりの幽体離脱だ。やけに身体は重く感じる。苦しいけれど、眼前に傾いた夕日が現れる。

何かを美しいと思えるだけで、幸せなんだろうか。感受性が死ぬ音がする。いつか夕日を見たって、何とも思わない日が来てしまうのだろうか。

あの時の言葉を間違えた。
悲しそうな顔に気付かぬ振りをした。
震えてる手を離してしまった。
大切なものを

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第二夜

こんな夢を見た。
気がつくとそこは、水の中だった。全身の至る所から呼気が溢れ出ていく。死を間近に感じそうなこの瞬間を淡々と過ごしていく。
「あれ、お風呂の換気扇止めたっけ?うーんと、ガスの元栓は?っていうか、家の鍵締めたっけな…。」
とてもどうでも良いことばかりが浮かんでくる。これが走馬灯というやつだろうか。ああ、なんて空っぽの人生だったんだろう。というか、空っぽになってしまったんだろう。

ぶく

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第一夜

こんな夢を見た。
寝苦しい夜だった。寝つきが悪く、ようやくのことで眠った。ふと、目が覚めると脱衣所の電気が付いている。不思議に思って見ていると、何やらドライヤーの音が聞こえる。ぶつぶつとした声も聞こえてくる。恐怖を覚えて、布団を頭まで被り、壁に身体を向けた。

ふと、音もなく扉が開く。さらさらとした音が響いて、こちらに寄る気配が分かる。見てはいけない。そんな気がした。すると、ピリピリとした感覚が走

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