第七夜
気がついたら、部屋の中心で座っていた。
夏のど真ん中、暑さと湿度を感じながら部屋の真ん中にいた。ゴツンと固い音がする。天井から四角いタライが落ちてきた。どうやら頭の先にたんこぶができたらしい。
四角いタライの角が頭に斜めにぶつかってきた。たんこぶも鋭利な形をしている。このまま冷やさずにいたのなら、どれくらい大きくなるのだろう。名探偵コナンの蘭姉ちゃんのようになれるのだろうか。ほんの少しくだらない期待をしてみる。
パンのようにふくらむたんこぶを撫でては、思い出せない今日までの事を考えてみる。
だんだんと視界がぼやけて、部屋の明かりが西日になり始めた頃にはすっかり眠っていた。たんこぶは夢を食らってどんどん大きくなっていく。
目が覚めるとこぶは大きくなって、アドバルーンのようになった。最初は思い切り揺らしたり走ったりして楽しんでいたが、段々と不安が勝ってきた。
いよいよ破裂させたほうが良いのではないかという気がしてきた。
ちかちかする蛍光灯をみながら、針を手に持つ。小さな針が酷く重くなってしまった。そっとたんこぶへ向かう。
パチン。鈍い音がする。灰色の液体が溢れている。
世界から色がなくなって、暗く暗くなっていく。もっと愉しめばよかった。感受性が死ぬ音がした。