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ヒデ(Hide)さんの闘病記です。
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#脳出血

闘病記(65) 塵も積もれば山となり、埃のような些細な出来事の積み重ねが誇りの獲得につながる。

闘病記(65) 塵も積もれば山となり、埃のような些細な出来事の積み重ねが誇りの獲得につながる。

 リハビリ病院の朝は静かにやってきて、にわかに活気づく。起床の時刻とともに、それぞれの患者の「朝のルーティーン」が始まるからだ。
患者達のルーティーンが頭に入っているらしい看護師、介護福祉士の皆さんは、決して多いとは言えない人数で病棟を担当しているのに、流れる水のようにスムーズにサポートをしていく。
 着替えをしていて、うまく動かない右腕が服の袖に入らないでいると、
「赤松さん、すぐそっちに行って

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闘病記(64)人生の宿題。

闘病記(64)人生の宿題。

「そろそろタイトルを変えようかな?それともサブタイトルがイカンのか…。」
「そもそも、『闘病記』と名付けているにしては病と闘っている場面が少ないし、サブタイトルは自分でもシュールすぎると感じることがあるな…。」
「もっと目を引いて、読めば必ず役に立つといった感じのタイトルにすれば良いのかな?例えば、『あつまれ脳出血サバイバー!リハビリ病棟徹底解剖!!』とか。」
などと、天井の木目を見つめてシワの数

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闘病記(63)  教粗誕生!?

闘病記(63) 教粗誕生!?

 「涙を流し祈る君に俺は一体何をしてあげられる?そうさ、何もしてあげられない。何も。」
 いやまぁ、ラブソングでも何でもないんだけれども。詳しくは後に譲るとして…。
 リハビリ病院回復期病棟退院まで約1ヵ月を切った頃のことだ。自分を担当してくれる3名の療法士の方々は、さらに(それまでと比べても)「物分かりの良い人たち」になっていた。
 なんというか、自分のことを、「◯び太くんを温かい眼差しで見守る

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闘病記(48) KURUMI

闘病記(48) KURUMI

タイトルをローマ字にしたら、何やら地底深くに設置された人工知能のような表記になった。「くるみ」でも「クルミ」でもよかったんですが、これはこれでなんだかかっこいいのでこのままにしておきます。さて、なぜ「くるみ」かというところが今日の本題。
 ある日、リハビリの時間。担当の理学療法士Tさんがとても興味深い話をしてくれた。それは、ゴキブリについてのことであった。
 ゴキブリ嫌いの人にとっては、(好きな人

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闘病記(46)  くせになりそう。

闘病記(46) くせになりそう。

「しばらくの間、オムツをつけてトイレはベッドの上でしてしまうものと割り切りましょう。」
尿意に集中し、それを感じたらとにかく出してみることを習慣づける、という介護福祉士からの提案を自分は受け入れた。(この辺の経緯を説明していると、今回のテキストが終わってしまうので、興味のある方は45話あたりを読んでみてください。)
 それ以降、自分が身に付けるオムツには、パッドというものが付けられるようになった。

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闘病記(45)ヒーロー

闘病記(45)ヒーロー

 
 起きて活動をしている昼間はともかく、夜眠ってしまっている間、尿意が全くわからず夜毎おねしょを繰り返す日々が続くと、さすがに自身のことを「オネショマン」と自嘲する余裕もなくなっていった。
 バリバリと仕事をして忙しく働いているであろう同じ年頃の人たちを思い浮かべては、オムツをつけて夜毎のおねしょに悩み、怯える自分をどんどん嫌いになっていく。
 夜はほとんど熟睡できず、「これは尿意かな?」と思う

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闘病記(43)  オネショマン

闘病記(43) オネショマン

前回投稿したテキスト「採尿パーティー」のnoteに40を超える「スキ」を頂戴し、フォローをしてくれる人も増えた。とってもうれしい。皆さんの応援を無駄にすることなく、これからも丁寧に書いていこうと思う。
 さて、自分はようやくバルーンを取り外せたわけだが、何より驚いたのは病院内の人々が大変に喜んでくれたことだった。あんなに喜ばれるとは思わなかった。バルーンが取れた翌朝、車椅子を押してもらってリハビリ

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闘病記(42)採尿パーティー

闘病記(42)採尿パーティー

 「赤松さんから600mℓいただきました!」
これ、尿の話。これまでの経緯を知らずにタイトルを見た人は、もしかすると眉をしかめるかもしれないけれど、内容はいたって真面目なのです。「トイレトレーニングがうまくいかず、リハビリ病院に入院してからもなかなかバルーンが取れないことに悩む脳幹出血患者の、ジェットコースターのような日々の記録」。少しでも興味のある方は、是非(38)話あたりから読んでみてください

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闘病記(41)  チャンス到来

闘病記(41) チャンス到来

 
 「家族に協力してもらいながらバルーンをつけたままの生活を送る。」「自己導尿を行う。」この言葉たちが頭の中をぐるぐると回り、眠っていても悪いイメージが布団の上からおおいかぶさってくるような日々が続いた。
加えて、家族、主治医、担当看護師らと行う面談の時間が、絶望感にとどめを刺した。 
自分は、主治医から、
「検査の結果は厳しいものとなりましたが、退院までにまだ時間があります。バルーンが取れるよ

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闘病記(40) 「いやだよ。」

闘病記(40) 「いやだよ。」

 この「闘病記」が40話目を迎えた。書き始めた当初は、ただただ自分のために書いていたような気がする。
 やがて、「自分と同じ境遇にある誰かの目に触れて、少しでも気持ちが軽くなってくれればいいなぁ。」と思いながら書くようになった。
 それに加えて、今では「自分のために(仕事とは言え)一生懸命リハビリをしてくれたり、ケアをしてくれたりした人々に、スポットライトが当たるような内容になればいいな。」と思っ

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闘病記(38)   イニシャルb

闘病記(38) イニシャルb

 
 入院している患者に、
「病院にあるものや入院生活に関係するもので、bから始まる英単語を1つ言ってみてください。」
と質問したとしよう。(無茶振り以外の何物でもないが)どんな答えが返ってくるだろうか?(この際「うるさい!」「知るかそんなもん!」といった反応をする入院患者は1人もいないと仮定します。)
 自分が考えるに、圧倒的な第1位は「bed(ベッド)」ではないかと思うのだ。そして第2位が、「

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闘病記(37)  「ダイブします。」

闘病記(37) 「ダイブします。」

 
 「可愛い子には旅をさせろ」という諺がある。「子供が可愛ければ、甘やかさないで、辛さや厳しさを経験させたほうが良い。」という意味。現代の旅の辛さや厳しさの意味合いはだいぶ変わってしまってはいるものの、それでも幼少や若い頃に一人旅を終えた後の体には小さな「自信」が宿る。それは昔も今も変わらない。そしてそれはリハビリテーションを受ける患者にもあてはまる。自分たちは入院して施術を受けている期間内にあ

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闘病記(36)  回復期病棟のお風呂事情

闘病記(36) 回復期病棟のお風呂事情

 
「お風呂は1日おきで、機械浴になります。」
「はい。」
リハビリ病院に転院したとき、パンフレットかプリントのような物の1行を指差しながら声に出して説明をしてもらった。「はい。」とスムーズに答えはしたものの、
「機械浴って何?」
初めて耳にする言葉だった。
「機械浴ってどんなお風呂なんですか?」
と、質問できるような、親しい知り合いはまだ病室にいなかったし、自分でイメージしてみるしかなかった。「

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闘病記(35)  回復期病棟の トイレ事情

闘病記(35) 回復期病棟の トイレ事情

 回復期病棟の患者のほとんどは、車椅子で移動する。いわゆる大部屋から、食堂、風呂場等は離れた場所にあり、足や腰を痛めたり、脳出血や脳梗塞で歩けないという人たちにとって車椅子での移動は必須だった。そして、トイレもまた離れた場所にあった。(もちろん部屋によっては、近い場所になる人もいたが、それでも1人で移動する事はできず看護師さんや介護士さんとともに車椅子で移動した。)
 自分がトイレを使ったのは、最

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