美術批評 静物:毛利悠子の《Decomposition》 木越純
路地の奥にある古びた集合住宅を改造したアートスペースの最上階の一室が、お目当ての展示場である。鉄の扉を開くなり、呻くような音響が鳴り響いてくる。日当たりの良い部屋に入るなり、甘ったるい果物の腐臭が押し寄せてくる。色々な果物の匂いが混じりあっているが、一番優っているのはバナナに違いない。見ると部屋の奥の木机の上に、古典絵画の静物画の様に何種類もの果物が置かれている。何日もテーブルの上に置きっぱなしにされているのだろう、リンゴやオレンジはかろうじて原型を保っているがバナナは完全に