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Across the Pluriverse|越境する

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興味を唆られる研究や書籍についての記事を分野横断的に蒐集。単純に面白かった内容も含め、考えさせられることや応援したい研究の貯水池。
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記事一覧

"未来社会の担い手×ムーンショット研究者" 交流会 / 原田香奈子PM 編

ムーンショット型研究開発事業の目標は、2050年実現を目指しています。 そのとき大人になって未来を担う立場になる中学生や高校生が、いま実際に研究開発を進めている研究者と直接交流できる場として、内閣府では【"未来社会の担い手×ムーンショット研究者" 交流会】という企画を実施しています。 今回は、目標3で「人とAIロボットの創造的共進化によるサイエンス開拓」に取り組んでいる、原田香奈子プロジェクトマネージャー(PM)と、東京都内の中学生の交流会の様子をレポートします! こんにち

protolink開発秘話、ROSConJPの裏側

はじめにOUXT Polaris社会人メンバーの片岡です。 皆様ROSCONJP2024お疲れ様でした! 今回も多数の興味深い発表が聞けて大変楽しい一日でした。 今回学生メンバーの松崎と二見がROSCONJP2024に参加し発表してくれた内容は10分では少し物足りないのでより深い内容や今後それをどのようにロボット開発に活かしていくかについて記事にまとめます。 protolink今回の発表では、マイコンとROS 2の新しい接続方法を提案しました。 従来ROS 2とマイコンを

「考えるということを考えるAI」: OpenAI o1と因果推論AI(Causal AI)

本記事は、9月12日にOpenAIから発表された新しいAIモデル、o1 シリーズ (o1-preview, o1-mini)についてと、o1 登場によって注目が高まるであろう、生成AI(Generative AI)とは異なるアプローチのAIであり、「考えるということを考える」を実現する、因果推論AI(Causal AI)について概観したものです。AGI(汎用人工知能) の実現に向けたステップにもなりうる「生成AIと因果推論AIのシナジー」や、そのような時代にあって「人間がやる

【よどみの探究:第3回】「周囲が求めていること」に合わないがゆえに言いづらい研究の関心があるのでは?

「この前聞いた岡本さんの話、大変そうとは思ってたけどそれ以上に何かありそうなんだよな……」 ある金曜の夜、抱志の「振り返り」は突然やってきた。そして「振り返り」の中身を記録すべくノートPCを開く。 抱志が思い出したのは、先週末に大学院時代に隣の研究室で同学年だった友人である岡本龍人と会ったときのことである。彼は大学院の修士課程を終えて企業に就職したものの、3年ほど勤めた後で退職して博士課程に学生として「舞い戻ってきた」という経歴を持つ。そしてAIの研究で博士課程を修了し、現在

「光合成をやめた植物」と多様な生態系の在り方。末次健司氏インタビュー。

「光合成をやめた植物」と聞いて、きっと驚かれると思う。どうやって生きているの?それは植物なの?この不思議な「菌従属栄養植物」の研究をされている神戸大学大学院理学研究科教授 末次健司氏にお話をお聞きした。 -末次さんは、なぜ菌従属栄養植物などの「光合成をやめた植物」を研究されるようになったんですか? 末次:奈良出身で、子供の頃から自然の中で遊ぶのが好きでした。当時から哺乳類のような大きな動物ではなく、植物や昆虫のように手にとって観察できる、比較的小さな生き物に惹かれていたん

日本語を勉強する外国人であり、また日本語教育を探求する研究者として学んだこと

このメールを受け取ったとき、すごく嬉しかった。 修士課程を修了するために2年間の深い学びと努力を重ねた後、初めて筆頭著者として論文が受理されたことは、自分が学者としての一歩を踏み出したという感覚を強く感じさせた。 この論文の出版にあたり、これまでの研究の道筋について考えを巡らせることにした。結局、18歳で高校を卒業し、脳神経外科医になろうと考えていた当時の私の目標は、明らかに時間とともに変わってきた。 本記事では、この道のりについて考察し、この研究がどのように生まれ、今

【インクルージョン】意外とよくわかっていない、「インクルージョン」とは何か?

ここまで、インクルーシブ・リーダーシップ(IL)に関する主要論文を投稿してきましたが、今回は、IL研究の元となっている、「インクルージョン」に関して見ていきます。 インクルージョンとは何か、を理解するために個人的におすすめなのが、こちらの書籍です。学術書ながら、とてもわかりやすい良書です。過去の研究を紐解き、インクルージョンをここまで明瞭に解説した書籍を他に知りません。超おすすめです。 インクルージョンとは? そもそも、「インクルージョン」とは何か?と聞かれて、どう説明

ヒトのヒトたるゆえんは、「先見性」にある——『「未来」を発明したサル』試し読み

太古の昔、サルとヒトとを分けた最大のファクター「先見性」。過去を回顧し、未来を予測することを可能にするこの力は、実はこの地球で人類だけが大きく発達させてきたもの。その秘密を進化人類学、認知心理学、神経科学、考古学、歴史学の成果を縦横無尽に駆使して解き明かす壮大なる一書、『「未来」を発明したサル——記憶と予測の人類史』(トーマス・スーデンドルフ、ジョナサン・レッドショウ、アダム・ブリー著、波多野理彩子訳)が本日発売しました。今回の記事では刊行を記念し、本書の冒頭を特別公開します

ChatGPTに環世界の概念は存在するか

先日、興味深いニュースが目に入ってきました。 それによると、AIの研究の進歩が著しい現代においてユクスキュルが提唱した環世界の概念が再注目されている、というのです。 今回はこうした背景から、現代における「ChatGPT」と「環世界」の関係性について、私なりの視点から考察していきたいと思います。 環世界(Umwelt)とはそもそも環世界(Umwelt)とは何かというと、ドイツの生物学者であり哲学者でもあるユクスキュルが提唱した概念であり、簡単にいうと「それぞれの生物が行動す

有機的なつながりの奥底〜速くまっすぐ遠くへ。ゆっくりしなやかに近くへ〜

生物の生命活動の根幹を成す「有機的なつながり」は「物理的なつながり」と「情報的なつながり」をミクロな一つひとつの細胞が両立することで実現しているのでした。 私たちがイメージする、いわゆる「機械」は様々な部品の組み合わせで構成され、部品と部品が協調して動作、機能しています。 その制御は、各部品がどのような状況・状態にあるのか、どのように動作しているのかを各種センサーで感知し、感知したデータ・情報を中央演算装置(CPU)で処理して、最適な状態を維持する、あるいは実現するように

朝ドラ「らんまん」と健全な科学

朝ドラの「らんまん」を見ています。 先日の放送で研究倫理についてちょっと気になることがあったので書いてみました。ちなみにこの記事は7月28日時点での展開をもとに8月2日の夜に書きました。それでも一部7月31日〜8月2日の展開も入っています。 何があったのかまずドラマ内の出来事をざっくりと時系列で整理します。 (承前)万太郎は小学校も出てないが,植物の知識の高さや,土佐の標本を自作していたことなどから東大植物学研究室への出入りを田邊教授に許されていた。 万太郎が面白そう