Takahito Sasaki(佐々木孝仁)

インクルーシブ・リーダーシップ駆け出し研究者|立教大学経営学研究科 博士後期課程在籍|…

Takahito Sasaki(佐々木孝仁)

インクルーシブ・リーダーシップ駆け出し研究者|立教大学経営学研究科 博士後期課程在籍|立教大学大学院リーダーシップ開発コース修了|HRD・OD・LD|インクルージョン|DE&I|アウトドア|島旅|サウナ|油そば|マンガ|余白|ロック|湯者|一杯目ビール|シンガポール駐在(過去)

最近の記事

【社会的アイデンティティ】個々に異なる存在と認識されると、心理的安全性が高まり、組織への同一性が高まる(Kim, 2020)

社会的アイデンティティ理論、奥深いです。明示的に書かれてはいませんが、ダイバーシティ&インクルージョンの文脈でも活用できそうなプロセスです。 どんな論文? この論文は、組織のメンバーが個々に異なる存在(個別化)として認識されることで、心理的に安全だと感じやすくなり、その結果、組織に対する一体感(組織同一化)が強まる、というメカニズムを実証した研究に関するものです。 この研究では、66人の一般参加者と176人の従業員を対象にデータを収集し、個別化が心理的安全性を高め、さら

    • 【社会的アイデンティティ】グループに女性や外国人といったマイノリティメンバーが多いと一体感が薄れる?!(Chattopadhyay & Lawrence, 2004)

      今回も社会的アイデンティティに関する文献を紹介します。ダイバーシティと社会的アイデンティティ理論は関連が深いため、学びが多いです。 どんな論文? この論文は、グループ内での「人口統計学的な違い」、つまり性別や国籍などの違いが、メンバーの自己認識にどのように影響を与えるかを研究したものです。 オーストラリアの大学で行われたこの研究では、MBAプログラムの学生が34のグループに分かれてプロジェクトを行い、そのグループ内での性別や国籍の違いが、集団に対するメンバーの認識にどう

      • 【社会的アイデンティティ】集団間の対立(サイロ)を打破するためのグループ認識とは?(Lipponen et al., 2003)

        研究作業に集中しており、発信がご無沙汰になっておりました。少し(本当に少しですが)見通しが立ったので、発信を再開します。今日から「社会的アイデンティティ理論」という、職場に対する帰属やバイアスなどを説明する理論についてみていきます。 どんな論文? この論文は、造船所における下位グループ(下請け企業の従業員)と上位グループ(造船所全体)への同一視(アイデンティフィケーション)が、集団間へのバイアスにどのような影響を与えるかを調査したものです。 下位グループ、つまり「サブグ

        • 【研究手法】仮説の形式とモデル図を体系的に整理している必読の文献!(林・内藤, 2023)

          これほど網羅的に、仮説の形式や型を体系化した資料はあまり見たことがありません。何度か定期的に見返したい文献です。 どんな論文? この論文では、仮説検証型研究におけるパターンを、4つの仮説の形式に分けてそれぞれ解説した展望論文です。 仮説検証型研究とは、ある仮説を立てて、その仮説が正しいかどうかをデータを使って確認する研究方法です。本論文で取り上げている4つの仮説形式は、主効果、調整効果、媒介効果、そして調整媒介効果です。 主効果は、2つの変数の間にどのような関係があるか

        【社会的アイデンティティ】個々に異なる存在と認識されると、心理的安全性が高まり、組織への同一性が高まる(Kim, 2020)

          【インクルーシブ・リーダーシップ】ILとインクルージョンとの関連性を定性的に明らかにしたインドの研究(Kuknor & Bhattacharya 2021)

          久々にインクルーシブ・リーダーシップの文献です。わざわざ、大学の文献複写サービスで取り寄せてまで読みたかった論文。(ただ、WEB上で購入するのをケチっただけです) どんな論文? この論文は、インドの企業における「インクルージョン」と「インクルーシブ・リーダーシップ」(IL)の関連性を、20名に対するインタビューを通じた定性分析によって探究したものです。 本論文でのインクルージョンとは、職場でさまざまな背景を持つ人々が尊重され、平等に参加できる環境を作る、という定義が用い

          【インクルーシブ・リーダーシップ】ILとインクルージョンとの関連性を定性的に明らかにしたインドの研究(Kuknor & Bhattacharya 2021)

          【バウンダリースパニング】組織の垣根を越える行動を阻害する可能性があるのは上司?(Mell et al., 2022)

          組織の垣根を越える行動、というのは、多様な視点や情報、経験を得る上でポジティブなイメージがありますが、上司にとっては不安や脅威と感じる場面もあるようです。 どんな論文? この論文は、従業員が職場の垣根を越える行動(=バウンダリースパニング)と呼ばれる活動をする際に、上司がどう反応するか、その反応にどう対応するかを調べたものです。 バウンダリースパニングとは、従業員が自分のチームや部署を超えて他のグループや外部の専門家に助言を求める行動のことです。 こうした行動は、新しい

          【バウンダリースパニング】組織の垣根を越える行動を阻害する可能性があるのは上司?(Mell et al., 2022)

          【ダイバーシティ】職場の変化や多様化で求められるようになった「異質性をもとにしたチームワーク」のポイント(太田, 2020)

          職場の変化や多様化によって、求められるチームワークが変わってきているようです。ダイバーシティが進む中でのチームワークについて書かれた文献です。 どんな論文? この論文は、日本企業の働き方について、特に「チーム」と「個人」の関係に注目し、「チームワーク」がどのように変わってきたかを示したものです。 昔の日本企業では、同じような考えや価値観を持つメンバーが協力する「同質性を基本にしたチームワーク」が強みとされ、高い生産性や国際競争力をもたらす一因にもなっていました。 ところ

          【ダイバーシティ】職場の変化や多様化で求められるようになった「異質性をもとにしたチームワーク」のポイント(太田, 2020)

          【ダイバーシティ】最近のダイバーシティ研究をレビューし、「そもそも論」の重要性を指摘した文献(谷川, 2021)

          ダイバーシティ研究も随分進んできたような印象ですが、特に、パフォーマンスとの関連にフォーカスした研究レビューを行った文献を見ていきます。 どんな論文? この論文では、職場におけるダイバーシティ(多様性)とパフォーマンス(業績)の関係性について、過去の研究をレビューしたものです。 ダイバーシティは、性別や国籍などの違いを指し、最近では企業のパフォーマンス向上に重要だとされています。 しかし、これまでの研究では、ダイバーシティがパフォーマンスに与える影響について一貫した結果

          【ダイバーシティ】最近のダイバーシティ研究をレビューし、「そもそも論」の重要性を指摘した文献(谷川, 2021)

          【パフォーマンス】研究で使用されるパフォーマンスという抽象的な概念を掘り下げたレビュー論文(Marshall et al., 2024)

          研究上で頻出する用語の一つに「パフォーマンス」という言葉がありますが、わかっているようでわかっていない概念だと感じており、調べていたところよい文献を見つけました。 どんな論文? この論文は、経営学における「パフォーマンス」に関連する、個人レベルおよび企業レベルを扱った239の理論をレビューし、6つのメタ理論(大括りにした理論)的な構成要素に統合したものです。 経営学領域におけるパフォーマンスは、組織や個人がどれだけ成果を上げているかを評価する重要な概念であり、パフォーマ

          【パフォーマンス】研究で使用されるパフォーマンスという抽象的な概念を掘り下げたレビュー論文(Marshall et al., 2024)

          【リーダーシップ】謙虚なリーダーは、メンバーの境界を超える行動を介して創造的成果を高める(Zheng et al., 2024)

          謙虚なリーダーシップ(Humble Leadership)は最近実証研究も増えてきているリーダーシップの1つです。このリーダーシップが、従業員のバウンダリースパニングを促し、その結果として創造的な成果を導く、という文献を紹介します。 どんな論文? この論文は、中国の企業で働く従業員を対象に、謙虚なリーダーシップが従業員の創造的なパフォーマンスにどのように影響するかを調査したものです。 謙虚なリーダーシップとは、自分の限界を認め、部下の強みを評価し、学ぶ姿勢を持つリーダーシ

          【リーダーシップ】謙虚なリーダーは、メンバーの境界を超える行動を介して創造的成果を高める(Zheng et al., 2024)

          【リーダーシップ】グループ内でリーダーシップがどう生じるのか、社会的アイデンティティ理論のレンズで読み解く(Hogg 2001)

          グループの中で、リーダーがどう生まれるのか、リーダーシップがどのように発揮されるのかという点を、社会的アイデンティティ理論というもので説明を試みた文献です。 どんな論文? この論文は、リーダーシップが集団内でどのように生じるかを明らかにするため、社会的アイデンティティ理論とリーダーシップの関連性を説明したものです。 もう少し掘り下げると、社会的アイデンティティ理論にもとづく、「社会的カテゴリー化」と「非個人化」が、「プロトタイプ」としてのリーダーシップの形成にどのように

          【リーダーシップ】グループ内でリーダーシップがどう生じるのか、社会的アイデンティティ理論のレンズで読み解く(Hogg 2001)

          【バウンダリースパニング】組織におけるサイロに関する研究をレビューした文献(Bento et al.,2020)

          今回は、久々にバウンダリー系の文献です。縦割り、セクショナリズムという組織上の問題が「サイロ化」と呼ばれることがありますが、この「サイロ」を改めてレビューしたものです。 どんな論文? この論文は、「サイロ」と呼ばれる組織内の障壁が、内部協力を妨げ、組織の目標達成にどう影響するかを調査した、いわゆるレビュー論文です。 サイロとは、部門や専門分野ごとに分断され、情報や協力が不足する状態を指します。論文では、サイロの定義や概念、研究方法がさまざまであることが示され、サイロが異

          【バウンダリースパニング】組織におけるサイロに関する研究をレビューした文献(Bento et al.,2020)

          【リーダーシップ】不確実な時代には独裁的なリーダーに頼りたくなるメカニズムとは?(Hogg, 2033)

          今回は、不確実な世界で起こるアイデンティティの危機と、グループとの同一視を求める心情や、関連する(危険ともいえる)リーダーシップの関連性を説いた論文を紹介します。 どんな論文? この論文は、「自己不確実性」が、人々の行動やグループへの同一視にどのように影響を与えるかを探求したものです。 自己不確実性とは、自分が誰であり、社会や人間関係にどのように適合しているかについての不安感を指します。 この不安感を解消するために、人々はしばしば、明確で強いアイデンティティを持つグルー

          【リーダーシップ】不確実な時代には独裁的なリーダーに頼りたくなるメカニズムとは?(Hogg, 2033)

          【ダイバーシティ】ダイバーシティ研究を概観し、潮流を知るための良文献!(内藤, 2024)

          ダイバーシティ・マネジメントを知る上での必読書!とも言える文献と出会いましたので、紹介させていただきます。 どんな論文? この文献は、ダイバーシティ・マネジメント(多様性管理)に関する研究を概観すると共に、どう進化・変化してきたか、そして現在の潮流は何かをまとめたものです。特に、理論や属性の面に焦点を当てています。 ダイバーシティ・マネジメントとは、企業が多様な人材を取り入れ、その違いを活かして組織の成果を向上させるマネジメント手法であり、1980年代から研究が進められ

          【ダイバーシティ】ダイバーシティ研究を概観し、潮流を知るための良文献!(内藤, 2024)

          【心理的安全性】第一人者であるEdmondson教授による最新のレビュー(Edmondson & Bransby 2023)

          今回は、インクルーシブ・リーダーシップとも関連性の深い心理的安全性に関する最新のレビュー論文を紹介します。 どんな論文? この論文は、心理的安全性に関する過去10年間の研究をレビューし、どのような概念と関連しているか、その特徴やリサーチギャップを明らかにするとともに、今後の方向性をまとめたレビュー論文です。 心理的安全性とは、職場で自分の考えや意見を自由に言える環境を意味し、ミスを恐れずに質問したり、提案したりできる雰囲気を作ることが重要、と著者であるEdmondson

          【心理的安全性】第一人者であるEdmondson教授による最新のレビュー(Edmondson & Bransby 2023)

          【ダイバーシティ】多様性を活かせるチームのあり方やメンバーの特性とは?(Homan et al., 2008)

          久々にダイバーシティ関連の論文です。多様性によって構成されるチーム状況を分類し、その状況と、メンバーのパーソナリティやパフォーマンスの関連性を調べた、とても面白い論文です。 どんな論文? この研究は、多様性の状況を3つに分類し、その状況とパフォーマンスの関連性や報酬、構成員のパーソナリティの及ぼす影響を実験研究によって示したものです。 (実験研究は、先日投稿したものと同様のシミュレーションゲームをチームで行い、その成果や影響要因をアンケート調査で確認する内容です。) 研

          【ダイバーシティ】多様性を活かせるチームのあり方やメンバーの特性とは?(Homan et al., 2008)