田中侑李

田舎暮らしの理系大学生|大規模言語モデルについて研究|人間とAIの違いについて考えています

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    生成AIに関する記事のまとめです

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大学生がゼロ秒思考を3年間続けて感じた「頭の回転が早くなる」以外の3つの効果

ここ最近バズっていた伊藤 翼さんの「ゼロ秒思考を1年続けてみた話」というnoteを読みました。 私自身も大学生活初期から3年間ゼロ秒思考を続けていて、その効果を実感している一人であり、伊藤さんのお話には共感しっぱなしでした。 一方で私は、「ゼロ秒思考を3年間続けた結果、単に頭の回転が早くなる以外にも多くの効果を得ることができた」と確信しています。 というわけで今回は、私が3年間ゼロ秒思考を続けて感じた「頭の回転が早くなる」以外の3つの効果について解説したいと思います。

    • 人間とは物語る動物="Homo narrans"である。[AI narrans❶]

      前回の記事でお話しした通り、今回から私がIEEE BigData 2024で発表する論文の内容について発信していこうと思います。 前回の記事をまだご覧になっていない方はこちらから。 今回は私の研究の根幹となるhomo narransという言葉の起源、そしてそこから私が提唱するAI narransの概要について解説したいと思います。 人類の定義の歴史皆さんは、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)という言葉をご存知でしょうか? 誰もが人生で一回は耳にしたことがある

      • IEEE BigData 2024に採択されました!

        研究の方が忙しく、約1ヶ月の間投稿をお休みしていました。皆さんはどんな10月を過ごされたでしょうか。 そんなこんなでドタバタしていたのですが、先日研究成果として投稿した論文が、メジャーな国際会議であるIEEE BigData 2024に採択されました。 ということで、これまでの研究の振り返りをかねて久しぶりにnoteを書いていきたいと思います。 IEEE BigData 2024とは?IEEE BigDataとは、ビッグデータ・分析アルゴリズム・機械学習や人工知能(AI

        • なぜ、生成AIに物語を書かせてはいけないのか

          生成AIの進歩が著しい現代において、画像や動画はもちろん、cmや広告すらもAIを使って生成する事例が出てきています。 こうした流れを受けて、「小説やドラマの脚本などの創作に生成AIを活用したい!」と考えている人はたくさんいるのではないでしょうか。 一方で、大学で生成AIと物語論を研究している私個人としては 「現時点では、生成AIに物語を創作させるには懸念点が多く、危険である」 という意見を持っています。 そこで今回は最新論文の内容を踏まえつつ、物語の創作に生成AIを

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          西洋絵画におけるアトリビュート(attribute)とChatGPTの関連性

          先日小説を読んでいたら、ふとアトリビュート(attribute)という単語が出てきました。 どうやらアトリビュートというのは西洋絵画で使われる用語であるらしく、調べていくうちに興味深いと思うと同時に、「ChatGPTにも関連する概念なのでは?」という疑問も浮かびました。 そこで今回は、西洋絵画におけるアトリビュート(attribute)について解説し、実験を通して「ChatGPTとアトリビュートの関連性」について考察したいと思います。 アトリビュート(attribute

          西洋絵画におけるアトリビュート(attribute)とChatGPTの関連性

          ブルデュー社会学における「美的性向」はChatGPTで再現可能か

          前回、フランスの社会学者ピエール・ブルデューの社会学について紹介し、ChatGPTとの関連性について考察しました。 今回は、このブルデュー社会学における「文化資本」と「美的性向」についてさらに深掘りしつつ、ChatGPTによって「美的性向と階級の相関関係」が再現可能か?という議題について考察していきたいと思います。 ブルデュー社会学と文化資本前回の記事のおさらいとして、ブルデュー社会学では 「私たちの日常的な文化的行為、すなわち趣味は、学歴と出身階層によって規定されている

          ブルデュー社会学における「美的性向」はChatGPTで再現可能か

          ChatGPTはグローバルリサーチの代替案になり得るか

          先日読んでいた雑誌『広告』のnoteに、興味深いやり取りがありました。 それは、グローバルリサーチの限界について言及した以下の会話です。 上記の会話から、現代ではインターネットが普及し様々な国の人といつでも繋がれるようになった一方で、世界中の人に調査を行うこと(=グローバルリサーチ)が困難であることが分かります。 一方で近年、下の投稿のように「費用がボトルネックである調査データの取得をChatGPTで代用できないか?」という試みも見られつつあります。 今回はこうした背

          ChatGPTはグローバルリサーチの代替案になり得るか

          ChatGPT同士の議論に集団浅慮(Group Think)は起こりうるのか

          数ヶ月前、ソフトバンクグループの孫正義さんが登壇した場で「毎日ChatGPTと議論を重ねている」と発言し、大きな話題を呼びました。 こうした件もあり、今ではChatGPT同士の議論をアイデア出しに活用しているビジネスパーソンもかなり増えているのではないでしょうか。 こうした変化は好ましい一方で、私は以前から「ChatGPT同士での議論には、人間同様に集団浅慮の危険性があるのではないか」という疑問を持っていました。 そこで今回は、ジャニスが提唱した集団浅慮(Group T

          ChatGPT同士の議論に集団浅慮(Group Think)は起こりうるのか

          ChatGPTとブルデューの社会学についての考察

          私がこれまで学んだ中で興味深いと思った理論に、フランスの社会学者のピエール・ブルデューの社会学があります。 私たちは当たり前に、自分の趣味や嗜好を自分で選んでいると信じていますが、ブルデューは「こうした私たちが当然だと思っていることが、実は階級などの社会構造に規定され、条件づけられている」と主張しました。 この理論は今では社会学において広く知られている一方で、ChatGPTにも当てはまるのかは未だに調査されていないのもまた事実です。 そこで今回は、このブルデューの社会学

          ChatGPTとブルデューの社会学についての考察

          人間とChatGPTで「蝶」と「蛾」を表す言葉の概念が違う?

          以前、ChatGPTとソシュールの構造言語学の「シニフィアン」と「シニフィエ」に関する記事を書きました。 その内容を簡単におさらいすると 物事を表す言葉(シニフィアン)とその言葉を聞いた時にイメージする概念(シニフィエ)は違う ChatGPTはこのことを認識しているのだろうか? ということを、日本語のネズミと英語のratとmouseを用いて実験したのが前回までの流れになります。 今回は、日本語の蝶と蛾の両方の概念を表すフランス語の「Papillon」とドイツ語の「S

          人間とChatGPTで「蝶」と「蛾」を表す言葉の概念が違う?

          ChatGPTとはじめる「人類滅亡会議」

          私の好きな作品の一つに、品田遊さんが書かれた「正しい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語」があります。 この作品を簡単に説明すると、全能の魔王が現れ、10人の人間に人類を滅ぼすか否かを話し合う「人類滅亡会議」をさせる、という物語です。 今回は「ChatGPTでこの人類滅亡会議をシミュレーションさせたらどうなるのか?」という実験を行なってみたいと思います。 「人類滅亡会議」とは?物語の序章で、人類を滅亡させるために誕生した魔王は「なぜ自分はそんな使命を背負っているのだ?」

          ChatGPTとはじめる「人類滅亡会議」

          ChatGPTに環世界の概念は存在するか

          先日、興味深いニュースが目に入ってきました。 それによると、AIの研究の進歩が著しい現代においてユクスキュルが提唱した環世界の概念が再注目されている、というのです。 今回はこうした背景から、現代における「ChatGPT」と「環世界」の関係性について、私なりの視点から考察していきたいと思います。 環世界(Umwelt)とはそもそも環世界(Umwelt)とは何かというと、ドイツの生物学者であり哲学者でもあるユクスキュルが提唱した概念であり、簡単にいうと「それぞれの生物が行動す

          ChatGPTに環世界の概念は存在するか

          日本のChatGPT利用率の現状と今の私にできること

          NTTドコモ モバイル研究所が2024年6月に実施した調査より、日本人の ChatGPTの利用率がわずか15%であるという結果が公表されました。 今回はこの結果から言える「日本のChatGPT利用率の現状」と「それを踏まえて今の私にできること」について書いていきたいと思います。 日本のChatGPT利用率の現状そもそも、現在日本ではどれだけの人がChatGPTを認知し、日常的に利用しているのでしょうか。 GjK Japanが2023年12月におこなった調査によると、日本

          日本のChatGPT利用率の現状と今の私にできること

          【1週間で6000ビュー】近況報告と今後の方針

          今日でnoteを始めて1週間が経ちましたので、現状の報告と今後の自分の方針について、自戒も兼ねて文章に残しておこうかなと思います。 1週間の近況報告7月25日にnoteを始めて1週間後のビュー数とスキ数はこんな感じです。 通常がどのくらいかわかりませんが、X等による宣伝もないぽっと出のアカウントにしては、かなりの方に読んでいただいたのではないのでしょうか。 強いて言えばビュー数に比べてスキの数が少ない傾向がありますが、私はnoteを始める段階でスキという指標に拘らないこ

          【1週間で6000ビュー】近況報告と今後の方針

          ChatGPTはソシュールの構造言語学を内包しているのか

          今回は、ChatGPTとソシュールの構造言語学をテーマに考察していきたいと思います。 ソシュールについてフェルディナン・ド・ソシュール(1857-1913)はスイスの言語哲学者であり、「近代言語哲学の父」と言われる人物です。 ソシュールはスイスの名門に生まれ、幼少期からドイツ語・英語・ラテン語ギリシア語を習得し、言語学の研究にのめり込んでいきました。 ソシュール言語学の最も特筆すべき点は、モノの体系と言語の体系が言語圏によって異なることを証明する理論を立てた点ではないで

          ChatGPTはソシュールの構造言語学を内包しているのか

          成瀬あかりは令和版ルフィである

          「あなたが今年ハマった小説はなんですか?」と聞かれれば、私はノータイムで『成瀬は天下を取りにいく』と答えます。 『成瀬は天下を取りにいく』について 『成瀬は天下を取りにいく』は、2023年3月に出版された宮島未奈さんのデビュー作であり、2024年本屋大賞を含め15冠もの賞を受賞した今年の顔とも言える作品です。 本作は主人公である成瀬あかりと、親友である島崎を中心とした周りの人物が、滋賀県大津市で繰り広げる日常を描いた作品であり、2024年1月には続編の『成瀬は信じた道をい

          成瀬あかりは令和版ルフィである