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【中二病】世の中は理不尽だ。平凡な奴らがのさばる中で、”特別な私の美しい世界”を守る生き方:『オーダーメイド殺人クラブ』(辻村深月)
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なぜ放っておいてくれないのか?
アンに対する共感
この物語の主人公は、小林アンという中学生2年生です。そして私は、彼女にもの凄く共感できてしまいました。教室の中でアンが感じること、アンが生きる上で大切にしていること、アンが世の中に対して抱く絶望。こういうものが、私には手に取るように理解できてしまうような気がしました。
この教室の中で、無難な借り物ではない言葉を話せるのは、私の他には、多分あいつだけだ。
特に学生時代、私もよくこういう感覚を抱いていました。クラスメートが話している内容が、私にはどうにもレベルが低いものに感じられていた記憶があります。その話の何が面白いのか、それのどこが泣けるのか、そういうことが私には上手く理解できないまま会話に参加していた、と振り返ってみて感じます。
私はなんとなく、「みんなと合わせられないのは自分が悪いんだ」と感じていましたが、アンは違います。アンは、自分の価値観を理解できない人間を「センスがない」と言い切り、自分の周りには「平凡な人間」しかいないと嘆くのです。
イタいですね。
ただ私も、アンと同じ側にいる可能性は充分にあったし、「私が良いと感じるもの」が世間的にあまり認められていないと感じる時、「この良さに気づかないなんてセンスがない」とまったく思わないと言えば嘘になります。
私の周りのセンスのない人たちは、私がいいと思うものをそろって同じ言葉で「怖い」と形容する。
アンほどの強烈さは私の中にはありませんが、それでも、安全な場所に立ってアンのイタさを笑うことはできない、とも思います。
生きる上でアンが大事にしていること
アンは、学校でも家庭でも、表向きそれなりに「普通」の振る舞いをします。感覚の合わない「平凡な人間」を見下しながらも、その思いを表に出すことはありません。
なぜなら、アンにとって何よりも大事なことは、自分が美しいと感じる世界を守ることだからです。
例えばアンは、少年少女たちが起こした事件の記事をスクラップしています。そしてそういう記事を眺めながら、彼らを羨ましく感じてしまうのです。平凡な人生を平凡に終わらせるよりも、たった一つしかない命を有効に使って、これ以上ない注目を集める人生にアンは惹かれてしまいます。
アンにとっては、一片の疑いもなく、そういう世界の方が”美しい”と感じられます。もちろんこんな考えは、なかなか他人とは共有できません。そしてアンは、他人と理解し合うことよりも、自分が美しいと感じる世界をどうにかして守ることに心血を注ぐことになります。
アンにとって許せないのは、「自分には理解できないものを壊そうとする者たち」です。
他人の趣味趣向を理解できなくてもいい、ただ、邪魔する権利もないはずだ。アンはそう考えます。アンが美しいと思うものを「怖い」と感じるのは自由です。そこで留まってくれればいいのに、「普通」の範疇に収まらないものを排除しようとする動きがどうしても出てきてしまいます。
アンは、自分の世界を保持するためなら、多少のことなら我慢するつもりでいます。他人には理解してもらえない世界を維持していくためには、それなりの代償を払う必要があると、渋々認めているのです。
これ以降は、ブログ「ルシルナ」でご覧いただけます
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