子供のためのルーブル美術館(119)ひらめく。/今年流行りのサンダル・プッサン
ひらめきはどこから
手にペンを持ち、叙事詩人は空を見上げました。
むかしむかしの英雄の詩を書きたいのです。
「もっと強くて激しい英雄たち。そして美しいギリシアの黄金の枝…」
すると、どうでしょう。
神話に出てくる人たちが、すぐそこに見えた気がしました。
ひとりは月桂樹の葉っぱのかんむりに竪琴をひざに置くアポロン、もうひとりは、金色の王冠をつけて笛を持つミューズです。
詩人の耳には、その笛の音が確かに聞こえたのです。
突然。
竪琴を持っていたアポロンの手が、詩人の紙を指差しました。
ああ!
詩人は勢いよく書き始めました。
突然のひらめきはもう次から次へと。
書くお話は絶えることなくあふれ出るのでした。
今から400年前、フランスの画家プッサンは、ローマでこの絵を描きました。
古代世界の風景を美しく描くプッサンは、王様にも気に入られるほどの人気でした。
遠くに見えるラピスラズリの青空に白い雲、そこにいる人々は光り輝いて見えます。
現れた神様たちの服の色は、黄色に、赤、オレンジのドレープ、どれも淡くてやわらかな色です。水色のリボンも!
足もとにある本は、古代の詩人の英雄物語。
叙事詩人は今、この本の続きを書いているのです。
今日はおまけ、お話の続き
竪琴を持っているアポロンと詩人のサンダルを見てみましょう。
なんか、おしゃれじゃない?
アポロンは金色、
詩人はオレンジシルバーのサンダル。
今日はちょっとフランスのお店に行ってみました。
南フランスのお店の今年のサンダルはいかが?
古代のお話の絵に出てきそう。
地中海のエメラルド色の海が見えてきた?
夏は近いですね。
おしまい
Nicolas POUSSIN
L'inspiration du poète Vers 1629
ニコラ・プッサン
詩人の霊感(インスピレーション) 1629
お読みいただきありがとうございました。
プッサンの色の美しさ、光りの扱い、お話の表現の真剣さは格別。さすがフランスを代表する画家なのですが、古代の絵は堅苦しいところがありますから、やはり印象派の絵の人気まではいきません。こちらをご覧になっていただいている皆様には、プッサンの絵を少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
神話の人物表現などは簡単にしていますので詳しくは上記説明をご覧ください。ぷくぷくの天使がなぜ月桂冠を携えているのかにも意味があるようです。