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子供のためのオルセー美術館(59)ゴッホ・黄色と赤と緑と / 《マティス自由なフォルム展家庭画報web連載記事のご紹介》


ゴッホはパリのイタリアンレストランの女主人おんなしゅじんアゴスティーナをきました。


壁紙かべがみ黄色きいろに、イスのあお
たてにもよこにもふでうごかして
イタリアのおさまみたいないろんな黄色きいろになりました。


はなやかなアゴスティーナのドレスは、ざくざくと元気げんきふでいてあります。
ブラウスのピンクと水色みずいろがきれいじゃない?

これはスカート?もしかしてテーブルクロス?


あかみどり、オレンジにあお
ゴッホはやっぱり、たてたてよこよこ、たてたてよこよこ…と、ながくてふとせんきました。


さあ、今度こんどかお何色なにいろいてあるでしょう?


あか緑色みどりいろ

ゴッホはいました。

おどろくくらい元気げんきいっぱいのひとたちを 
あかみどりで描けるようになるりたいんだ *

あか緑色みどりいろかおは、ゴッホがめざしていた情熱じょうねついろだったのです。


注*« J'ai essayé d'exprimer les terribles passions de l'humanité au moyen du rouge et du vert. », Lettres de Vincent Van Gogh à Théo Van Gogh, des 8 et 9 septembre 1888.


Vincent Van Gogh 1853 -1890
L'Italienne 1887
フィンセント・ファン・ゴッホ
イタリア人 1887

この女性はおそらくアゴスティーナ・セガトーリ(1843-1910)で、コロー、ジェローム、マネのかつてのモデルであり、ゴッホはこの肖像画を描く数カ月前に短い恋愛関係にあったと思われる。
1886年3月から1888年2月までのパリ滞在中、ゴッホは新印象派の科学的な色彩理論を学んだ。ゴッホはまた、日本の版画をこよなく愛しており、ここではこの2つのスタイルを非常に個人的に統合した作品を描いている。
非対称の縁取り、影や遠近法のない肖像画の人物の様式化、モノクロームの背景など、いくつかの要素が日本の版画を彷彿とさせる。しかしゴッホは、東洋の美学の洗練をエネルギッシュな処理で代用し、ほとんど原始的な力強さを印象づけた。
新印象派は補色を並置して知覚を強めた。ここでもゴッホは同じように赤と緑、青とオレンジを組み合わせているが、シニャックやスーラのような点描的タッチは使っていない。モデルは、神経質なクロスハッチングによって表現されている。
その色彩は荒々しく表情豊かで、ゴッホがフォーヴィスムの先駆者であることを示している。赤と緑に支配されたアゴスティーナ・セガトーリの顔は、その1年後に画家がアルルで打ち立てた「赤と緑で人間の恐ろしいまでの情熱を表現できるようになりたい」*というプロジェクトを物語っている。
注*« J'ai essayé d'exprimer les terribles passions de l'humanité au moyen du rouge et du vert. », Lettres de Vincent Van Gogh à Théo Van Gogh, des 8 et 9 septembre 1888.

musée d’orsay 

お読みいただきありがとうございました。
先日のオルセー美術館の展示替えでこの華やかな作品が久しぶりに登場しましたので早速お届けしました。
黄色の背景に上と右片側だけの縁取りが、スーラやシニャックの新印象派を意識した赤と緑の補色の色使いでこの絵に花を添えます。何気ない椅子の背の青も効いています。
この色とりどりの布はスカートでしょうか?(ウイキペディアにはスカートとあります) ですがどうしても、それがテーブルクロスに見えてしまって… はたしてどちらでしょう。

お知らせ

2023オランジュリー美術館マティス企画展から

マティス自由なフォルム展 家庭画報連載記事のご紹介

マティス自由なフォルム展、フランス側のオーガナイズをした当地の親しい同窓友人の連載記事が、家庭画報web 版にて始まりました。
昨年のルーブル展連載に続き、美しい画像と共に、現地で直接取材交渉した本人ならではの興味深いお話が楽しめます。全15話、是非ご覧ください。
(抽選で展覧会チケットが当たるお楽しみもあります。ふるってご応募を!)

「マティス 自由なフォルム」展 国立新美術館 〜2024年5月27日まで。

2023オランジュリー美術館マティス企画展から

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