ハロウィンの名残りに触れて1270日
街の隅に忘れ去られるように置かれていたのは
ハロウィンの名残り
5日前にハロウィンは終わってしまったと言うのに
未だに変わらず絶やさずににっこりと微笑む
かぼちゃたちは何を考えているのだろうか
話しかけても分かるわけもないから
話しかけたりはしない
イベントが過ぎ去れば見向きもしなくなる
人間たちの無情さはクリスマス然りお正月しかり
ハロウィンもまた例に漏れず
秋の気配と混じって寂しい光景が広がる
確かにそこにはまだハロウィンの残骸が
取り残されているのに
歩く人々はそれを見ようともしない
意識の外側に追いやって
せかせかと歩いて行ってしまう
かぼちゃたちは何を思いながら
今を見つめ笑ってるのかな
お菓子が欲しいと歌ってももらえなかった
子どもたちはある日を境に大人になって
足元に転がるかぼちゃを見ては
そんな在りし日の寂しさを思い出すのかな
仮装行列に加われば楽しいのかもしれないけど
集団行動の苦手な僕には勇気が足りず
イタズラをするにも大胆にはなれず
いつだってはみ出しものの臆病な野良猫のように
見つめるばかり
お菓子をもらえる喜びを知らぬまま
かぼちゃとの語らいも知らぬまま
足元に転がるかぼちゃたちは
そんな事とは関係なく
絶やす事なく分け隔てなく
誰彼構わず向ける微笑みの形が嫌いだった
5日前に過ぎたハロウィンの名残りが
秋色に染まる街にそっと小さな影を落としていく
今や誰も見向きもしなくなった
悲しいかぼちゃの微笑みに
僕はどう応えたら良いのか分からない
イタズラでもしてやろうかな
引っ捕まえて投げてやれば
誰かが砕けて割れたかぼちゃを見て
何かを思い動いてくれるかもしれない
が、でもやっぱりそんな度胸もない僕には
なすすべもなく寂しさは寂しいまま
秋の空を吹き抜ける風に身体を冷やさないように
上着のポケットに手を入れて僕は黙って
そこを通り過ぎていく
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