闇に浮かぶシルエット 1239日
闇に浮かぶシルエット
光球を狙う黒い影
振りかざすは二本の鎌
びっくりするほどでかい体
雨上がりの夜にまさかの遭遇
一体どこからやってきたのか
ギョロギョロとその眼に動かしながら
不思議そうに僕の方を見ているが
僕だってカマキリがどこからやってきたのか
気になって仕方ない
自分の車にいつのまにか張り付いているのが
不思議でたまらなかった
理由は知りたいが話しかけるのは怖い
近くに寄ってもっと仔細にその体の作りや動きを
観察したいが恐怖心のが優ってしまっている
好奇心と恐怖心の妥協案が僕の頭の中で
導き出されてポケットから携帯を取り出して
カメラ機能を使って撮影
街灯の明かりがカマキリを不気味に
闇夜に浮かび上がらせているものだから
強烈な印象を醸し出していた
長い手足とその体つき
季節の変わり目
まさかのカマキリとの睨めっこ
雨上がりの雨粒貼り付けた車の屋根にしっかり
その細長い手足を踏ん張らせながら
カマキリはカマキリとしての風貌と
その存在感を主張していた
季節的にメスならば腹が膨らんでいる筈だが
この個体は全体的に細長い
ぱっと見た感じだとオスの様だ
眼をギョロギョロと動かして
時折鎌を構える仕草を見せるから
あちらも何かしら警戒心を張り巡らしてる様子だ
じっと遠目から見ていても埒があかない
何かしらもっと出来る事なら近くで見たい
僕の頭の中で好奇心と恐怖心がせめぎ合い
そのギリギリの距離を見計らい
カマキリに向けてさらにずいっと
携帯を近づけてみた瞬間
カマキリの体がビクッと震えた
突然ばささっと飛び上がったかと思ったら
僕の方に向かってとんできた!!
うわあああああ!?
情けない声を上げる僕
思わずうずくまった僕の頭の上を
恐ろしい羽音が通り過ぎていった
頭のすぐ上を通り過ぎていった時の
カマキリの顔つきはきっと意地悪そうに
にゃっとほくそ笑んでいたに違いない
何せ僕はびびりあがっていたのだから
心臓が止まるかと思った
胸がばくばくと鳴り響いていた
体中がドキドキしていた
振り返れば街灯の明かりに浮かび上がる
不気味な塊がゆらゆらと
暗闇の向こうに消えていくところだった
息も絶え絶え
カマキリが飛ぶだなんて
予想外の行動に思考が停止して現実感がわかず
未だに何が起きたのかよく分からない、、、
分かりたくもない動揺が体中をかけ巡っていた
とりあえず息を整える
すーはー、、、すーはー、、、
突然の遭遇
ゲームやアニメよりも現実は奇なり
予期していない存在との遭遇は
人から正常さを奪う
ましてやそれが自分に向かって飛んできたと
あっては恐怖心しかない
悲鳴も出ると言うもの
カマキリはなぜに僕の車に張り付いていたのか
一体どこから来たのか
闇からの使者はその問いかけには答えずに
再び闇の向こうへとその姿を消していった
カマキリに会うのはしばらくは遠慮したいものだ
怖かったなあ、、
怖かった
まさかなあ
こっちに向かって飛んで来るだなんてなあ、、
予想してなかった、、
あぁ、、怖すぎた