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Photo by
noranekopochi
夜がくる そして歌が聞こえる1244日
夜が来ると歌い出す隣人の倫理的観念には
いつも疑問が生じる
なぜに夜になると歌い出すのか
スズムシやコオロギの性質を併せ持つ
ハイブリッドな生き物なのか
そんな訳はないだろうから
きっと夜になると昂る情念を
叫ばねばならない宿命の星に生まれたのだろう
そんな迷惑な星の下に生まれたのならば
同情するしかない
生き辛そう人生だ
集合住宅向きな人生では無いな
ぜひ郊外の誰にも迷惑をかけないような
スズムシやコオロギたちが
歓迎してくれるような場所に
一戸建ての家でも購入してもらって
そこで思う存分吐き出してもらいたいものだ
連日の様に漏れ聞こえてくる
発情期の虫の様な歌声を午後21時から2時間に
渡って聞かされる理不尽なリサイタルに
心も身体も疲れてきた
別名ジャイアンタイム
のび太くんの気持ちがよく分かる
頭が痛くなる
静かな夜が恋しい
たまにはのんびり本が読みたい
どうして歌わなくてはいけないのか
致命的な感性を分かち合う事は出来ないし
理解も共感もとっくの昔に限界を迎えて
窓の外に放り投げてしまった
我慢して耐える事を美的とする
日本人としてあり続けるか
ありったけの感情でもって
思いの形を言葉としてぶちまけるか
冷静と情熱の間で揺れる僕の葛藤
今宵は一段と感情的にノリに乗って
気持ちよさそうに歌っている
壁から染み出してくる
迷惑な黒い球体状の
音符が部屋のあちこちに飛び交い
ゴロゴロと転がって
もはや足の踏み場もない
静かな夜が恋しい
静かな夜が過ごしたい
僕の思いは未だに叶わない届かない