仔羊と猫と眠れない夜に
迷える仔羊が1匹
頭の中で生まれて繁殖
数えたらキリはないが
眠れるかもしれないと思い
1匹2匹と唱え始めたら
300匹目の仔羊が生まれた段階で
数えるのを止めた
眠れない夜が確定したので窓辺にもたれて
ガラス窓に頬をあてると
ひんやりと気持ちが良かった
夜の空を目を凝らしてみると
足早に流れていく黒い雲のシルエット
時折隙間から顔を覗かせる星屑や球体状のお月様
話しかけるには恥ずかしくて
それは向こうも同じなのか
雲の向こう側にすぐに隠れてしまう
無理に話しかける事もない
適度な距離感を保ってこその
気持ちのよい関係というものもある
ふと何か聞こえた気がして
アパートの下の通りに視線を向けると
暗闇の中で猫が二匹
喧嘩でもしているのだろうか、不穏な唸り声
静かだった夜が一変
浸っていたのも束の間
揺れる闇夜
なんだか落ち着かなくなり
僕は窓辺を離れて再びベッドの中へ
あぁ300匹目まで数えた
仔羊たちは猫たちの唸り声に
びびって1匹もいなくなってしまった
呼んでももうどこに行ってしまったのかも
分からない
穏やかな夜はザワザワに飲み込まれ
ふぅにゃぁおおっと
暗闇の向こうでは未だに終わらない争い事
むしろさっきよりも盛り上がっている
白熱した喧嘩のあれこれ
どちらが勝つにしろ
僕の眠りは訪れない
静かな夜もまだまだ僕のもとには訪れない
焦がれても叶わない独り言
僕は僕のやるべき事に集中した方がよさそうだ
どこかに行ってしまった300匹の仔羊たちを
探す旅にでる為の準備をしようと思う
まずはそうだね
深く息を吸って吐いて寝返り
瞼を閉じるところから始めるとしよう