![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/128594358/rectangle_large_type_2_ba2bb13da114d538fec00dfa742c49a9.png?width=1200)
Photo by
witty_laelia636
変わっていく景色 変わらない思い
埋め立てられる前の景色を
思い出そうと思っても
もう何十年も前の記憶だから
薄靄の向こう
寄せては返す波音が
聞こえてくる
船着場の岸辺を恐る恐る
覗き込む子どもの頃の僕
生き物に対して興味津々な
お年頃だった僕には
船着場の岸辺は
好奇心が満たせる
対象物の宝庫だった
彷徨い泳ぐ小さな魚やカニの
姿を見つけられるだけで
楽しくて仕方なかった
海の匂いや
滑らかに動く波の記憶
野良猫たちは
漁から帰ってきた
漁師たちから分前を
もらったりしていたの
かもしれない
蒲郡の海に溶けた
沢山の人の思い出が
今やなんの変哲もない
砂利と轍の下に
沈められてしまった
観光地として人を呼ぶには
土地の整備は欠かせないのは
致し方ないにしても
やっぱり寂しい気持ちは
拭いきれない
埋め立てられた駐車場に
車を止めた時は
不思議な感覚だった
かつては海だった場所が
こうもいともたやすく
変わり果てて今や
普通に景色の一部に
なってしまってると言う現実
砂利が我が物顔で
足元でふんぞりかえっている
子どもの頃はなんとも
思わなかった変化に
35歳になった僕が
感傷的になってしまってるのは
当たり前だと思ってたものが
当たり前ではなかった事に
ようやく気づけてきた事の証なのかもしれない
船着場の風景は今や曖昧な
記憶の中にしか残ってはいない
いつか本当に忘れてしまうと
思うと切ない気持ちになってしまう
忘れてしまいたくないから
こそ僕は僕なりの言葉で
もってかつての蒲郡の海の
風景を書き残していこうと思う
誰かにとってはつまらなくても
僕にとっては大切な記憶
特別な感情のこもった蒲郡の海を
思い出せる限り書き綴っていく