
Photo by
nishia2222
風の音 夜の獣 1284日
窓がかたかた鳴る
夜闇に染まった黒い獣たちが
しきりに窓ガラスにぶつかってくる
割れてしまわないかと思うほどの衝撃
ガタガタガタガタ
眠れない夜の隅っこで落ち着かない心持ち
早く眠れてしまえたらこんなに不安な気持ちに
包まれなくて済むのだが一度気にしだすと
そればかりに囚われてしまう
僕にとっての厄介な性格
今日はやけに音が気になってしまう
眠りの尻尾も怯えて現れてはくれない
ザワザワ騒がしい夜
季節の変わり目
秋が深まり冬の気配が混じり出した風の音
風が町中に吹き抜けてはあらゆるものに
ぶつかっていく音
車にぶつかり電柱を揺すり木々を擦り
野良猫たちを怯えさせては
眠れない夜を形作っていく
寒々しい唸り声をあげながら駆け抜けていく
夜の獣たちは生き生きと荒ぶって
堂々とした風体で町中を駆け抜けていく
カーテンを開ければそんな狂った黒い獣たちと
目が合うかもしれない
こちらに向かって襲いかかってくるかもしれない
そうなったらと思うと怖くて余計に
布団の中にもぐりこみたくなる
頭まで隠れきってただじっと息を凝らして
夜が過ぎ去るのをひたすら待ち続ける
寒くなればなるほどに黒い獣たちは
夜な夜なその唸り声を高らかにして
穏やかさとは無縁の世界を作り出していく
そうなると必然的に眠れない夜が増えていく
窓がガタガタ鳴る
眠れない夜
獣たちの声が耳をすますと
闇夜の向こうから聞こえてくる