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RIPPLE〔詩〕

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#ポエム

放棄するもの残すもの 【短詩3つ】

放棄するもの残すもの 【短詩3つ】

山茶花の紅色の花弁敷き詰めて
ここが世界の中心となるとき
観る人の脇役の自覚に肩を落とせば
北風は止み 一瞬が額縁に収まる
落ち込む人(訳もなく、由もなく)
何もかも小道具に変えてしまう人が
公園に佇むのはもうやめだ
幻影よ すべてを通り抜けてゆけ
次の花へ 次の花へ 立ち止まらずに

この黒い霧は
誰かの書いた
本の余白に
身を浸し
染み込ませることで
やっと漂白されていく
わたしの歴史を
放棄

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反芻とイマココ 【短詩ふたつと雑記】

反芻とイマココ 【短詩ふたつと雑記】

苛々していた。苛々と怒りとはまったく別のものであるが、この時は曇天の下で混同してしまった。

退廃に堕ちたとき、気分と感情の違いなんぞに何の意味もない。大事なことは旧い脳を発火させられるか否かだ。歌えば許されると思っている。正直、踊れば許されると思っている。

運命的な出来事があった。しかしそこに至るまでに何の論理も因果も見出せなくて、あれも違う、これも違う、それも違う、と否定をしていったら、ああ

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Under a starry night【haiku 4 poems】

Under a starry night【haiku 4 poems】

俳句の英詩化にも挑戦しています。画像は補助的に、AIに作成してもらってます。



静物画の前に置きたる有りの実よ

Oh! a pear, placed in front of a still-life painting appears vividly.



去りし日に未だ傅くよ星月夜

Under a starry night,
I remain faithful to the past

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しなだれそよぐ【短詩よっつ】

しなだれそよぐ【短詩よっつ】

酷暑が続いていましたが、立秋に差し掛かって意識すると秋の気配が感じられるようにもなってきました。
初秋にまつわる短詩(俳句、一〜二行詩)を何編か詠んでみました。

初秋の皮膚と臓腑の温度差は

解説するのも野暮ですが、季節の移り変わりの、外気と内気の不調和のようなものを体感覚で表現してみました。ハ行を多用して、捉え所のなさを演出しています。ため息のような句で、詠むと心が「ホッ」とする感覚が得られま

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街の小詩よっつ

街の小詩よっつ

蜃気楼の街 赤アクリルのカサブランカ



あなたとの日々はアゲハ蝶の伴走でした



降下する鳥の囀り 届きそうで届かない



樹々のもっとも燃ゆるときこそ
涼しく緑を身籠るように
私は私を大切にする
#詩 #ポエム #文学

赤と蒼 【詩】

赤と蒼 【詩】

千里を駆けた脚はどこへ

体が役目を終えたのだ

もはや草の味も分からぬ

心が役目を終えたのだ

どこまでも伸びゆく山麓の大地

二度と立つことはないだろう

毛並をすり抜けていった風の糸

二度と感じることはない

この背に乗せたのは忠義だった

人に尽くすとはおろかなことよ

誰かに尽くす人だったからこそ

ならば忠の連鎖を断ち切ろう

ああ 死を連れてきてくれたのか

そうだ わたくしが死

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青 【連詩】

青 【連詩】



Rhythm & Blues
深い深い青だ
天上の音楽と逆のベクトル
心の沈んだ先で
芥が煌めく音が聞こえる
それは
錆びたピアノの弦や
ケースの中のテナーサックスの輝き
クラリネット奏者の17年目の結婚指輪



リンドウを生けたコップを前に
すっかり動けなくなってしまった
まるで
「Rで始まる語を挙げなさい
  制限時間内に できるだけ多く」と
誰かに回答を急かされたみたい
戸惑いを

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永遠の鈍色の内 【詩】

永遠の鈍色の内 【詩】

雨だれ 七色
次の粒が落ちるまでの
期待の色と 中間色の もどかしい
望んだものは 手に入らない 当然
意識は 数秒さかのぼって
他の色を欲しがるものだ

雨だれ カスミ草
主役の不在を嘆いた人の
期待の花と 世間知らずの くだらない
確固たるものは 目に映らない 当然
意識は 勝手に先回って
他の花を飾り立てているものだ

倉庫の天井のような空
見上げるのをやめたら
右手に握られていたドライフラ

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靴と声 【詩】

言葉は揃えても
靴は揃えなかった
ひっくり返った片割れ
あさっての方を向いた片割れ
ねじれる ねじれたままにする
その選択が
旅をするかしないかの臨界点になる

「空の高さを知るには
 分度器と赤い風船が必要です」
  とかいう 思い込みの定理

アン・オー 腕を上に
心を楕円に保ったままで
広がった 澄み切った 己の内で踊れ
巨人の創生とか 神体の宇宙とか
遺伝子の綻びより生まれし妄想は
なぜだ

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膨れる 薄まる 【詩】

膨れる 薄まる 【詩】

青空に見限られた心は
まだオレンジの香り
消えないように薫き染めた
A6用紙の世界に栞

行間から洩れ入る光の
かすかな熱で
蒸発させた情念を
多動症として生みなおす

ロッカーはリミッターを外せと歌った
詩人は超感覚の世界を勝手に覗いた

凡庸な病人のわたくしは
比較的調子の良かった数日を
一生にまで延長する

夢を「夢」として見たら終わり

限られていた 何かが 開かれてゆく
かつて 情念だっ

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