膨れる 薄まる 【詩】

青空に見限られた心は
まだオレンジの香り
消えないように薫たき染しめた
A6用紙の世界に栞しおり

行間から洩もれ入る光の
かすかな熱で
蒸発させた情念を
多動症として生みなおす

ロッカーはリミッターを外せと歌った
詩人は超感覚の世界を勝手に覗いた

凡庸な病人のわたくしは
比較的調子の良かった数日を
一生にまで延長する

夢を「夢」として見たら終わり

限られていた　何かが　開かれてゆく
かつて　情念だった雨は
薄まりながら　油膜の輝きを放つ
河口の黄昏たそがれ　平等神話の果て
みな逃げてきた場所で
煌きらめくのだろう

形ないまま去る風か
忘れられながら在る風だ

果てなく　愚かしく
浮かされる　「ここから」

膨れる　微睡まどろむ
軽くなる　「さようなら」

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