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放棄するもの残すもの 【短詩3つ】


山茶花の紅色の花弁敷き詰めて
ここが世界の中心となるとき
観る人の脇役の自覚に肩を落とせば
北風は止み 一瞬が額縁に収まる
落ち込む人(訳もなく、由もなく)
何もかも小道具に変えてしまう人が
公園に佇むのはもうやめだ
幻影よ すべてを通り抜けてゆけ
次の花へ 次の花へ 立ち止まらずに



この黒い霧は
誰かの書いた
本の余白に
身を浸し
染み込ませることで
やっと漂白されていく
わたしの歴史を
放棄する法悦を
光芒を
手繰り寄せる糸として



洗濯物をたたんでいるときだけ
ふだん閉じ込めていた言葉が溢れ出る
人には到底言えないような
哀しくも悍ましい
雑事と雑念とに覆い隠されたものたち

シャツの角も左右もぴったり合わない
正しくたたんでしまったら
その言葉を押し込めてしまいそうで
明日へとやり残したことを残すように
残すように



#詩 #ポエム

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