Fluctuat nec mergitur.
フランス・パリの街の紋章に刻まれている言葉だ。日本語では「たゆたえども沈まず」と訳される。強い風が吹いても揺れるだけで沈むことはない、という意味だ。もともとパリの船乗りたちが使った言葉だったそうだが、歴史を重ねるなかで戦乱や革命を生き抜いたパリ市民を象徴する言葉へと育っていった。
新進気鋭の作家・額賀澪さんが上梓した『拝啓、本が売れません』は、嵐の中にある出版業界で、作家として本を売るための解を探し求め取材を重ねたノンフィクシ
Based on a true story.
事実をもとに作られた映画作品の冒頭でよく目にする言葉だ。今から観るものはフィクションとわかっていながらも、この一文を見ると背筋をピンと張ってしまうところがゲンキンな性分である。
事実に基づく物語を、どう表現するのか。限りなくエンターテイメントへ寄せるものもあれば、忠実に事実を辿ろうとするものもある。ただ、商業映画で事実を再現するにも限度がある。再現ビデオのような筋立てを見せられてもつまらない。映画『15時17分、パリ行き』は現