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人類学から先住民の民芸品店オープンへ
ボルネオ島の民芸品店を営んでおります「ラヤンラヤン」と申します。大学院でボルネオの先住民の研究をしていたこともあり、「先住民の伝統文化を守り伝えたい」という想いから2021年11月にオンラインショップをオープンさせていただきました。
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ボルネオ島といっても、島の中には3つの国――マレーシア領、ブルネイダルサラーム国、インドネシア領(カリマンタン)があります。私がお店で扱っているのはマレーシア領のサバ(Sabah)という地域に暮らす先住民の作る民芸品です。
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ボルネオ島の先住民は、昔から天然素材を使用したかごや傘、楽器など、そして装飾品や銅鑼などの手工芸品を作ってきました。
私はかつて大学院の修士課程で社会人類学を専攻し、サバに暮らす先住民ドゥスン人(Dusun)の研究をしていました。先住民の村で長期暮らし、指導教官に付いて各地の村々を巡る中で、伝統技術を受け継ぐ人が減ってきている村を目の当たりにしました。
元々、先住民や農村地に関わる活動ができないかと考えており、生活にとけこんだ手工芸は先住民の文化を象徴しており、後世に伝えていくことが先住民のアイデンティティを守ることにも繋がるのではないかと考え、卒業後にお店を開かせていただくに至りました。
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現在お店では、サバの北部に暮らす先住民ルングス人(Rungus)の民芸品である「リナゴ(rinago)」と呼ばれるかごと、「マニック(manik)」と呼ばれるビーズネックレスを扱っております。
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ルングス人の言葉で「リナゴ」と呼ばれるかご。籐(ラタン)とシダ植物の茎の表皮を編んだかごです。ラタンを軸に細いシダの紐を一つ一つ丁寧にきつく編んでいるためとても丈夫なかごが出来上がります。
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リナゴには主に3つの形があります。丸みを帯びた蓋付きの形――「トゥバウ(tubau)」、平たい円形の「ティノンポック(tinompok)」、楕円形の「サラパ(salapa)」です。
職人さん方は、これらのリナゴの伝統を踏襲しつつもモチーフやビーズを加えたり、新たなデザインを生み出し続けています。進化し続けるリナゴの可能性を感じたことも、民芸品店をオープンするきっかけになった一つの理由です。
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ルングス人の伝統衣装の特徴の一つに肩から腰にクロスしたビーズの装飾品があります。ルングスの言葉で「ピナコル(pinakol)」と呼ばれています。
伝統モチーフと幾何学模様があしらわれたピナコルは、先祖の魂が宿るスピリチュアルなものとして信じられており、ルングス人コミュニティの中で先祖代々母から娘に受け継がれる貴重な遺産とされてきました。
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これをアレンジし、様々な長さや幅、色で作られた「マニック(manik)」と呼ばれるビーズアクセサリーを当店では扱っております。伝統のモチーフを残したまま普段のファッションにも合わせられようなデザインとなっております。
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無地のトップスに合わせるだけでアクセントになります。首元にデザインがあるタイプのネックレスは、「スカーフを巻いているようだ」というお声もいただきました。
ボルネオ島で受け継がれてきたこれらの伝統技術。熱帯の地で一つ一つ丁寧に作られた温かみを感じる民芸品です。この活動が少しでも「ボルネオ島先住民の伝統文化を守ること」また「日本の暮らしに温かみをもたらすこと」に繋がればと思います。