短編小説 『母の味噌汁のレシピ』
なぜこの味噌汁を飲むと、涙が止まらないのだろう。
母が死んだ。
連絡を受けた時にはすでに末期の大腸ガンとのことだった。
毎年健康診断は受けていたはずなのに、なぜ、という気持ちは拭えなかったが、誰かを責めている暇もなくその1ヶ月後、母は自宅で静かに息を引き取った。
涙は出なかった。
料理の上手な人で、それが僕の自慢だった。
友達が遊びに来ると、いつもとても褒められる。
そんなことないわ、褒められちゃっておばちゃん嬉しいわ、と顔を赤らめる母を見ながら胸を張るのが僕の仕事