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古文と闘いながらも、タイムトラベルしてきた話

相変わらず、古文との闘いを繰り広げている私。

今は、宇治拾遺物語の『児のそら寝(ちごのそらね)』に取り組んでいる。プライベートレッスンを受け持っている中国人女子高生Yさんの中間試験対策のためだ。いよいよ今月末、高校生活初の定期試験がやってくる。

ちょっとドキドキなのだが、とにかく読めることが第一だ考え、音読練習を徹底。そのおかげか、だいぶスラスラ読めてきたYさん。そして、今は内容をチェック。

宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)は、十三世紀初めころまでに書かれた説話集。その数、約二百。笑い話も多く、当時の世相や、人々の生活などが生き生きと描かれている。

その中の一つ、この『児のそら寝』。

舞台は比叡山にある延暦寺。ここに、行儀見習いのために預けられているハイソな家庭出身の少年(児)。
ある暇な夜、僧たちが「ぼたもちでも作ろうか」という話を聞いた児は、ワクワクしながら、寝たふりをして待っていた。そうこうするうちに、できあがったぼたもち。「ぼたもち、できたよ!」と僧の一人が声をかけてくれる。
でも1回で返事をするのは、「待ってました!」とばかりで、ちょっと恥ずかしい。もう一回呼ばれたら、起きようと思った児。そんな中、「よく寝てらっしゃるから、起こさない方がいいわ」となり、児のことはスルー。起きるタイミングをすっかり失ってしまった。
一方、皆はおいしそうに、むしゃむしゃぼたもちを食べている。ああ食べたい、食べたい!ぼたもち!この思いに耐えられなくなった児は、後から「はい」と間の抜けた返事。僧たちの笑い止まらず、大ウケだった。

という内容。私は、この文章を読んで、光景が目の前に浮かんできた。楽しそうに、何か話しながら、ぼたもち作りに精を出す僧たち。コンビニやスーパーで売っているぼたもちではないのだ。手間暇と愛情をこめてつくる、ぼたもち。食べたらきっとおいしいだろうな。素朴な味で、一度食べたら忘れられない。

その横で、たぬき寝入りする児。楽しそうな話や、小豆のいい香りなどがして、鼻腔をくすぐる。でも、「一度は遠慮しなくっちゃ」と子どもなりに、考えたところが、かわいい。

思わぬ展開になってあわてる様子の児と、笑う僧たちのなんとユーモラスなこと!牧歌的で、のどかで平和なひととき。

何百年も前の話なのに、思わず笑い、親しみを感じずにはいられない。これが古文の魅力?古文を読めば、いつでもタイムトラベルできる。それに、今の時代はモノがあふれているけど、この時代にしかないモノも、こんなにたくさんあるのだ!

それにしても。

あ~、私も、ぼたもち食べたい!

でも私なら呼ばれたらすぐに、遠慮なく、ぼたもちをいただきます!(厚顔無恥?)




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京すずらん
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