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掌編小説

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#創作大賞2023

掌編小説 もう森へ帰ろうか

 東京に行けば私の人生の全てが好転すると思っていたけれど、現実は厳しくて、それは田舎者の…

京
1年前
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掌編小説 狭間

 ジョワンジョワンと、セミが鳴く。熱気に蒸された草の匂いはどこか懐かしく、子供の頃に嗅い…

京
1年前
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掌編小説 星屑の足跡

 学校に行かなくなってから、もうすぐ三ヶ月が経とうとしている。人生は良いこともあれば悪い…

京
1年前
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掌編小説 望月くん

 望月くんの作る音楽は、どれも荒削りだった。角の取りきれていない石、とでも言おうか。たど…

京
1年前
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掌編小説 檸檬

 ごつごつとした黄色い表皮に、頬を近づける。ひんやりとしていて、思いの外なめらかに感じる…

京
1年前
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掌編小説 春風

 ここでこうして桜を見るのは、今年で二回目だ。放課後、誰もいない教室で私は窓を開ける。 …

京
1年前
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掌編小説 雨

「みうちゃん」  大好きな人が、私を呼ぶ。私は穏やかな気持ちになり、そっと微笑んだ。  私は、雨の日に生まれた。だから、「みう」と命名された。美しい雨と書いて「美雨」。  子供の頃、雨の日に長靴を履いて出かけるのが楽しみだった。水たまりの水を踏みつけ飛び散る飛沫を見て、妙な達成感を抱いていた記憶がある。  傘に当たる雨粒の音に合わせて、歌ってみたりもした。その時間だけは不協和音が心地よく感じて、雨というのは不思議なものだと幼いながらに感心したものだ。  大人になった今、雨

掌編小説 ユートピア

 ある冬の日、私は会社を休んだ。  精神的に調子が悪かった。知らないうちに、心労が積み重…

京
1年前
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