掌編小説 初恋についての手記
初めて人を好きになった瞬間というのは、うれしいような恥ずかしいような、そんな感情を自覚することすら初めてで、自身の未知なる部分を新たに発見した驚きに頭がくらくらしたものだ。
小学一年生のバレンタインデー、それは私のたった数十年の人生において最も輝かしいときの一つであった。好意を寄せる相手に贈り物をする行為は照れくさくもありつつ、今、相手のはにかんだ表情やら放課後の夕焼け空やらを思い返すと、あの一連の流れは私たち二人で作り上げた大イベントであり、何か儀式的な意義をも感じる