とても短い小説のようなもの

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自由詩 夏 -参-

 草の匂いが立ち込めた   夏休みの通学路はまぶしくて  友達と一緒 心が躍ったのに  あの頃の思い出が淡いのは  太陽光線にかき消されそうになったから

    • 長編小説 雨粒のひかり 【1.モラトリアム】2018年7月

       私は小さい頃から引っ込み思案で、言いたいことがあっても黙り込んでしまうことが多かった。 「ひかりちゃんって、何を考えてるのか分からない」  そう言われても、それが何か? としか思わず、誰かに自分の感情を伝える義務などないと考えていた。  誰かに自分の名前を呼ばれるのも、自己紹介されるのも嫌い。それは自分の存在を否応なく再認識させられるからで、自己嫌悪から逃れるためにこの世から消えていなくなりたいと思い詰めることなど日常茶飯事だった。  5月の終わりに派遣の仕事を始めて、あ

      • 長編小説 雨粒のひかり 【1.モラトリアム】 2018年6月

         2018年6月1日 くもり  今日から量産のライン作業が始まった。パートさんたちと一緒に、部品の検査。  今日も1日、乗り越えることができた。  小林さんからまた連絡があって、まずは週に2回のペースで働くことになった。  2018年6月5日 くもり  今日は同じ派遣社員の関山さんと一緒に、部品の検査。  社員の吉田さんに言われ、途中から1人で検査することになってドキドキした。吉田さん怖そうだから、「1人でできそう?」と聞かれて「無理です」とは言えなかった……。  意外と1

        • 長編小説 雨粒のひかり 【1.モラトリアム】 2018年5月

           2018年5月12日 晴れ 「若宮ひかりさん」と名前を呼ばれて、そんな風に呼ばれるのなんて久しぶりだから、すごくくすぐったくて、ついに社会復帰できるんだって実感が湧いてきた。  就労支援をしているNPO法人に派遣社員の仕事を紹介してもらうことになって、名古屋のカフェで面談。約束の時間より少し早めに行くと、すでに先客と話し込んでいて、私の番になるまで1時間ぐらい待った。  面談といっても、堅苦しいものではなかった。申込み用紙に名前と住所と電話番号、メールアドレスを書いて、既往

        自由詩 夏 -参-

        • 長編小説 雨粒のひかり 【1.モラトリアム】2018年7月

        • 長編小説 雨粒のひかり 【1.モラトリアム】 2018年6月

        • 長編小説 雨粒のひかり 【1.モラトリアム】 2018年5月

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        記事

          とりあえずプロローグだけ。完全に見切り発車。漠然としたプロットは描けてるので、しばしお待ちを……。

          とりあえずプロローグだけ。完全に見切り発車。漠然としたプロットは描けてるので、しばしお待ちを……。

          長編小説 雨粒のひかり プロローグ

           私は、雨の日に生まれた。二月の寒々しい空が降らせる雨は、せっかく温まった心を冷やしてしまっただろうか――。

          長編小説 雨粒のひかり プロローグ

          完結できるか分らないですが、長編小説に挑戦してみようと思います。近日公開する予定です。

          完結できるか分らないですが、長編小説に挑戦してみようと思います。近日公開する予定です。

          現代短歌 鳥

          カワセミのコバルトブルーのその背中 私の宝物だよ、きらきら にぎやかなスズメのおしゃべり聴きながら 今日は休日! 二度寝しちゃおう 随分と遠くまで来た 電車から見えた青空 トンビの鳴き声 春の日の遥か上空ヒバリ鳴き 私はゆっくり自転車を漕ぐ 濁声のカラスが「カァ」と鳴いている 私も「カァ」と大きなお返事 初夏の朝「ねぇ見てよ!初めて飛べたよ!」 巣立ったツバメの大きな滑空

          現代短歌 鳥

          現代短歌 神社

          この風は過去と未来の通過点 熱田の杜で木漏れ日揺れる 目が覚めて自分の本音を知ったから 鳥居くぐって決意固める その瞬間、神を感じて畏まり 鈴の音色は余韻を残す

          現代短歌 神社

          自由詩 夏 -弐-

           学校のプールで平泳ぎ   25メートルとちょっと  立ち止まってゴーグルを外すと  雲間から日差し  水があたたかい 十歳の夏

          自由詩 夏 -弐-

          自由詩 夏 -壱-

           シロップが氷を溶かして  カップの底に溜まり  食べかけのかき氷は  きっと暑さに負ける  甘ったるい  甘ったるい

          自由詩 夏 -壱-

          NHK短歌に投稿してみました。それぞれ違うテーマで3首。運良く選ばれたらいいな、ぐらいの気持ちです。

          NHK短歌に投稿してみました。それぞれ違うテーマで3首。運良く選ばれたらいいな、ぐらいの気持ちです。

          現代短歌 ものづくり

          手先から伝わる感覚確かめて 「これが私の天職だから」と プライドを心に秘めて黙々と 作り上げてくこの曲線美 上司から軽んじられて悔しくて いつか見返すその日は明日 冴え返り生きざま見せろ、ものづくり そして細部に神が宿った

          現代短歌 ものづくり

          現代短歌 雨

          今日だけは雨と一緒に泣きたくて 傘を差さずに空を見上げる 止みかけの雨粒ぽつぽつぽつぽつと なんとなく想う、一粒足りない 雨の中私の赤い傘だけが今を映した 他はモノクロ

          現代短歌 雨

          中日歌壇に掲載されました

          中日新聞の歌壇に、私の詠んだ短歌が掲載されました。ありがとうございます。 【評】 植物園の華やかな色どりの隅に咲く雑草の花。下句の発見が新鮮である。 おまけ 2首作って応募したので、もう1首はボツです。

          中日歌壇に掲載されました

          現代短歌 最後の日

          手紙書いたのはいいけど照れくさく やっぱり渡すのやめるか、なんてね 最後の日「お礼の手紙を書きました」 黄色い封筒に纏う思い出 驚いた顔がほころび瞳が潤み 「泣いちゃうじゃん」と手紙見つめる 「また来いよ!」そう言い私の肩叩き 去る先輩のいつもの背中 先日、退職前の最後の出勤日を迎え、帰り際、お世話になった大先輩にお礼の手紙を渡しました。とても驚いた顔をしていたのが印象的でした。男性ばかりの職場なので、大切な節目に手紙を渡す習慣がないのでしょうか……。今このタイミング

          現代短歌 最後の日