#145 「ビジネス頭の体操」 今週のケーススタディ(12月7日〜12月11日分)
はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。
→部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。
12月7日(月) 感染症でどうなる?航空業界
1992(平成4)年の国際民間航空機関(ICAO)の総会で制定された「国際民間航空デー」です。1944(昭和19)年のこの日、ICAOの設立を定めた「国際民間航空条約」の署名が行われたことに由来しています。
さて、感染症の影響で航空各社の苦境が報道されています。
国土交通省の「航空輸送統計速報」2020年9月分で具体的な数字を見て見ましょう(緑:2018年、オレンジ:2019年、赤:2020年)。
ご覧のように、国内定期旅客輸送量(上グラフ)は、対前年同月比64.0%減、国際旅客輸送量(下グラフ)は同96.7%減と激減です。
路線別でも、利用者の最も多い、東京(羽田)ー新千歳は回復の兆しが見えるものの、やはり対前年同月比6割減となっています。
(他路線のデータもありますのでご興味があれば以下の「航空輸送統計調査」の速報をご参照ください)
現在は特に国際線は壊滅状態とも言えますが、もともとは三菱重工が機体の生産に新規参入しようと目論むぐらいマーケットは順調に拡大していました。
1999年から2019年の20年間の世界の航空旅客輸送の推移がこちらです。
日本の航空会社に限るデータですが、国際線も順調に拡大していました。
一因には、日本への観光が人気となり、来日する観光客が増えたこともあります。
改めて見ると、インバウンドと騒がれるのが良く分かるデータですね。
今後については、例えば、2016年時点では、世界の航空旅客需要は30年後の2036年には2.4倍(年率4.6%の伸び)、貨物で2.2倍(同4.1%)の伸びが予測されていました(出典:一般社団法人 日本航空機開発協会)。
現状を踏まえた予測についてですが、IATA資料によると、2019年レベルまでの回復は2023年とされています。
特に、長期路線での回復には時間を要すること、回復へのカギは航空機利用に対する顧客の信頼回復としています。
→今後航空機を利用することへの不安を解消し、以前の拡大のトレンドを取り戻すことになるのか?ビジネス利用と観光利用があるが、それぞれどのような回復を見せるか?
12月8日(火) 日本初の日刊新聞創刊は東京ではなかった!?
1870(明治3)年のこの日、横浜で日本初の日本語による日刊新聞『横浜毎日新聞』が創刊されました。
当時、新聞はあったものの、いずれも外国人の手によるもので、1865(慶応元)年にそれを翻訳した「海外新聞」が刊行されるまで日本語のものはありませんでした。
「横浜毎日新聞」は当時神奈川県知事だった井関盛良が横浜の貿易商の出資により実現したと言われています。
当時の日本の新聞はいわゆる「かわら版」で、和紙に木版摺りでしたが、「横浜毎日新聞」は洋紙に両面刷、活版で印刷していた点で画期的な新聞でした。
刊行の目的は「新聞紙の専務は、四民中外貿易の基本を立て、皆自商法の活眼を開かしめんが為め本社の因て設けし所也。」とし、世界や国内の動静、物価などを載せ、諸民の智識を啓発することでした(出典:横浜開港資料館HP)。
当時の横浜での貿易の商況が書かれてるため、日本各地で販売されたようで、さまざまな場所で見つかっているそうです。
なお、現在の毎日新聞とは無関係で、1879(明治12)年には買収され東京に移転、経営は振るわず、1909(明治42)年に報知新聞社が買収、1940(昭和15)年には帝都日日新聞に吸収合併されて消滅しました。
→新聞。今では広告費収入も減少傾向だが、マーケティング上盛り返すとしたらどのようなことが考えられるか?
12月9日(水) 障害者雇用を学ぶ
国際障害者年の1981(昭和56)年のこの日に開催された総理府(現内閣府)主催の中心記念事業「広がる希望の集い」で制定された、障害者の日です。1975(昭和50)年のこの日に国連総会で「障害者の権利宣言」が採択されたことに由来しています。
障害者雇用、分かっているようでよく分かっていません。これを機会に色々と調べてみました。
(参考資料:戦後我が国における障害者雇用対策の変遷と特徴)
<歴史(戦後から割当雇用前まで)>
日本の障害者雇用は、戦後、復員してくる軍人や引揚者の中に重度の障害を負った人たちに対するものから始まり、主としては職業指導の実施と雇用する事業主への支援が行われました。
傷痍軍人を戦中から採用していた事業主の代表としては「早川電気分工場」があり、「シャープ特選工業株式会社」の前身です。
その後、1949年12月に身体障害者福祉法が制定されますが、主となったのは、いわゆる手に職をつける職業訓練でした。これは、通常の職業安定行政によって身体障害者の雇用を促進することは困難だったことに加えて、通勤などが困難な障害者のために自営業として営めるものにしようというという意図がありました。
<割当雇用の始まり>
1952年6月の官公庁各省次官会議申し合わせにおいて、公共職業安定所に登録された身体障害者から採用をすること、特に公共職業安定所は職員定員の3%を目標とすること決めました。
このことが日本における割当雇用の最初になります。
なお、当時、労働省が調査を行ったデータによると、官公庁の雇用率は0.69%、民間事業所が0.65%となっています。
<〜現在まで>
その後もさまざまな努力や法整備などにより、障害者雇用は徐々にですが改善しています。昭和52年からの推移を厚生労働省の資料から以下に引用します。
なお、昨年6月1日時点の統計(厚生労働省「令和元年 障害者雇用状況の集計結果」)では、
☑️ 民間企業が法定雇用率2.2%に対して2.11%
☑️ 公的機関が同2.5%に対して国が2.31%、都道府県か2.61%等
となっています。
→「ダイバーシティ」などと言われるが自社の障害者雇用の現状はどうなっているのだろうか?
12月10日(木) 給与支給が口座振込になったきっかけは「三億円事件」!?
1968(昭和43)年のこの日、東京の府中市東芝工場で支給されるボーナスを積んだ乗用車が白バイ警官に扮した犯人に強奪される「三億円事件」が起きました。
三億円事件。これを聞くたびに、「振込じゃなかったの?」と思ったものです。
ところが、給料が口座振込になったきっかけがこの事件と言われていることは今回調べて初めて知りました。
実は、今私たちが当たり前に使っている銀行間の振り込みですが、1973(昭和48)年に「全銀ネット」と呼ばれるシステムが稼働したことによって実現したものです。
今では即座に振り込みできますが、この「全銀ネット」ができる前は、振込の情報を紙で全国27箇所に設けられた「為替交換室」に持ち込んで処理していたのです。人手で仕分けして、です。写真がありましたので載せておきます(出典:一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク「全国銀行データ通信システム」)。
ですから、数百、数千の従業員の口座に同じタイミングで給料を振り込む、というのは現実的ではありませんし、仮にできたとしても、今のようにATMはありませんので(日本で最初のCD(ATMの前身。キャッシュ・ディスペンサーの略)の登場は1971年)、多くの企業が口座に振込したら、現金を下すために銀行の窓口に人が殺到して大混乱になったでしょう。
ですから、確かに「三億円事件」が給料が振込になったきっかけ、かもしれませんが、実際には、「全銀ネット」や「CD」の開発や普及という条件が揃ったことによるもの、というのも付け加えるべき、ということが分かりました。
→銀行は莫大な投資で機械化を進め効率化を進めたが、今やそれが足枷になっている面もある。他業界でもそのようなことはないだろうか?
12月11日(金) 登山ブームは去ったけど、グッズの売り上げは増加している!?
2003(平成15)年の国連総会で制定された、国際山岳デー(国際山の日)です。国際社会が山岳地域の環境保全と持続可能な開発について考える日、とされています。
以前、「山ガール」という言葉が流行った時期がありました。登山がブームだったんですね。
調べてみたところ、確かに登山人口(レジャー白書の調査で年に1回以上するものに登山を挙げた人)は2009年に突然1,000万人を超えますが、以降徐々に減っており、現在では2008年と同レベルの600万人程度になっています。
ところが、アウトドアグッズなどの市場規模は増え続けています。
矢野経済研究所が行っている「アウトドア市場に関する調査」によると、2019年のアウトドア市場は前年比3.2%増の5,169億円となっています。
同研究所では、同市場を以下の4つのカテゴリに区分しています。
☑️ 登山:
「山に登ること」を主たる目的としたレジャーに関る用品・施設・サービス
☑️ ライトアウトドア:
自然環境との関わりを主たる目的としたレジャーに関る用品・施設・サービスで、主にキャンプ、ハイキング、釣り、野外フェス等を指す
☑️ アウトドアスポーツ:
競技スポーツとしてのアウトドア・アクティビティに関る用品・施設・サービスで、主にトレイルランニング、スポーツクライミング等を指す
☑️ ライフスタイル:
アウトドアブランドが販売する、上記分野に含まれない用品で、主に日常生活、ビジネス、トラベル等で用いられるもの全般
この区分で見ると、登山は横ばい、伸びているのはキャンプなどを含む「ライトアウトドア」と、アウトドアブランドの日常品などを含む「ライフスタイル」であることがわかります。
矢野経済研究所では、2020年は感染症の影響で減少するものの、今後数年は堅調な伸びを予想しています。
好調なアウトドア用品市場には他業種から参入の動きもあり、その一つとして「ワークマン」の高機能ウェアの展開強化などを挙げています。
→キャンプブームによるアウトドア市場への異業種からの参入、他にどのような異業種からどのような切り口での参入が考えられるか?
最後までお読み頂きありがとうございました。
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毎週日曜日にこんな投稿をしています。
だいぶ溜まってきました。
よろしければ過去分も覗いてみてください。
トリビアの泉、かもしれません。