#194 「ビジネス頭の体操」 今週のケーススタディ(1月25日〜1月29日分)
はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。
→部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。
1月25日(月) 寒い日に欲しいあの食べ物、7割はコンビニで売れている!?
1902(明治35)年のこの日、北海道旭川市でマイナス41度という日本の気象観測史上最低の気温が記録された、「日本最低気温の日」です。
さて、最低気温。寒いと食べたくなるもの、ということで「中華まんの日」でもあります。
そこで、中華まんについて調べてみました。
実は、中華まん、元々は一部の中華料理店でしか食べれないものでした。それを今のように店頭ですぐ食べられる状態で売るようにしたのは1964(昭和39)年に井村屋さんが始めたことがルーツになっています。
今では当たり前の光景ですが、この背景には非常に面白い「ビジネス頭の体操」がありました。
なぜ井村屋さんが中華まんをスチーマーですぐ食べれる状態で売ろうと思ったのでしょうか?
ヒントは、当時の井村屋さんのメイン商品は「あずきバー」を始めとしたアイスバー(アイスクリーム)だった、ということです。
今と違って、アイスクリームは夏にしか売れない商品でした。
となると、アイスクリームの冷凍ケースは冬場には邪魔になります。アイスクリーム用の流通経路も稼働しません。
これらを活用するために考えたのが、肉まん・あんまんを作って店頭の冷凍ケースで販売する、というものです。
あぁ、なるほど、と思ったかもしれませんが、実はこれは失敗します。
なぜなら、当時、1964年の冷蔵庫の普及率は38.2%です。ということは、買っても家で冷たいまま保管することはできません。
そこで井村屋さんが次に考えたのが、「店頭で温めた状態で売ればいい」ということです。ですから、スチーマーも店頭に置かせてもらい、必要な分だけ冷凍ケースから出してスチーマーで温めて販売する、出来立てのホカホカを食べられる、ということでヒットにつながったのです。
なお、当時はまだコンビニエンスストアはありませんでしたが、コンビニが登場すると、ご想像の通り、親和性が高く、現在では中華まんの流通シェアで7割をコンビニにが占めるようになった、ということです。
中華まん市場の規模は、2014年に580億円だったものが、2017年に670億円、2018年は680億円と成長していましたが、2019年は626億円と減少しました。
これは暖冬の影響と家庭での軽食が冷凍食品のピザなどに流れたと考えられています。
なお、2020年は感染症の影響でコンビニでは販売は減少する一方、巣篭もり消費で冷凍中華まんは増加、となっています。
→中華まん、コンビニ各社で競争が激しい分野である。最近では「手包み製法」と謳う製品があるが、それ以前はどのような製法で量産されていたのだろうか?(注:正解は最後に掲載します)
1月26日(火) 「文化財防衛」に○○○億円!
1949(昭和24)年のこの日、奈良・法隆寺の金堂から出火、貴重な壁画などを焼失した。これをきっかけに、文化財を火災や震災から守る目的として、1955(昭和30)年、文化庁と消防庁が制定した、「文化財防火デー」です。
文化財。「文化財防火デー」のきっかけは法隆寺の金堂の火事となっていますが、実はこの時期に文化財の焼失が相次いだのです。
具体的には、同じ1949年の2月には愛媛県松山城が、6月には北海道の福山城が、翌年2月には千葉県の長楽寺本堂が、7月には京都の金閣寺が、焼失…
これらを契機に文化財保存の世論が高まり、1950(昭和25)年に「文化財保護法」が成立しました。
よく、「国宝」「重要文化財」などという言葉を聞きますが、その根拠法となっているのが「文化財保護法」なのです。
ちなみに、「国宝」は1,125、「重要文化財」は13,331あります(令和3年1月1日現在)。
さて、「文化財防火」という観点で見るとどのような措置がとられているのでしょうか?
実は、そのものズバリ、「文化財防衛のための基盤の整備」予算、と呼ばれているものがあります。しかも、2019年のパリ・ノートルダム大聖堂や沖縄首里城などの文化財における火災が相次いだこともあり、令和3年度予算額は252億円を計上しています。
(出典:文化庁「参考資料」より)
→文化財の保護、国に頼るだけではなく、民間で行うとしたら持続可能性も含めてどのようなことができると考えられるだろうか?
1月27日(水) 国旗に色指定はない!?
1870(明治3)年のこの日、太政官布告により、商船規則で国旗のデザイン規格が示されたことを記念して、国旗協会が制定した、「国旗制定記念日」です。
国旗。日本では「日の丸」や「日章旗」と呼ばれます。
実は、「1870(明治3)年に」、と書きましたが、この時に決めたのはあくまで「商船規則」つまり船に掲げる旗で「国旗」ではありませんでした。
このため「日の丸」は「慣例として」国旗として扱われていましたが、歴史的な経緯もあり、学校の入学式や卒業式での「君が代」「国旗」の取り扱いについて議論になったこともありました。
そういった背景から、1999(平成11)年に「国旗及び国歌に関する法律」で初めて正式に定められました。
この、「国旗及び国歌に関する法律」は第一条と第二条しかないものすごく短い法律です。また、条文に楽譜がある、という変わった法律です。
さて、国旗、いわゆる「色指定」というのが厳密にはされていないものが大半だそうです。
厳密に、というのは、例えば企業ロゴの色指定のようなものです。日本でも先ほどの法律には単に「白色」「紅色」とのみ記載されています。
この、色を決める話として、1964年の東京オリンピックの際の逸話をご紹介します。
オリンピックで使用する国旗は開催国が参加国に生地や色合いなどを確認して作成することになっているそうなのですが、東京オリンピックの際、「日の丸の赤色には定義がない」ことが分かり、当時の担当者がとった行動がまさに「頭の体操」です。
どうやってさまざまある「赤色」から1つに絞り込んだのでしょう?
正解は、
☑️ 口紅を多く製造する資生堂に依頼してさまざまな「紅色」のサンプルを入手
☑️ 一般家庭500軒をまわって国旗を借り受け、使われている紅色の平均値を算出して、「国民が思う日の丸の赤」を調査し特定
というものです。
→過去には国旗を製造する専業のメーカーもあったようだが、今では国旗を一般家庭で掲揚する習慣もなく、売上は激減していると思われる。メーカーはどのような業態に展開して生き残っているだろうか?
1月28日(木) 「ガス」が伸びているあの家電。
「衣類(1)ふんわり(28)」の語呂合わせから、日本電機工業会が制定した「衣類乾燥機の日」です。
衣類乾燥機。市場規模を調べてみて難しいことに気づきました。
というのも、衣類乾燥機には、電気式とガス式があるのです。いわば、違う業界同士で戦っているのです。
ところが、統計というのは、大抵業界団体で作成しますし、小売段階で統計を取るとしても、家電とガス器具とでは販路が異なるため別々になってしまうのです。
ということで、まずは日本電気工業会がまとめている「電気洗濯機(うち洗濯乾燥機)」のデータを見てみました。
最新の2020年11月単月で見ると、8.8万台(前年比127.1%)、153億円(同126.8%)(いずれも出荷ベース)と対前年2割増となっています。
なお、電気洗濯機の出荷台数は36.5万台ですので、乾燥機能付きの割合は24%程度となっています。
ガス衣類乾燥機は、実は統計が見つからないのですが、家庭用のほとんどはリンナイの「乾太くん」という製品とのことですので、リンナイの決算資料から数字を拾ってみました。
残念ながら製品別の売上の開示はないのですが、ガス衣類乾燥機が順調に売り上げを伸ばしていることが分かるデータがありましたので引用します。
このように、もともと好調だったものが、2018年には2割、19年には4割近い伸びを示していることが分かります。
なお、直近の決算資料を見ると、2020年度上半期では3割を超える伸びを示しています。
昨年の伸びについては、感染症による巣ごもり消費と解説されていますが、電気洗濯機(うち洗濯乾燥機)は2020年1月〜11月で見ると、対前年では台数ベースで98.7%、金額ベースで100.3%とほぼ横ばいです。
比較するとガス衣類乾燥機の伸びが乾燥機能付き洗濯機を上回っていることが類推できます。
その理由として、ガスで乾かすことで短時間でふっくら乾く、という特徴の浸透があるようです。
とはいえ、ガス管の設置が必要であったりと購入のハードルはまだ高く、2019年の販売台数は7万台超で、電気洗濯乾燥機が100万台を超えるのと比べると少数派となっています。
→「乾太くん」の発売は1984年。35年も経って売り上げが急激に伸びているのはなぜなのだろう?
1月29日(金) 日本の人口は毎月○万人減っている!?
1872(明治5)年のこの日、明治政府による日本初の全国戸籍調査が行われた、「人口調査記念日」です。
人口調査。毎年、敬老の日前後には平均余命が話題になったり、感染症で婚姻数や出生数が減っていることが話題になっていたりします。
これらの元になっているデータを調査、公表しているのが厚生労働省の「人口動態統計」です。
実は、毎月公表されているデータもあり、最新版は令和2年11月のものです。
分かることは、出生、死亡、婚姻、離婚、です。
これによって、人口の増減も分かります。
では、昨年11月の数字を見てみましょう。
出生数:69,494人
死亡数:118,455人
→人口減:48,961人
婚姻件数:68,565組
離婚件数:15,126組
いかがでしょう?
いかがでしょう?と言われても…という感じですよね。
では、推移をグラフ化したものもありますのでそちらを掲載します。
まず、出生数と死亡数(赤線が令和2年、青線が令和元年)。
次に、婚姻件数と離婚件数(同)。
昨年の5月に急増しているのは「令和婚」ですね。
最後になりますが、人口増減(同)。
目盛がマイナスであること、直近1年間合計での推移であること、をご留意ください。
つまり、年間で50万人程度、日本の人口は減っている、ということです。
日本の人口は将来的には減るんだ、ということは報道などで理解しているつもりでも、こうやって実際の数字で見ると改めて実感しますね。
年間50万人ですから、100年続けば5,000万人。ほぼ人口半減、ということになります。
→人口が減る=市場が縮小する、労働力が減るという文脈以外に何かビジネスに影響はあるだろうか?
さて、最初にご紹介した中華まんの製造方法です。
セブンイレブンのプレスリリースから。
絞り出してたんですね…
個人的にはその発想はなかったのでちょっと驚きました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
1つでも頭の体操になるネタがあれば嬉しいです。
昨年7月から毎週日曜日にこんな投稿をしています。
だいぶ溜まってきました。
よろしければ過去分も覗いてみてください。
「へぇ〜」がいろいろあると思います。