上司のための「質問力」活用〜「営業指導」基礎③〜
大学時代のゼミの同期会で再開した佐藤と高橋。某銀行で支店長を務める佐藤がふとしたことで部下育成について高橋のアドバイスを受けることに。
今回は、前回の宿題だった、営業の各プロセスの定義の件から始まります。
最後までお読みいただけると得られそうな情報は?
✔︎ 人はなぜモノを買うのか?
✔︎ コトラーの購買プロセス
✔︎ 本日の「質問」
1、宿題。
高橋(以下T):おー、お疲れさま。
佐藤(以下S):ほんと疲れた。
T:なんかあった?
S:お前の宿題、なかなか大変だった。
T:いい宿題だったろ?
S:まぁ、ねぇ。
T:さっそく聞かせてよ。
S:その前にさ、この前、スケジューラーで予定確認した3年目渉外くんにさ、中身について聞いてみたんだよね。
T:お、どうだった?
S:こんな感じだった。
T:なるほどねー、ご挨拶に雑談ねぇ。
S:そうなんだよ。そりゃ数多くなるわな。
T:もしかして怒った?
S:怒りそうになったけど、こっちも定義しっかりしてないからぐっと堪えた。それに、あいつが悪いというより、きちんとみんなに定義を与えていなかった俺が悪い。
T:さすが支店長!
S:からかうなよ。
T:ニーズのヒアリングも、使う予定があるかないかだけだな。聞いてるの。
S:そうなんだよ。ニーズ何も聞いてない。
T:すごいな。
S:なにが?
T:いや、これで月8件も成約してるんだ、と思って。
S:金額がちっさいんだよ。
T:でもさ、元本割れるかもしれない商品なんでしょ?
S:売れているのは、満期まで持てば元本は最低保証されている円建の商品だけ。
T:あー。もしかして契約金額ってその商品の最低申し込み金額?
S:その通り。単価低いよ、とは思ってたけど、納得だよ。
T:営業のプロセスをきちんと踏めば単価も上がるよ。で、支店長の宿題は?
S:これ。
T:どれどれ。アプローチは打ち解ける、ね。
S:そう。やっぱり身構えてるからさ。リラックスしてもらわないと。
T:だよね。で、③と④はまとめる、と。
S:そう。分ける必要ないなと。まず、自分の銀行に預けられている資金だけで提案しすぎ。総資産聞かないと正しい提案なんかできないよ。
T:で、困りごと、ニーズを丁寧に伺う、と。
S:そう。この辺の深掘りができてないんだろうなぁ、と。
T:さっきは、使う予定しか聞いてなかったもんな。
S:そう!その上で、商品だろ。
T:んだね。商品説明はメリット、デメリットも説明ね。
S:うん。大体うまい話には裏があると思って聞いているので、きちんとデメリットもお伝えすることで信用してもらえるんだ。
T:そういうのあるよね。で、手続き、と。
S:どおよ?
2、人はなぜモノを買うのか?
T:いいと思う。より良いものにするために、めっちゃ大事なこと言うよ。
S:なに?
人はその商品を理解したから購入するのではない。
その商品が必要だと理解したから購入するのだ。
S:当たり前じゃない?
T:これさ、金融商品のように形のないモノを取り扱う人には特に重要なんだよ。
S:。。。
T:なんでそんな力説するかわからん、という顔だね。よし、こうしたらどう?
人はその商品を理解したから購入するのではない。その商品が(自分や自分の家族にとって)必要だと(その人自身が)理解したから購入するのだ。
S:。。。ますます当たり前になっただけのような。。。
T:では、こっちと比べたら?
人はその商品を理解したから購入するのではない。その商品が(お客様にとって)必要だと(担当の銀行員が)理解したから購入するのだ。
S:いやいや、おかしい。それじゃ買わないよ。
T:そうだよね。でも銀行員がやりがち。まず、前半。一生懸命その商品の仕組み、説明してない?
S:そりゃ、理解してもらわないとだから。
T:うん。で、その商品がどのようにお客様のニーズを満たして、役に立つか、を同じぐらい一生懸命説明してるかな?
S:うーん。。。
T:わかりやすく言うと、電気屋さんがお客様に一生懸命冷蔵庫がなぜ冷えるのか、その仕組みを説明して、お客様がわかった、と言ったら、では、レジへ、というようなことになっていませんか?と。
S:そりゃないでしょ。
T:ほんとに?3年目渉外くんのプロセス見てると、冷蔵庫っていうカテゴリだけ聞いて、あとはなぜ冷えるかを一生懸命説明しているように感じるけど
S:。。。そっかぁ。。。かもなぁ。。。
T:まぁ、試食も試着も試乗もできない金融商品はそこが難しいんだよね。
S:うーん。。。
3、購買意思決定プロセス
T:そういう陥りがちなパターンにはまらないように考えられたのが販売プロセスなんだけど、売る側の目線だけでなくて、買う側の目線でプロセスを整理したものがあるから見てみようか。
S:うん。
T:「購買意思決定プロセス」といって以下の5つのステップがある。ちなみにコトラーの、と付くことが多いんだけど、実は考えたのは彼ではなく、コトラー自身も他の研究者が考案した、と断りを書いてるんだけどね。まぁ、そんなことは置いておいて、
①問題認識:問題やニーズを認識する
②情報探索:問題解決のために情報収集する
③代替品の評価:複数の選択肢を評価する
④購買決定:購買のために最終決定する
⑤購買後の行動:購買決定そのものを評価する
T:わかる?
S:何となく。問題やニーズを認識するところが、営業側で言うとニーズをヒアリングする所になるのかな?
T:その通り。だから、佐藤の書いてくれた定義の、「困りごとやニーズを伺う」というのはまさに、問題やニーズを認識するに当たるね。
S:でもさ、主語は購買者、つまりお客様だよね?銀行員が認識してもダメってこと?
T:そう!その通り!そもそもの話、お客様自身が、自身の抱えている問題やニーズに気づかないと始まらないってことだ。
S:ヤバイな。いつもお客様目線とかみんなに言ってるくせに、全くお客様のこと置いてきぼりだったなぁ。。。
T:気づいてよかったじゃん。
S:まぁ。っていつも前向きだなぁ。
T:過去は変えられない。っと。
S:まぁね。一つ質問。この場合、お客様が自分の問題やニーズを認識してなかったら、いくらこちら側が困りごとやニーズを聞いてもなにも出てこないってことにならない?
T:Good question!そこで重要なのが「質問力」なんだよ。
S:「質問力」?
T:そう。問題やニーズ、には「潜在ニーズ」と「顕在ニーズ」の2つがあるんだ。「顕在ニーズ」は冷蔵庫壊れたから買わなくちゃ!というようなもの。「潜在ニーズ」は例えば、生命保険なんかよく例に出るね。本当はなかったら万一の時家族が困るから必要なはずなんだけど、常日頃は考えていない、つまり潜在化しているニーズ、だね。
S:個人年金なんかもそれ?
T:うん。こういうのが表に出てくるきっかけがあるんだけど、どんなの思いつく?
S:保険なら誰か身近な人が亡くなった時かな。年金は、うちの銀行でもネタに使っているけど、例の老後資金2,000万円問題のような報道、かな?
T:そう。いい例だね。でも、そういうタイミングになるのをじっと待っているのは現実的じゃない。そこで同じ様な効果を発揮するのが、「質問」なんだ。
S:「質問」で?
T:人は何か聞かれたらそれに答えようとして考えるでしょ?質問の内容によっては、それまで考えてなかったけど、考えてみたら、自分の状況を確認してみたくなったり、もっと詳しく知りたくなったりすることがある。「質問」にはそういう力があるんだ。
S:ふーん。
T:あれ?いまいちな反応だね。実は営業プロセスで最も大事なところなんだけどな。
S:そういえば、まだ、営業プロセスの定義、きちんとできてないよ。あれでいいの?
T:そうだね。営業プロセスを最初から説明すると「質問力」の偉大さが佐藤にも理解できるかもね。
S:偉大まで言う?
T:マニアだからさ。あ、でも、結構な字数なので、続きはまた明日。
S:え?
4、今日の質問
強調したい場面の前にわざと質問する「ドラムロール質問」
T:うん。こういうのが表に出てくるきっかけがあるんだけど、どんなの思いつく?
S:保険なら誰か身近な人が亡くなった時かな。年金は、うちの銀行でもネタに使っているけど、例の老後資金2,000万円問題のような報道、かな?
T:そう。いい例だね。でも、そういうタイミングになるのをじっと待っているのは現実的じゃない。そこで同じ様な効果を発揮するのが、「質問」なんだ。
1対1の会話ではあまり必要はありませんが、例えばプレゼンや研修など1対多の場面で有効な質問です。どうしてもこちらから一方的に話す時間が会話よりも長くなりますので、重要で、特に注意をこちらに向けて欲しい時に使える「質問」です。
先生などであれば、「はい、ここ試験でるよ」といえば済むところですが、そうもいかない時に使えます。
「ここが重要です」と乱発するよりちょっと高度な、かつ、一度質問を投げかけてこちらに注意を向け、今の話題について考えてもらうこと成功しているので、効果も高いものが期待できます。
練習しないとできません(経験者談)。
最後までお読みいただきありがとうございました。
お読みいただいたお時間分だけでも参考になることがあれば嬉しいです。
こちらに前2回分や、これを投稿することになった経緯などは以下になります。
ご興味あればご覧ください。他にも上司のための「質問力」に関して投稿していますので宜しければぜひ。
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