上司のための「質問力」活用〜「営業指導」基礎⑥〜
大学時代のゼミの同期会で再開した佐藤と高橋。某銀行で支店長を務める佐藤がふとしたことで部下育成について高橋のアドバイスを受けることに。
今回は、最重要と高橋が言う、「ヒアリング」についてです。
最後までお読みいただけると得られそうな情報は?
✔︎ ヒアリングは二つに分かれる
✔︎ ヒアリング(前半)のポイントとゴールは?
✔︎ 本日の質問
1、ヒアリング(前半)将来に目も向けて頂くには?
高橋(以下T):さて、ヒアリング。営業プロセスの中で最も大事。「質問」大活躍!!
佐藤(以下S):。。。で、前半と後半に分かれてたよね?
T:そう。こんな感じ。
S:前半は情報収集と提案の方向性確認、後半は解決欲求をお持ち頂き、金額を決める、ということ?
T:いや、その通り。もう説明いらないね。
S:いやいや。そのために具体的にどうする、というのは分からん。
T:ではそこを。資産状況を伺うのは今でもやっていると思う。こんなの使ってない?
S:ある〜。これも金融庁HP?
T:そう。ここでのポイントがあるとすると、最初から無理に総資産を訊こうとしても拒絶されるから、こんな方法もある。
・預かり資産はこの図で色分けするとしたらどこか、という聞き方をする
・預かり資産の「もともと」を伺ってから「ゆくゆく」を聞くとスムーズ
S:「もともと」って何?
T:例えば、コツコツ積み立ててきたのか、あるタイミングで、ドン、と入金されてきたのか、で自分のお金なのか、相続資金なのか、などはある程度推測が付けられる。
その推測のもと、「もともとこのご資金は〜?」という感じで質問するんだ。過去のすでに起こったことだし、すでに銀行に預けている資金の話なので、さほど抵抗なく答えてくれるはず。その上で、
・自分でコツコツ貯めてきた資金
→ ゆくゆくはご自身でお使いになるご資金ですか?
・相続資金
→ ゆくゆくはお子様にお遺すご資金ですか?
という質問をすることで、最初からいきなり、「将来お使いになりますか?」「遺されますか?」と聞くよりはるかにきちんとしたお考えを伺える。
S:確かに。
T:どうしてかわかる?
・単に目の前にあるお金について質問されると、あまりその資金に対して考えてはいないタイミングでの質問なのでテキトーな答えを返す。
・過去どうやってその資金が自分のものになったのか、ということを、行員の質問に対して答えるということを通じて思い出してから、使い道を質問されると、きちんとした想いを答える。
S:納得。
T:だから質問が大事なのわかるでしょ?
S:ナットク。でも、次の将来に対してのお考えを伺う、というのはどうやって質問したらいいか分からないなぁ。
T:そうだね。過去のことは起こったことだから質問されてもさほど脳に負担はかからない。でも将来のことはかなり負荷がかかるから難しいんだ。だから、質問だけでは辛いのでビジュアルの助けを借りる。こんなの。
S:おー。なんかうちにも似たようなのあるけど使ってないなぁ。
T:もったいない。これは使い方簡単。まず、縦にお客様、いらっしゃれば配偶者、同じくお子様、孫。そして忘れちゃいけない、ご両親。
S:あー、親のことはあんまり聞かないねぇ。
T:でしょ。でも60代の方でも親がご健在の場合結構あるよ。実はそちらの相続の方が頭悩ましていることもあるので、必ず聞くだけ聞く。これで家族構成全てと年齢もヒアリングできちゃう。
そして、10歳づつ年をとる、と。お孫さんがいる場合はお孫さんのイベントで切ってもいい。
例えば、「18歳、大学行かれるんでしょうかね?どのような道に進んで欲しいですか?」なんて言いながら。そして成人式とか。その時自分は何歳かなぁ、というのが分かるしね。
そうすると、だんだんと将来に目を向けていただけるんだ。単に10の足し算だけして、というのではあまり盛り上がらない。
S:それだ。だから使わなくなっちゃんだ。
T:行員によっては、平均寿命でお客様の欄にバツつけたっていうのがいたって。
S:あちゃー、ありそうだから怖い。
T:あと、富裕層相手の裏技としては、アパート経営とかしているお客様には、その物件の築年数も入れてあげるんだ。
S:面白そう。
T:となると、80歳ぐらいでは物件も老朽化して空室も出てくるかもしれない。その頃自分が死んだら、妻は管理していけるだろうか、とか、こちらが質問しなくても考えるんだよ。
S:結構使えるね。
T:使い方次第。
S:うぅ。
T:で、その上で、「おれ、こんなに生きないよ」とか言われたら、否定しつつ、「奥様お一人になられたら、お子様と一緒に暮らすんですか?」とか「ご自宅はどちらのお子様に?」とか質問を重ねていく。
そうすると、実は長男の嫁と妻が折り合いが悪いので、弟夫婦に面倒みてもらうことになっているので自宅は弟に、とかお伺いできたりするわけ。
となれば、「となると、ご長男には金融資産を、というふうにお考えですか?」とか。どんどん質問を重ねていくことで、お客様自身もどんどん考える。
ここまで来ると、銀行員の方では、この状況でこのお考えなら、こういうふうにした方がいいな、お役に立つな、というのが根拠を持って特定出来てくる。
S:なるほど。自信を持って提案できるね。
T:はい!そこがトラップ。わざわざカッコして書いたように、特定できても言ってはダメ。ぜったい。
S:なんで?
T:この状態はお客様は将来に目を向けていろいろ考えて頂くところまでは来たけど、行員がいきなり、「でしたら、これがいいですよ」と提案してきたら、びっくりするよ。行員はプロだからここまでの情報で提案内容を特定できるけど、お客様は違うから。そこまではまだかなり距離がある。だからダメ。
S:なるほど。で、後半と。なかなか盛り沢山だったなぁ。
T:うん。では一旦ここまでにしようか。
2、今日の質問
将来のことをきちんと考えてもらうための、「過去に戻って勢いをつける」質問
T:その推測のもと、「もともとこのご資金は〜?」という感じで質問するんだ。過去のすでに起こったことだし、すでに銀行に預けている資金の話なので、さほど抵抗なく答えてくれるはず。その上で、
・自分でコツコツ貯めてきた資金
→ ゆくゆくはご自身でお使いになるご資金ですか?
・相続資金
→ ゆくゆくはお子様にお遺すご資金ですか?
という質問をすることで、最初からいきなり、「将来お使いになりますか?」「遺されますか?」と聞くよりはるかにきちんとしたお考えを伺える。
本文中にもありますが、経験していなかったり、常日頃あまり考えないようなことを質問されるのは、脳にきついので、省エネが好きな脳はテキトーに回答することが多いと言われています。それを防ぎ、きちんと考えて頂くためには、一旦答えやすい過去の質問をし、その延長線で考えると、将来を考えて頂く、というふうに質問を組み立てると、脳も考える材料を呼び起こした状態で負荷が軽減され、きちんとした答えを返せるようになります。
脳のクセまで分かった上で質問を組み立てるとその効果がよりアップします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
お読みいただいたお時間分だけでも参考になるところがあれば嬉しいです。
こちらにこれまでの分をまとめましたのでご興味をお持ちいただけたようでしたらぜひご覧ください(ちょっと長いものもありますが)。
また、他にも「上司のための『質問力』」に関して投稿していますので、よろしければそちらもぜひご覧ください。
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