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ショート・ショート

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今まで投稿したショート・ショートを纏めました。2,000文字以下の短い話ですが、「落ち(下げ)」に拘って書いてます。
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2024年5月の記事一覧

【ショート・ショート】夜のバス

【ショート・ショート】夜のバス

 男は、夜のバスに乗り込んだ。この街を出るのに夜行バスを選んだことに、特別な理由などなかった。
 ガラガラの車内、一番後ろの席に座るなり目を閉じた。眠れるはずはなかった。それでも目を瞑ったのは、迷いを断ち切りたかったから。

 この街で過ごした三年間が、ボストンバック一個に詰まっている。あまりにちっぽけで、あまりにも軽い。自分がこの街で生きていたことが嘘のように思える。

 男は歌で世に出たかった

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【ショート・ショート】天秤

【ショート・ショート】天秤

 少し怠くなってきていた。陽子との関係が、である。

「別れましょうか?」
 それは、絶妙のタイミングで、しかも「今日は、とてもいい天気ね」と言うのと同じくらい自然に、陽子の口から発せられた。
「えっ?」
 私は間の抜けた返事をした。

 私は断言する。もし、この日より一日でも前か後だったら、私は二つ返事で「そうだな」と答えていただろう。
 つきあい始めて、二年。陽子は今年で二十八歳。彼女の年齢を

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【ショート・ショート】とかく妻というもの

【ショート・ショート】とかく妻というもの

 その日、私はしこたま呑んだ。
 上司からの急な誘いだった。妻への連絡が気になったが、酔うに連れて忘れてしまった。

 ご機嫌でタクシーを降りた頃には、時計の針は疾うに深夜一時を回っていた。
 高台にある住宅街。辺りはしんと寝静まっている。我が家の明かりもすっかり落ちて、鼻歌と靴音がやけに響く。

 中腰で街灯を頼りにドアの鍵穴をまさぐっていると、居間に続き玄関の灯りが点いた。緩慢な動作で見上げる

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【ショート・ショート】意地っ張り達

【ショート・ショート】意地っ張り達

 日本シリーズ。両チーム三勝三敗で、優勝が掛かった最終戦。セ・リーグはG軍、パ・リーグはF軍。
 九回裏、F軍の攻撃。同点で二死満塁。高橋投手が抑えれば、延長戦。三塁走者が帰ればF軍のサヨナラ勝ち、という絵に描いたような場面。

 カウントは1ボール0ストライク。高橋投手は自信のあるスライダーを打者の膝元に投げ込んだ。橘選手は手を出せずに見送った。
「ボール」
 佐藤主審は右手を横に払う。
 高橋

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【ショート・ショート】腕相撲

【ショート・ショート】腕相撲

 親父が、弟と腕相撲をしている。
 高校一年になって、この頃めっきり体が出来てきた弟に苦戦している様子。
「何だ、だらしねぇなあ」
 俺が挑発すると、
「遊んでいたんだよ」
 親父はムキになる。弟の粘りも、ついにねじ伏せられた。

「次は、お前だ」
 親父が指をポキポキ鳴らす。
「無理すんなって。息、あがってるじゃん」
「いいから来い」
「じゃあ、左でやろう」

「セット」
 弟が、二人の拳を押さ

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