【読書感想文】ただしさに殺されないために~声なき者への社会論~御田寺圭(白饅頭)|⑩人権編vol.2|
「ただしさに殺されないために~声なき者への社会論~」。
私はこちらの本を、著者ご本人から、無料でプレゼントしていただいた。
「ただしさに殺されないために」、略して”ただころ”とは、連日のように事実それ以上陳列いけない罪案件を犯し、さらには白饅頭フォロー罪、白饅頭RT罪、白饅頭購読罪などを犯す罪人を世に放ち続ける、白饅頭尊師の著書である。
本書の帯には、このように書かれている。
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社会を引き裂く事件の背後に何があるのか。
ただしさと承認をめぐる闘争が日常と化したSNS時代に宿る<狂気>を解き明かす。
多様性の名のもとに排除し、自由、平等を謳って差別する
美しい社会の闇の底へー-
言葉を奪われた人びとの声なき叫びを記す30篇
本書は人のやさしさや愛情が社会に落とす暗い影の記録である。
私たちは、自分の中にある「悪」にまるで気づかなくても自覚的にならなくても生きていける。そんな平和で安全で快適な社会で暮らしている。自分たちが狭量で排他的な人間であることから、ずっと目を逸らしていける、配慮のゆきとどいた社会に生きている。
ひとりひとりが抱える心の傷と痛み
だれもが内に宿しているちいさな差別心…
世界が複雑であることへの葛藤を手放し
だれかを裁くわかりやすい物語に吞み込まれた
感情社会を否定する
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まるで、「フェミニスト」や「リベラル」、「人権活動家」などが闊歩かっぽする「インターネット世論」に、中指を立てるかのような紹介文だ。
このような暗黒の書籍を読んでしまって、本当によいのだろうか。
世間の「ただしさ」に迎合してそれらしく振る舞っていた方が、楽に生きられるのではないだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。
しかしだ。
「ただしさ」に迎合したとして、それが本当に世界を明るくするのだろうか。
私の考えは否だ。
よって私は、「ただころ読破罪」へと歩みを進めた 。
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「ただころ」は、序章・終章を含む全7章、30節によって構成されている。
本来であれば全章について詳細に語っていきたいところであるが、有料の書籍であるからそういうわけにもいかない。
そこで、少しだけを抜き出して語っていきたいと思う。
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「人権」とは、「共同幻想」、つまり「概念」なのである。
あなたはこれまで、「人権」の実体を目にしたことがあるだろうか。
いや、そのような人間は存在し得ないはずだ。
「人権」とは、自然発生的にこの地球に誕生したものではなく、ー-人類の歴史で見ればー-ごく最近に、人類が「開発」した「概念」なのである。
そして、その「人権」という概念を保障する組織は、なんと呼ばれているだろうか。
そう、「国家」だ。
この「国家」についても、「『国家』の実体を目にしたことのある人間」は存在しないことだろう。
「国家」とは、その地に生きる人間が合意し、主権、国民、領域という国家の三要素 「国民、領土、政府、そして主権を基に他国と関係を築く力」の4要件とする場合もある を満たすことで国際社会に認められた、「共同幻想」、つまり「概念」なのである。
「人権とは、すべての人間が生まれながらにして持っている、普遍的な権利である」というのは、真っ赤な噓だ。
「人権」を保障するのは「そのものが国籍を置く国家」であり、神から与えたもうたものなどでは決してない。
日本人の人権は日本という国家が保障し、アメリカ人の人権はアメリカが、中国人の人権は中国が保障するのである。
つまり、「人権」とは、「概念によって保障される概念」であるということだ。
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実体のない「概念」というものは、扱う者、運用する者によっていくらでも姿を変えてしまう。
たとえば、我々の生きる「日本」という国家においては、「人権」やそれに類するものが、最大限と言ってよいほどに保障されている。
たとえば、基本的人権、職業選択の自由、信教の自由、表現の自由など。
しかし、お隣の中国ではどうだろうか。
国家情報法や国防動員法によりすべての国民にスパイ活動が義務づけられ、表現の自由は極端に制限され グレートファイアウォールによる検閲を受け、中国共産党が認めない表現は規制されている 、新疆ウイグル自治区のウイグル人に至っては、ジェノサイド ナチス・ドイツがユダヤ人にやっていたようなこと。民族迫害。 を受けている。
このように、「実体をもたない国家」によって保障される「実体をもたない人権」は、運用者次第でいくらでも姿を変えてしまうのだ。
これはなにも、「政府」によるものばかりではない。
たとえば、男女差別問題。たとえば、LGBT+Q。たとえば、障害者。
これらのマイノリティを弾圧し、対象者の人権や類するものを奪うことだってできる。
反対に、ノイジーマイノリティが ’’度を超えた自由’’ を叫び、綺麗事に毒されてしまった者たちがそれに迎合してしまえば、マジョリティや別のマイノリティの人権、それに類するものを奪ってしまう場合もある 行き過ぎたルッキズム批判によって容姿に恵まれた者の武器を奪ったり、体が男性(元男性)であるトランスジェンダー選手が女性競技に出場して女性競技者の武器を奪ったり 。
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’’すべての人間が一切の制限を受けず、自由に生きられる社会’’ というのは、素晴らしい理想だ。
しかし、それはやはり ’’理想’’ に過ぎないー-。
さまざまな人間が共存し、十人十色の個性、千差万別の考えをもつ者たちが生きる社会では、主張する権利と権利がぶつかり合ってしまう。
そこで人類は、「お互いに少しずつの我慢をしながら、お互いに譲り合い、全員が最大限、生きやすい社会をつくりましょう」という ’’ルール’’ を設定した。
日本国憲法における「公共の福祉」、自民党の改憲草案における「公益及び公の秩序」などがこれにあたる ’’公共の福祉’’ という表現は一般的でないことから、より理解しやすい表現に改正するとのこと 。
近年、この「公共の福祉(公益及び公の秩序)」が頭から抜け落ちている人間が多くいるように感じる。
これは、日本人に限らずだ。
日本国憲法「第三章国民の権利及び義務」第十二条、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」、
自民党改憲草案「第三章国民の権利及び義務」第十二条、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」、
これらは、より簡単に表せば、「他の人たちに迷惑をかけないようにしましょうね」と言っているのである。
さて、近年の活動家たちの行動を振り返ってみよう。
・沖縄県の辺野古基地を巡って、座り込み運動ー-暴力的であり、脅迫や業務妨害をくり返す活動ー-をしている ’’米軍基地反対派’’。
・動物の肉を提供している飲食店に乱入して騒ぎ立てたり、水族館の前で騒ぎ立てたり、未購入のミルクを店の床に撒いたりしている ’’ヴィーガン’’ 。
・世界各地で抗議活動ー-ゴッホの’’ひまわり’’にトマトスープを投げつけたり、モネの’’積みわら’’にマッシュポテトを投げつけたり、車道に自らの手を接着剤で固定して座り込みをしたり、フォルクスワーゲン本社博物館において自らの手を接着剤で固定して座り込みをしたりー-をしている ’’環境活動家’’ 。
・草津MeToo事件ー-2020年12月、当時群馬県草津町の町議だった新井祥子氏が、町長から性被害を受けたと告発、学者や社会運動家などが、「セクハラをされた!」という女性の声を鵜呑みにし、草津町長を「女性をレイプしておきながらその告発を握りつぶした極悪人」であると加害者断定、糾弾する論調を拡散し、「草津はセカンドレイプの町」などと町や住人全体に対する侮辱的なキャンペーンをSNS上で展開、町長の社会的生命を脅かし、議会や町全体の信用や名誉を失墜させたが、’’ウソ’’ の告発であったと判明、前橋地検は黒岩町長を嫌疑不十分で不起訴にしているー-を展開した ’’フェミニスト’’ 。
代表的なものを挙げたが、このような例は小さいものを含めれば枚挙に暇がない。
SNSの普及に伴い、感覚がバグる人間が増えたのか、はたまた見えていなかったものが可視化されたのか、「他人に迷惑をかけないようにしましょうね」という当たり前のことが頭から抜け落ち、他人の権利をいとも簡単に侵害してしまう人間が非常に多く観測される。
これでいいのか、人間たちよ。
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’’人権’’ をはじめ、「権利」という概念は、我々に素晴らしい厚生を提供してくれる。
しかし、その運用を誤れば、特定の人間が望む幸せのために、その他の人間が泣きを見る、権利を侵害されることとなってしまうのである。
そのことを、我々は今一度、思い出すべきなのではないだろうか。
’’人権’’ そのものと向き合う内容は、こちらの記事に。
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冒頭にも述べたが、"ただころ感想文"については、"ただころシリーズ"としていくつかの記事に分割して公開しようと思う。
読書感想文を書きながら"ただころ"を読み進めていたところ、半分ほどしか読んでいない段階で、文字数が10,000字を超えてしまったからだ。
ひとつ言えることは、「ただしさに殺されないために」は近年まれにみる良書である、といはこんmp
ページをめくる手が止まらない。
2,200円と、書籍としては若干値の張る代物だが、金額以上の価値は十二分にあるだろう。
ぜひ、1冊。可能であれば、ご家族やご友人にも1冊と、お手にとっていただきたいと思う。
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