【無料・目次付】自民党「日本国憲法の改正実現に向けて」4項目まとめ|政治初心者の教科書
※本記事において扱う「日本国憲法の改正実現に向けて」は自民党による憲法改正の "たたき台素案" であって、実際に発議される条文案とは異なります。
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自民党総裁が岸田文雄氏になってからというもの、「憲法審査会」が過去最多回数で開催され、定例化された。
そして、岸田自民は「憲法改正案の起草機関の設置」に踏み込んでおり、岸田氏が総裁任期の間に憲法改正へ踏み切るものとの見方が強まっている。
以前から改憲草案に関するデマは多数発信されてきたが、最近になって苛烈さが増したのは、憲法改正が現実味を帯びてきたからだろう。
最高法規たる憲法の改正については、賛成であれ反対であれ、正しい情報・知識のうえに議論がなされるべきである。
そのため、本記事では、現行の日本国憲法(以下「現行憲法」)と自民党による憲法改正草案(以下「たたき台素案」)をそれぞれ引用し、比較しながらご紹介しようと思う。
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引用する改憲草案
本記事において引用する改憲草案は、『(資料編)「日本国憲法の改正実現に向けて」』である。
現状として自民が優先的に改憲を考えている項目は、この『(資料編)「日本国憲法の改正実現に向けて」』にある【自衛隊の明記】【緊急事態対応】【合区解消・地方公共団体】【教育充実】の4項目なのであろうと考えられる。
起草機関設置に伴う更新
現状としては参考となる資料が『(資料編)「日本国憲法の改正実現に向けて」』であるためこれを引用して記事を作成するが、岸田自民は憲法改正案の起草機関設置に踏み込んでいる。
そのため、起草された条文案の確認が可能となった際は、新たに記事を作成することとする。
抜粋基準について
『(資料編)「日本国憲法の改正実現に向けて」』には【自衛隊の明記】【緊急事態対応】【合区解消・地方公共団体】【教育充実】の4項目が記されている。
これら4項目のすべてを抜粋し、解説を加えることとする。
その他さまざな情報が掲載されているため、『(資料編)「日本国憲法の改正実現に向けて」』からご確認いただきたい。
X(旧Twitter)等における注意
X(旧Twitter)をはじめとするSNSにおいて、「自民党改憲草案の条文を挙げて(いるように見える)のデマ」が横行している。
画像などに条文のようなものを記載し、「何条」とまで示しているものもある。
しかし、それらには恣意的に文言や切り抜き方が歪められているものが多く、正当な批判であるとは言い難い。
これは本記事を含めてだが、たとえ改憲草案を引用している言論であっても、その引用条文が正しいものであるかを確認すべきである。
再度、『(資料編)「日本国憲法の改正実現に向けて」』のリンクを貼っておく。
本記事をブックマークしたり、スキを押して保存したりして、ぜひご活用いただきたい。
本記事における注意点
①本記事において引用する「たたき台素案」はその名の通り「たたき台」であり、『方向性を示す条文イメージ』に過ぎないことに留意が必要。
「たたき台素案」は、この後に憲法審査会や他政党、有識者等の意見・見解を踏まえ、具体的な条文案の完成を目指すための『素案』に過ぎない。
②本記事においては、現行憲法→たたき台素案間での改正箇所を太字で示すこととする。
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憲法改正草案シリーズ
改憲草案については、本記事の『(資料編)「日本国憲法の改正実現に向けて」』の他、「自民党の日本国憲法改正草案(平成二十四年)」と「緊急事態条項に関する憲法改正条文案(国民・維新・有志の会)」を扱った2記事を加え、3記事体制としている。
主な考え方としては、以下のようになる。
①自民党の日本国憲法改正草案(平成二十四年)
改憲議論のたたき台となった "元祖・改憲草案" 。
②(資料編)「日本国憲法の改正実現に向けて」
自民党が優先的に改憲したいと考えている4項目。
③国維有案「緊急事態条項に関する憲法改正条文案」
憲法審査会での議論が進み、生まれた2党1会派による条文イメージ。
各記事に目次を付けているため、ぜひご興味のある箇所だけでもご確認いただければと思う。
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憲法改正の手順
大前提として、憲法改正の手順について確認しておこう。
現行憲法では、憲法改正の手続きについて、以下の条件が示されている。
つまり、衆参両院の2/3以上の賛成を得て「憲法改正の発議」を行い、国民投票において過半数の賛成を得た場合に憲法の改正が成立するということだ。
☆デマの否定☆
「自民党による憲法改悪を許さない!」「勝手な改憲を許さない!」といった言説が出回っているが、あまりに稚拙であり、「改憲草案どころか現行憲法すら読んだことがないのだろう」と言わざるを得ない。
上記のように、改憲には「国民投票における過半数の賛成」が必要となる。
つまり憲法改正の決定権は日本国民がもつのであって、自民党が国会決議等によって改正できるものではないのだ。
これに代表されるように、「現行憲法すら読んだことのない者(もしくは読む能力すらない者)のイメージに基づいたデマ」や「現行憲法や改憲草案をまだ読んでいない者を騙そうとするデマ」が多数存在する。
国民投票にかけられていない段階で現行憲法および改正案を読んでいないことは、何ら問題のあることではないし、責められることでもない。
しかし、憲法改正について論じるのであれば話は別だ。
政治にしても何にしても、何かを論じるのであれば根拠について調べることは当然の姿勢であり、それをせずにデマを主張する者は批判に晒されて然るべきである。
そして当然、現行憲法および改正案を読んだうえであっても、読んだことのない者を惑わせようとデマを発信する者は、これも批判に晒されて然るべきである。
私はそのようなデマを、徹底的に糾弾していく。
国民の生命と生活にかかわる最高法規たる憲法の改正について、国民を惑わそうとする者は許さない。
改憲に賛成であれ反対であれ、議論は正確な情報を基に行われるべきだ。
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【自衛隊の明記】
現行憲法
たたき台素案
☆解説☆
第9条の1項2項は堅持し、「第9条の2」として、自衛隊の存在を明記した形となる。
憲法9条第1項は「侵略戦争禁止条項」と解され、国連憲章第2条4項と共通して「武力による威嚇」と「武力の行使」を否定している。
よって改憲後も侵略戦争の禁止は継続されるが(そもそも侵略戦争は国連憲章違反)、「前項の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず」として自衛権の存在を明記。
そして、「そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」として自衛権を行使した場合の実力組織として、自衛隊の存在を明記した形だ。
>国連憲章第2条4項
この国連憲章2条4項に関しては、「侵略戦争の否定」と解するのが一般的だ。
このように、国連憲章にも準拠して侵略戦争を否定し、そのうえで自衛権および自衛隊の存在を明記、自衛隊違憲論に終止符を打つ。
>自衛隊違憲論
自衛隊の存在が、現行憲法第9条2項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」に違反するという主張。
主権国家・独立国家固有の自然権である「自衛権」の存在を明確に無視した暴論であるため、近年では議論の場に上ることもほとんどないが、未だに根強く存在する思想でもある。
日本共産党等が未だにこれを主張している。
私見
私は、この条文案では不足が過ぎると考えている。
第9条第2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」も改正すべきだ。
現行憲法とこのたたき台素案において、自衛隊は「戦力ではない」とされている。
そのために、自衛隊にはさまざまな制限がかけられている。
おかげで、日本の防衛はアメリカありきとなっており、アメリカの気分ひとつで日本の防衛が叶わなくなってしまうのがこれまでだった。
これが、独立・主権国家として正しい姿だろうか。
戦後、日本が世界から危険視されていた頃ならいさ知らず、G7の一員として責任ある立場を担い、日米同盟に加えて日英・日豪の準同盟を結ぶようにもなった現在。
このままでよいはずがない。
そのため、自衛隊(警察予備隊)を国防"軍"に昇格させ、「戦力」として保有する必要があるのだ。
これにより「戦力の不保持」が削除される。
そして同時に、「交戦権の否認」も削除されることになる。
防衛省は、この「交戦権」について以下のように説明している。
つまり、現行憲法における「交戦権」とは「戦いを交える権利」ではなく、「交戦国が国際法上有する種々の権利の総称」を指しているというのである。
これは白人との戦争に負けた日本に課された重い枷かせであり、国連憲章(国際法のひとつ)よりも厳しい制限となっている。
しかし、国連憲章は第2条4項で侵略戦争を否定しており、国際法において認められる権利は、「満足に防衛を行うための権利」であると言える。
これも先ほどと同じく、戦後、日本が世界から危険視されていた頃ならいさ知らず、責任ある立場を担うようになった現在、ここまで重い枷が必要であろうか。
「交戦権の否認」を残すことは、「満足に防衛を行うための権利」を放棄することに等しく、独立・主権国家としてあるべき姿ではない。
侵略戦争を否定しつつ、自国の防衛については一切を放棄しない。
これこそ国際法に準拠した憲法であり、独立・主権国家としてあるべき姿と言えよう。
ここをクリアした条文案が、「日本国憲法改正草案(現行憲法対照)自由民主党 平成二十四年四月二十七日(決定)」である。
これについては以下の記事において解説しているため、ぜひそちらもご確認いただきたい。
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【緊急事態対応】
緊急事態において、国家権力が平時の枠組みを超えた権力を行使できる権限を「国家緊急権」という。
現行憲法には国家緊急権に関する規定が存在しなかったが、たたき台素案には盛り込まれた。
憲法に規定される国家緊急権の条文を一般に「緊急事態条項」といい、デマやプロパガンダが多く打たれている内容でもある。
緊急事態における強権発動の範囲、またその抑制、解除の在り方についてさまざま議論があることは承知しているが、私は緊急事態条項(緊急時の強権発動)の制定に賛成である。
「リベラル」や「左翼」と呼ばれる層は「人権!人権!」と騒ぎ立てるが、たとえば大規模な自然災害、たとえば他国による無差別ミサイル爆撃、核攻撃、たとえば大規模なテロ等が発生した際、際限なく人権を認めることは、現実的に不可能だ。
そのため、政府が強権を発動して指揮をとり、可能な限り多くの国民を守るため、緊急事態条項の存在が必要不可欠なのである。
たたき台素案では、「政令の制定」と「議員任期の延長」が定められている。
一刻を争う緊急事態において国会の立法を待つ時間はないため、内閣の政令によって対応し、国会の承認を得る。
そして、緊急事態において選挙を正常に行うことは困難であるため、議員の任期が延長される。
実際に、現行憲法下においても、東日本大震災の後、被災地の地方議員の任期や統一地方選の選挙期日が、法律により特例を設けて延長された例がある。
しかし、国会議員の任期や選挙期日は憲法に直接規定されているものであり、法律でその例外を規定することができない。
そのため、緊急事態条項の一部として、「特例」を直接憲法に書き込んだということだ。
現行憲法にも定めのある「参議院の緊急集会(第54条第2項)」で事足りるとの主張もあるが、厳格に運用すれば「衆院解散から特別国会召集までの70日間」しかこれを適用できず、備えとしては不十分と言える。
また、国会議員に関しては選挙区選挙と比例選挙が存在し、選挙区選では被災地における選挙が困難になり、比例選では一部地域でも選挙が行えなければ議員の選出ができなくなる。
緊急事態を想定した議員任期延長の規定は必要と言えるだろう。
現行憲法
たたき台素案
>第七十三条
>第六十四条
諸外国における緊急事態条項
以下は「国立国会図書館調査及び立法考査局」が公開している資料だが、OECD加盟国(日本を含め38ヶ国)では、実に79%の国が緊急事態条項と呼ぶべき仕組みを制定している。
調査対象がOECD加盟国に限定されている理由は、以下の通り。
宣言型・無宣言型や発動要件等はさまざまであるが、実に多くの先進自由主義国において緊急事態条項が設定されているとわかる。
また、内容はさまざまであるが、世界各国の93.2%が緊急事態条項を憲法に規定しているという。
緊急事態条項の内容については議論があって然るべきと思うが、「国家緊急権(国家権力が平時の枠組みを超えた権力を行使できる権限)を憲法に規定することそのものが危険」という論には首を傾げてしまう。
☆解説☆
自民党改憲草案と国維有案ではそれぞれ以下のようになっていた緊急事態条項の発動要件であるが、本たたき台素案では「大地震その他の異常かつ大規模な災害」に絞られている。
これらを見るに、自民党は首都直下地震等の災害を念頭に、まずは少しでも改憲を行いたいと考えており、国民・維新・有志の会は、台湾有事や尖閣・沖縄有事、それが全国に波及した場合等も考慮、コロナ禍の事例も加味し、完璧な形で改憲を行いたいと考えているのだろう。
私見としては、台湾有事、朝鮮有事の危険性が高まっている現在、国維有案の5要件(武力攻撃、内乱・テロ、自然災害、感染症のまん延、その他これらに匹敵する事態《しい》)を採用して改憲すべきと考える。
「武力攻撃」を考えれば、以下の脅威等が想定される。
※ "台湾有事" については以下の記事をご確認いただきたい。
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「内乱・テロ」については、たとえば反政府テロ組織による同時多発テロ、たとえば「暴力革命方針の堅持により、破壊活動防止法に基づき公安調査庁の調査対象である日本共産党(※1)」による暴力革命などが考えられる。
※1について、以下「共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解(公安調査庁)」より引用
「自然災害」については、南海トラフ巨大地震や富士山の噴火、首都直下型地震などが想定される。
「感染症のまん延」に関しても、新型コロナウイルスがまん延した際に "ロックダウン" が話題となったが、緊急事態条項のない現行憲法では、移転の自由を制限するロックダウンは違憲となってしまう。
新型コロナウイルスの毒性ではこれでもなんとか対応できたが、たとえばエボラ出血熱など毒性の強い危険なウイルスが入ってきた場合、このままでは国民の安全が守れない。
「その他の法律で定める緊急事態」についてであるが、「憲法」とは今後も運用し続けるものであって、この先にどのような非常事態が起こり得るか、想定に漏れるものも存在することだろう。
そのため、そのような緊急事態が発生した場合にも緊急事態条項を適用し、国民の命・安全を最大限に確保することができるよう、この規定も盛り込み、その根拠としては法律の制定を必要とすべきだ(民意による決定を必要とし、内閣の独断=権力の暴走を許さない)。
法律の新設・改正は憲法の改正に比べて手続きが少なく(国民投票がない)、新たな緊急事態への対応として、その度に憲法に書き込むよりも適している。
もちろん、その法律の新設・改正についても民主主義によって信任された国会議員が議論・採決を行うため、国民が選択を誤らなければ何ら問題はない。
そして、このたたき台素案においては「期限」等の権力抑制条項が定められていないが、これはあくまで「たたき台素案」であり、そのあたりについては、この後の議論において詰める想定のものと考えられる(自民党改憲草案では100日、国維有案では6ヶ月となっている)。
また、議員任期延長の議決に必要な賛成数が「過半数(自民党改憲草案)」から「三分の二以上※国維有案でも三分の二以上」となった。
国維有案と異なり、自民党改憲草案、自民党たたき台素案では「前議員の身分復活」の規定がなく、反対に、自民党改憲草案、自民党たたき台素案では「政令」の制定に関する条項があるが、国維有案ではこれがない。
"国会機能の維持" による緊急事態対応を考える国維有案に対し、自民党は"政令"(と国会の承認)による緊急事態対応を考えていることがわかる。
たたき台素案では、内閣が政令を制定した場合は、速やかに国会の承認を得る必要があるとされている。
国会とは民主主義によって信任された国会議員に構成される機関であり、緊急事態においても権力の暴走が起こらないよう、工夫がなされていると言えるだろう。
私はこれに加え、実際にそのような話も出ているようだが、三権分立(行政・立法・司法)を活かして内閣・国会の暴走を防ぐため、「内閣の判断」および「国会の承認」が本当に『緊急事態条項の規定として適格か(違憲状態にないか)』について、最高裁判所に判断を仰ぐ形がよいのではないかと考える。
これであれば、「内閣が利己に走って不必要な政令・処分等を行う」ことや、「国会が議員任期の延長を目的とし、内閣と結託して不必要な承認を行う」こと等を防止、または直ちに解除できるはずだ。
玉木雄一郎(国民民主党代表)の解説
YouTubeにおいて玉木雄一郎・国民民主党代表の解説を発見したため、以下、重要な箇所を抜粋。
【ナチスドイツとの違い】
ナチスが誕生した時代のドイツには、「ワイマール憲法」という憲法があった。
このワイマール憲法における国家緊急権的条項は以下の第48条2項。
第114条、第115条、第117条、第118条、第123条、第124条、第153条は、それぞれ「人身の自由」「住居の不可侵」「通信の秘密」「表現の自由」「集会の自由」「結社の自由」「財産権の保障」を指す。
たたき台素案では以下に挙げる規定がないが、これはあくまで "たたき台" だからであると考えられ、自民党改憲草案では以下の規定がなされている。
自民党改憲草案との違いは2点。
①基本的人権の制約程度
・自民党改憲草案「第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない」
=自民党改憲草案の緊急事態条項では基本的人権が停止されない
・ワイマール憲法「基本的人権の全部または一部を、一時的に停止できる」
=ワイマール憲法では基本的人権を停止することができた
②緊急事態条項の期限
・自民党改憲草案「百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない」
=自民党改憲草案では "緊急事態の宣言" の有効期間が100日であるとされており、これを超える場合は再度、民意の代表である国会の承認を必要とする
・ワイマール憲法「基本的人権の全部または一部を、一時的に停止できる」
= "一時的" との文言を用いてはいるものの、定量的な日数を規定していないため、ナチスは基本的人権を停止したままにできた
以上の2点がワイマール憲法と異なるところであり、「緊急事態条項の制定によってナチスの二の舞になるのではないか」との不安は払拭されるべきものであると言える。
そもそも、ナチスを生み出してしまうような規定を、世界の90%以上の国々が憲法に明記するはずがないのだ。
自民党改憲草案については以下の記事において解説しているので、ぜひご確認いただければと思う。
※リンク先へ飛ぶ前に♡を押していただくと、後々、この記事を「スキした記事」欄から見つけることができ、見失うことがありません。
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【合区解消・地方公共団体】
現行憲法
たたき台素案
☆解説☆
この「合区解消・地方公共団体」については、国民の主な興味関心の範疇にないものと思う。
そのため、『(資料編)「日本国憲法の改正実現に向けて」』の記載を引用し、これを解説としたい。
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【教育充実】
現行憲法
たたき台素案
☆解説☆
現行憲法の第26条では、国の責務として「義務教育の無償化」のみが挙げられている。
しかし、メンバーシップでは何度も言っている通り、社会は高度に情報化し、頭脳労働が主となりつつある中で、"教育" の重要性はより増していると言えるだろう。
そこで、たたき台素案では「教育の目的」や「理念」を盛り込み、また拡大する教育格差も踏まえ、「各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保する」ことも含めた教育環境の整備を国の責務とした形だ。
また、第89条の「公の支配に属しない慈善→公の監督が及ばない慈善」の改正は、「現在の文言では、私学助成が禁止されていると読めることから」とされている。
※不登校と教育の義務
ここでよくある誤解を訂正しておこうと思うのだが、日本国憲法の定める「教育を受けさせる義務」は、その名の通り「教育を受けさせる義務」が保護者に課されているのであって、「登校を拒否する児童生徒(不登校)を無理やり登校させること」はこれに含まれていない。
「義務教育」との名が誤解を生んでいるようにも思うが、子どもは「教育を受ける権利」を持っているのであって、「通学の義務」を課されているわけではない。
また、「子どもを小中学校に通わせるのは義務であり、無理やりにでも登校させなければならない」とお考えの保護者も多いが、保護者に課されているのは「子どもに教育を受ける機会を与える義務」なのであって、子どもが不登校である場合の保護者が義務に反しているわけではないのだ。
教育機会確保法(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)の第3条(基本理念)には、以下のようにある。
このように、国は不登校生徒の存在を当然のものとして認めており、「必要な支援」が行われるように努めなければならないとしているのだ。
また、同法では「学校ではない場での教育」についても認めており、学校以外の場所で教育を受けやすいように支援する法律ともなっている。
そもそも義務教育とは「家庭教育の不足を補い、全国民に教育を提供する」ための機関なのであって、無論、保護者の意思で登校させない等 "教育の機会を奪う" 行為には罰則規定も存在するが、子ども本人の意思で登校を拒絶する場合、登校を強要する必要性は一切ない。
(余談)教育基本法の改正
"教育" は自民党が長年、力を入れているところであって、安倍政権下では教育基本法の改正も行われている。
2006年秋、安倍政権は「教育基本法」を改正した。
この教育基本法の改正についてであるが、やはり改正教育基本法の方が日本的であると納得する。
そして、旧教育基本法・改正教育基本法それぞれの全文に目を通してみたところ、改正教育基本法について、以下の3点を感じた。
>新旧教育基本法の比較
①についてであるが、たとえば、新旧教育基本法の前文を比較してみよう。
このように、改正教育基本法は旧教育基本法に比べ、より詳細に、よりわかりやすく、より具体的なものへと変更されている。
そして、②の「伝統と文化を尊重し、愛国心を育てる方針が盛り込まれた」についてであるが、これには、この内容にあたる記述が存在する。
改正教育基本法には、我が国の伝統と文化を尊重すること、そして我が国と郷土を愛することが明確に示されている。
>愛国心とプロパガンダ
「愛国心」というと「軍国主義ダー!」と謎のアレルギーを発症する者があるが、これは誤りである。
愛国心を持つことは国際標準的な、いわば “世界の常識” であって、なにも危険な思想ではない。
「愛国心=危険」という考えは、大東亜戦争後に日本統治を担ったGHQのプロパガンダに日本人の異常なまでの真面目さが重なり、さらに中国や朝鮮半島によるプロパガンダが追い討ちをかけた結果に出来上がった、まさに「歪ゆがんだ思想」に他ならない。
愛国心が危険だというのであれば、それを感情論ではなく、論理的にご説明いただきいものだ。
「愛国心を煽って日本は戦争に突き進んだ」と言うが、世界を見れば愛国心を持つ者が大多数なのであって、「愛国心が戦争を起こす」というのであれば、今でも世界中ほとんどの国々が戦争を繰り広げていなければおかしい。
また、「家族愛」や「友愛」「恋愛」「隣人愛」が認められ、「故郷を愛する心」「町を愛する心」「都道府県を愛する心」「地方を愛する心」が認められるのに、「国を愛する心」だけが危険であるというのはどういう理屈なのか。
「その地に生を受ける」という、これ以上の "運命の赤い糸" が存在するだろうか。
「愛国心」というのは、国民を強く結びつけ、協調を生み、国家を前へと進めてくれるものだ。
私は、この「愛国心」を取り戻すことこそが、「戦後レジームからの脱却」における一丁目一番地であると考えている。
>多様性の時代
そして、③の「 "学び" が多様化している現代に沿った内容となった」であるが、これは「男女共学」の項目が削除されたことや、「大学」、「私立学校」、「家庭教育」、「幼児期の教育」などが追加されたことが理由である。
>生涯学習の理念
さらに、改正教育基本法には、「生涯学習の理念」という項目が追加されている。
これは、旧教育基本法には存在しなかった項目だ。
たしかに、日本には「習うは一生」であるとか、「人生、死ぬまで勉強」であるとか、「死ぬまでなにかを学び続けるものだ」という意識が浸透しているように思う。
「死ぬまで勉強しろとか日本は地獄か?」というような主張も散見されるが、"死ぬまで勉強" の意識を持っていたからこそ、私たちの先人たちは2684年にもわたる世界最古の歴史を紡ぐことができたのではないだろうか。
私は、改正教育基本法にこの「生涯学習」を盛り込んだことは、非常に素晴らしいものであると考えている。
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☆デマQ&A☆
侵略戦争
Q. 現行憲法第9条を改正すれば、侵略戦争が可能となるのではないか。
A. 国連憲章第2条4項に準拠した「侵略戦争禁止条項」である第9条1項が堅持されているため、侵略戦争は改憲後も禁止される(そもそも侵略戦争は国連憲章違反)。
これはたたき台素案よりも踏み込んでいる自民党改憲草案(私はこの条文を基に改正すべきと考える)においても同様。
自民党改憲草案では、現行憲法9条が属する「2章」の「戦争の放棄」を「安全保障」と書き換え、「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を明記する第9条2項の内容を廃止する。
しかし、国連憲章第2条4項に準拠した「侵略戦争禁止条項」である第9条1項を堅持しており、第9条1項に明確に「平和主義」との題を盛り込んでいる。
このように、「平和主義」は踏襲しつつ(「平和主義」と直接的に書き込んだことを考えれば、この精神については強化されたとも言える)、「我が国の平和を脅かす者があれば合法的に排除し、我が国の平和を守る」というのが自民党改憲草案である。
よって、たたき台素案においても自民党改憲草案においても、平和主義が否定されたり侵略戦争が可能になったりすることはない。
徴兵制度
Q. 憲法改正で緊急事態条項が成立すれば、「徴兵制」が導入されるのではないか。
A. 日本政府は「徴兵制は違憲」としており、その根拠の一つとして憲法18条を挙げている。
この「その意に反する苦役」に徴兵制が該当するためである。
そして、緊急事態条項は示される条文以外の権能を停止しない。
よって、憲法改正を理由に徴兵制を導入することは不可能であると言える。
※第13条も徴兵制を違憲とする根拠として挙げられるが、自民党改憲草案では改正対象となっており、改正後も主たる性質は変わらないが「13条は改正される」として否定言論が予想されるため、現状としては18条、もしくは13条と18条の併記によってデマを否定することが望ましい(今回の改正に13条は含まれないと考えられるが、「この先の改正で徴兵制が~」等のプロパガンダも考えられるため、今後も18条もしくは併記が望ましいとは思う)。
緊急事態条項=ナチス
Q. 緊急事態条項を憲法に定めると、ナチスのような独裁体制を生み出すのではないか。
A.「諸外国における緊急事態条項」の節において解説した通りであるが、主に先進自由主義諸国で構成され、比較的長い立憲主義の伝統を有する国が多いOECD加盟国のうち、実に79%の国が緊急事態条項と呼ぶべき仕組みを制定している。
また、内容はさまざまであるが、世界各国の93.2%が緊急事態条項を憲法に規定しているという。
そのうえで、たたき台素案では以下に挙げる規定がないが、これはあくまで "たたき台" だからであると考えられ、自民党改憲草案では以下の規定がなされている。
①基本的人権の制約程度
・自民党改憲草案「第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない」
=自民党改憲草案の緊急事態条項では基本的人権が停止されない
・ワイマール憲法「基本的人権の全部または一部を、一時的に停止できる」
=ワイマール憲法では基本的人権を停止することができた
②緊急事態条項の期限
・自民党改憲草案「百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない」
=自民党改憲草案では "緊急事態の宣言" の有効期間が100日であるとされており、これを超える場合は再度、民意の代表である国会の承認を必要とする
・ワイマール憲法「基本的人権の全部または一部を、一時的に停止できる」
= "一時的" との文言を用いてはいるものの、定量的な日数を規定していないため、ナチスは基本的人権を停止したままにできた
以上の2点がワイマール憲法と異なるところであり、「緊急事態条項の制定によってナチスの二の舞になるのではないか」との不安は払拭されるべきものであると言える。
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まとめ
ここまでお付き合いをいただき、ありがとうございました。
「最高法規たる憲法の改正については、賛成であれ反対であれ、正しい情報・知識のうえに議論がなされるべきである。」
との立場に基づき、現行憲法とたたき台素案の条文をそれぞれ引用しながら綴ってまいりました。
日本国憲法は、我が国に生きるすべての者に関わる重要なもの。
この改正議論が、デマに基づいて行われてよいはずがありません。
ただし、私は明確な「憲法改正賛成派」であり、本記事にもそれが色濃ゆく反映されています。
私見が反映されています。バイアスがかかっています。
ぜひ、さまざまな発信から情報を得、吟味し、考え、結論を出してください。
貴台が正しい情報を基に考え、自分の意見を確立できるよう願っております。
令和6年(皇紀2684年)3月23日 國神貴哉
P.S. 國神からのお願い
最終的に23,000字を超える記事となってしまいましたが、お付き合いをいただきありがとうございました。
「憲法は日本における最高法規であり、その改正については、賛成であれ反対であれ、正しい情報・知識の基に議論が行われるべきである」という私の立場は、皆様にもご納得いただけるものと思います。
しかし、多くの有権者のみなさんはお忙しく、また政治に強い関心がある方も少なく、ファクトチェックに手が回っていない方も多くいらっしゃるものと存じます。
そのような方に事実をお伝えすることができればと、本記事を執筆いたしました。
ですが、noteには広告収入の形式がなく、本記事がいくら読まれようと私には一銭も入りません。
もちろん、自身の収益は二の次であり、儲からずとも日本のために筆を握る所存です。
とはいえ、私もただの21歳。
食っていくことができなければ、このように情報を集めてお届けすることが困難となってしまいます。
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いつも本当にありがとうございます。
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