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『指先からソーダ』日常系エッセイの決定版!山崎ナオコーラのおすすめエッセイ。書評も入った充実の1冊
本は恋人の代わりになるのかな?布団の中に本を引き込んでみる。すると、活字のやつはベッドの中でも、すごい。快感で、指が痺れる。
孤独に寄り添ってくれる、本という存在。
それを、こんなにも刺激的なわくわく文章で表現したエッセイは、これまで読んだことがない。
今回は『人のセックスを笑うな』でデビューした作家、山崎ナオコーラさんの『指先からソーダ』をご紹介します。
背伸びも自虐もない、常温の感情が心地よい1冊
内容としては、エッセイ&書評。
家族とのなにげない会話、友人との印象的な一幕など、日常の中で感情が動いた瞬間を、常温でとらえたエッセイがつまってます。
エッセイって「感動した!!」とか「辛すぎる……」みたいな、強い感情が生まれた出来事を取り上げがちじゃないですか。
このエッセイは、常温で喜怒哀楽をとらえる、というか、身の回りで起きた出来事をまず受け入れてから、ひと呼吸おいて咀嚼した結果を文章にしているって感じなので、落ち着いて読める。
あまり感情を揺さぶられたくないけど、活字を読んでいたいときにぴったり。刺激がなくて単調なわけではなく、程よい心地よさがあります。さすが作家さんのエッセイ。
書評(解説含む)には、以下の3作が収録されています。
・『プーさんの鼻』俵万智
・『残光』小島信夫
・『流浪 金子光晴エッセイ・コレクション』
現実に耐えられないときは、本を逃げ場にしたっていい
程よい心地よさのエッセイと書いた通り、タイトルの『指先からソーダ』のもとになっている「栞が導く色んな世界たち」というエッセイは、とても優しくて印象的だった。
私は子どもの頃から、生きていることが苦しかった。そして読書が好きになった。だから本好きの理由は「現実逃避ができるから」で、それは大人になった今も変わらない。
もちろん、知らない知識を得る面白さにハマる、と言った場面もあると思うけれど、子どもの頃に読書に熱烈に吸い込まれるのって、たぶんこういうときなんじゃないかな。
そして、そんな経験を経てきたナオコーラさんだからこその、優しい言葉がつづく。
本は勉強のためにあるのではないよ。戻る気があれば、本を逃げ場にしてもいいんだよ。
「こう言ってくれる大人がそばにいたら、素敵だな」と感じさせられた一文でした。
誰かの頭の中の、ポジティブなひとりごと。それを抜き出して、ラジオみたいに聞き流している感覚になれる1冊でした。
日常にお疲れ気味の方におすすめしたい、読み心地しゅわしゅわ微炭酸なエッセイです。
栞を引っ張ると、気の抜けた行間から、しゅわしゅわと音が聴こえ始める。そうして再び、ソーダの泡が立ち上り、段落の上に溢れ出す。
■この本が気に入った方には、こちらもオススメ
こちらは、ナオコーラさんの小説。4人姉妹の豆子が結婚することになり、まわりから「おめでとう」と祝福の声が集まる。だけど、豆子はその言葉にもやもやして――。というお話。
紹介記事を書いているので、ぜひそちらもご覧ください。
この本の紹介記事は、こちらから↓↓↓
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