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演劇感想(~2023)

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#レビュー

太郎物語『太郎物語の準備体操』

太郎物語『太郎物語の準備体操』

太郎物語(杏優、果音)
脚本:杏優

東京音頭という会社による人生のコンセプトをめぐるバスツアー。
キャバ嬢を夢見る少女と女性サンタクロースの交流。
こたつで駄弁る太郎物語の雑談。
三つのパートによって緩やかに人生が浮かび上がる

女優二人による演劇ユニット。
先月観劇した佐藤瑛子を調べてる時に親交のある団体として知り、宣伝美術が非常に素晴らしかったので見に行った。
この団体が行なっている準備体

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宇宙論☆講座 『発狂!鏡球地獄 ほか6編』の感想

宇宙論☆講座 『発狂!鏡球地獄 ほか6編』の感想

作・演出/ 五十部祐明(会場:現代座ホール)

グダグダミュージカルで一部から熱狂的な評価を得る音楽劇団。今回は江戸川乱歩アレンジの表題作含めた短編集。

どんなグダグダがくるかと期待をしていると、

冒頭は、新成亜子演じるくたびれたシングルマザーから始まる。息子と娘とは関係が冷え切っている。いつ歌い出すかと思いきや、宇宙論らしいギャグもなくギスギスした展開。しかし、実は頑張る母親に温泉旅行をあげ

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令和座 『SEVEN』 の感想

令和座 『SEVEN』 の感想

作・演出/浅間伸一郎
倦怠期のカップル。そこに、女の親戚を名乗る男が現れる。男はとあることを伝えに来たそうだが。

たっぷり間を使う独自の劇団。今年上演した、長編・短編がどちらも傑作だった。2023年最後の作品は、同じあらすじで異なる展開の二つの演劇。

 (ASTRAY version)
(BETRAY version)

と名付けられた物語は、それぞれ独立しているが一つのあらすじでも如何様にも

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7度『胎内』

7度『胎内』

演出/伊藤全記 、 作/三好十郎

舞台は戦後の日本。戦時中に作戦で掘った横穴を訪れる男。そこに男女が駆け込んでくる。彼らは逮捕を恐れて逃げてきたのだが、突如地震によって三人は横穴に閉じ込められる。

古典や近現代の作品を大胆な編集とをイマジネーションで見たことない形へ作り上げる劇団。
今回は、利賀演劇人コンクールで優秀賞演出家賞・優秀演劇人賞を受賞した代表作の上演。三好十郎が1949年に発表した

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ハカランダの犬『暴力(仮)』 の感想

ハカランダの犬『暴力(仮)』 の感想

構成/森田諒一、ドラマトゥルク/大塩誠(会場:おんがくのじかん)
レストランでのライブ。演奏と友人達との食卓が交互に描かれる。が、そこに暴力を語る謎の存在が現れて。

おお、やったぞ変な演劇だ。
食事とライブと暴力論が断片化されランダムに配置されている。
楽しい食事風景や絵しりとりなど男女四人が戯れる。カップルになる前の男女の友人二組のような姿が描かれる、カレーがぬるいと文句を言ったりハンバーグを

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ザジ・ズー『ZAZI・ZOO JAPAN TOURE 2023 FINAL 』 の感想

ザジ・ズー『ZAZI・ZOO JAPAN TOURE 2023 FINAL 』 の感想

作・演出/アガリクスティ・パイソン(会場:BUoY)
フットボールの試合と同時刻に起きた悲劇、謎の連続殺人、文豪へのラブロマンス、古典アレンジ珍道中。オムニバスで描かれるカオス。

ザジ・ズーは過去にショーケース劇的で短編二本見た。作品ごとに主導するメンバーが変わる集団創作なのでテイストが違った。じゃあ、本公演はどうかというと、意外と真っ当に演劇やっている。
 今回はメンバーの故郷を巡りその地で新

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即席麺企画『メシア』 の感想

即席麺企画『メシア』 の感想

脚本・演出/山口夏寧(会場:明治大学猿楽町第2校舎1階アートスタジオ)

猟奇殺人で死刑の男。彼の支持者と批判者はドキュメンタリー監督に呼ばれる。男を取材している内に見えた男の正体とは。

過激な内容で血糊も使うので苦手な人は気をつけてください。Rー15指定、という注意書きに興味惹かれて見に行った。
 確かに、後半の男に監禁されている空間の血生臭さは良い。不快な音が響きカニバリズムが充満する。パン

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コンプソンズ『愛について語るときは静かにしてくれ』 の感想

コンプソンズ『愛について語るときは静かにしてくれ』 の感想

作・演出/金子鈴幸 (会場:OFF・OFFシアター)

古アパートに住む女はプロゲーマー。彼女は虚無な彼氏と過ごしているが、その関係に大変化が訪れる。部屋には隣人・友人・弟がやってくるが一癖ある彼らによって人間関係にカオスが訪れて、

コンプソンズらしい癖強めの人たちが入り乱れる人間ドラマ。テンポの良い会話で描かれる若者たちの生活。皆なんだか屈折してそうでオフビートな青春ドラマ。いつも通りサブカル

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大川企画『笑う』(作・演出/松森モヘー) の感想

大川企画『笑う』(作・演出/松森モヘー) の感想

作・演出/松森モヘー(中野坂上デーモンズ)、プロデューサー/大川望美
(会場:王子小劇場)

 とある異国のゲストハウス。そこには姉妹と二人の男が滞在している。街では祭りが行われているが、その国で起きた洪水による死者が弔われている。彼らは会話をするが噛み合っていなくて。

これは現代モヘー語会話劇。
噛み合わない会話はモヘーのお家芸だが、今回はよりその部分を煮詰めておりモヘー語と言うべき独特な言語

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 カレーカレーグループ『もういい風』 の感想

 カレーカレーグループ『もういい風』 の感想

作:鹿内聡 演出:鹿内聡&山田陣之祐(会場:元映画館)

ある女性の恋人は、超能力でリコーダーを吹く練習をしている。彼女は2人の友人たちと地元を歩き、龍伝説にある場所へ向かう。同時刻彼氏の元には恋人と一緒にいるはずの友人が現れる。その友人は幽霊で・・・。

 夢と現が入り乱れる幻想譚。如何にも現代口語演劇的な演技体、会話を主軸に置いた静かな演劇マナーに則った、優等生的な演出。ただしその会話の佇まい

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優しい劇団『マイ・エクスプロージョン』 の感想

優しい劇団『マイ・エクスプロージョン』 の感想

作・演出/ 尾崎優人(会場:多摩川河川敷)

 嬉しいと物理的に爆発してしまう体質の少年は、無感情な青春を送ろうと決意するが 入学した高校で一人の少女と出会い・・・ 。

 名古屋の若手による東名野外演劇ツアー東京公演。
 一人芝居のはずなのだが突如草むらから女性が現れ絶叫バトル。

 叫ぶ作品を期待している東京人へのファンサービスだそうで、本編はちゃんと一人芝居でそこまでで叫ばないと前置き。

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東京学生演劇祭2023 の感想

東京学生演劇祭2023 の感想

毎年のお楽しみ、東京学生演劇祭の季節がやってきた。
ここから新たな才能が毎年登場する。昨年のは↓

全6団体、三組ずつABの2グループに分かれて上演する。
なので、AグループBグループの順番で感想を書く。

【Aグループ】

合法事務所UNION 『AZ-合わせ鏡のアイデンティティ-』
作・演出:柄澤慶
怪人と戦うヒーローAZ。ある日、助けた少女に恋をするが相棒からはヒーローに恋は御法度と注意され

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第67回岸田國士戯曲賞、候補作レビュー(どこよりも遅い!)

第67回岸田國士戯曲賞、候補作レビュー(どこよりも遅い!)

 私は主催している演劇クロスレビューという企画で毎年、岸田國士戯曲賞の候補作をクロスレビューしていた。今年もやる予定で書いていたが、一作だけ全編無料公開なしのため私しか全作読めなかった(掲載された悲劇喜劇を取り寄せて読んだ)ので、今年はポシャった。そうこうするうちに夏になったがようやく、選評が無料公開されたので世界一遅い岸田賞レビューとして掲載する。
夏休みSPだ。
勿論クロスしていないレビューな

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令和座『大麻を吸おうよ』 の感想

令和座『大麻を吸おうよ』 の感想

作・演出/浅間伸一郎(会場:絵空箱)
鎖で縛られた女に話しかける男。彼は女を部屋から連れ出そうとしている。彼女と親密になりたいようだが、そこに女の兄が戻ってくる。

傑作
 一方的に女を慕う男と兄に対して複雑な思いを抱く女、妹にドライな対応をとる兄の関係。そして合法の国で大麻ディーラーを営む兄と大麻によって生み出された因果という二つの話が描かれている。話としては、決して突飛な話ではない。
それが、

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