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ザジ・ズー『ZAZI・ZOO JAPAN TOURE 2023 FINAL 』 の感想

作・演出/アガリクスティ・パイソン(会場:BUoY)
フットボールの試合と同時刻に起きた悲劇、謎の連続殺人、文豪へのラブロマンス、古典アレンジ珍道中。オムニバスで描かれるカオス。

ザジ・ズーは過去にショーケース劇的で短編二本見た。作品ごとに主導するメンバーが変わる集団創作なのでテイストが違った。じゃあ、本公演はどうかというと、意外と真っ当に演劇やっている。
 今回はメンバーの故郷を巡りその地で新作を制作し上演する企画の最終章。全公演総まとめということか地方で上演された作品をつなげる構成。短編集か、と思うかもしれないが見ているとそんな感じがしない。音楽や体を使って流れを止めずに進行するから一つの流れで見れる。
OPの演奏、会話ときて拡声器による絶叫はザジ・ズー始まったという感じで最高。そして始まる殺人事件。蟹工船とシャーロックホームズのマッシュアップらしいがマッシュアップされてるのか怪しいトンチキテンションのミステリー(アフタートーク曰く、誰一人ホームズの知識がなかったらしい)。次々殺され結末も何じゃこりゃの悪ふざけ。
 続くのは、劇作家に恋する女の話だがどうやら相手はシェイクスピアらしいがシェイクスピア要素ゼロでこれまた妙なテンションで三角関係。ラストの火炙り、最後に叫ぶ言葉は「ZAZI・ZOO JAPAN TOURE 2023 FINAL !!」 
もう最高!ここでこれを言わせるセンス悪ふざけの極みで痺れる。世の何人の劇作家が死ぬ最後のセリフに今見ている公演の宣伝をブチ込めるのか。いや彼らしかいない。
 最後の最遊記はのんびりとしたユーモア。とぼけた味わいでほのぼの楽しめるが、それまでの勢いからするとテンションが落ちている。そしてこのままエンディングに突入する。最遊記は序盤だったらより面白く感じたと思う。

 空間は頑張ってはいるものの使いこなせていない。狭スペースで爆発していたエネルギーがここでは分散している。BUoYは狭い空間だと最高だった若手が進出すると空間に飲まれることがよく起こる。本当に難しい会場。

驚いたのは稲田誠によるコントラバスの生演奏。カオスな作風と合うのか?と思いきや、低音が作品の雰囲気作りに貢献していてかなり重要なポジションだった。聞いていて楽しい。

私が見た回は濱野ゆき子が体調不良により休演。全員で代役だったのだが、一人が台本を読み台詞を言う。もう一人が似顔絵の書いてある人型段ボールを纏い演じる。あのボロボロダンボールが代役とは恐れ入った。ピンチで逆に面白演出する彼らの才覚。でもやっぱり全員集合が見たかった。
ゆっくり体調を直してくださいな。

面白いが、カオスがもっと欲しい。唐突にCMが入ったりするところ好き。
面白いのでもっと構造を破茶滅茶にしても面白いと思う。

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