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内藤 奈美
2017年9月5日 01:59
長い文章がなかなか書けなくなっている。書きたいことは時折、ふと浮かぶのに。形にしようと思うと何かが「ちがう」と、言葉を流していく。頭のすこし上、宙に漂ってしまった半透明の文字を感覚で追って、正体のわからない寂しさのような、諦めのようなものを抱きながら、ぼんやりと惜しんでいる。なんだか絡まっているようだから、捕まえようとは思っていない。今これは、詩を書くときに近い紡ぎ方で書いている。抽象性が
2017年5月21日 19:07
以前舞台で共演したことのある知人の踊りを久しぶりに観て、思ったことがある。彼女の動きはまるみを帯びている、ということ。まるい空間を作る、踊り。包み込む、というのとはまた少し違う。それは伸ばした手の、その指の先にある空気がふわりと押し出されるような。揺れる柔らかな布が空気を含んで、ふっと膨らんでいくような。そしてするすると、彼女を取り巻くエネルギーとも言える空気が、動きと共に空間に混ぜ込まれ
2017年5月6日 18:44
玄関先のアネモネが綺麗に咲いていたので、大橋トリオ『アネモネが鳴いた』を聴きながら散歩をしています。大橋さんの歌詞は奥様が書かれているとのこと。柔らかく、美しい言葉が好きで、詩としても素敵だなと思います。夕暮れはやさしい。歩調に、ゆるやかに流れていく景色が言葉をくれることが多くて、あるく、というのはとても好きです。景色と気分に合わせて聴いている音楽を変えていくと、いつも見ている景色も違う顔を見
2017年4月12日 00:21
乗車している電車と並行して走る、すし詰めの車両を見ていた。今日一日を過ごしてきた人々の、疲れた顔が並ぶ。どの表情も、感情を押し込めた「のっぺらぼう」のようで少し恐くなる。東京、だけではないのだろうけれど、これがこの街の日常だ。そう感じてから、ふと思う。のっぺらぼうだ、なんてレッテルを貼ってしまった彼らひとりひとりの、今日一日を当然ながら私は知らない。朝のラッシュに加え、夜にまで遅延によりパーソ
2017年4月10日 21:15
言葉がやんわりと浮かんでくる瞬間というのは、私にとっては風景に触れて、何かが響いたときが多い。心の琴線とは、とても素敵な言葉だと思う。音楽を奏でるかのように、繊細な弦が共振する、震える様子が目に浮かぶようで美しい。ぽろんぽろんと鳴るような。和音を奏でられるほどできた琴ではないと思うけれど、私の中にもそのようなものが一応は備わっているのでしょうか。拙いなあと思いながら、内側の音に導かれて言葉